表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Lvが1.2Gでした  作者: ねろっと
ゴブリンクイーン
80/92

遺跡調査(5)

-遺跡中央の部屋-

 遺跡の中心部分にも、洪水の土砂は流れ込み中央にある祭壇も壊れている。


「結局遺跡全部が洪水で壊されてしまったのですかね。

 これでは、調査にもならないですね」


 ドンさんが、がっかりした様子で呟く。

 護衛の仕事を放り出してまで受けたにもかかわらず、このままだと空振りに終わるからだろう。


「冒険者の仕事なんて当たれば大きいが大抵は外れる博打みたいなもんだよ。

 安定したければ、兵士か護衛でもすればいいじゃ無いか」


 アムールさんは軽く笑い飛ばす。

 たしかに、楽に金儲けができるなら、みんな冒険者をやっているよね。


「それは、あなたが戦士として腕が確かだから言えるのですよ。

 私みたいに、人に誇れる取り柄の無い人間には、今後も、同じようなチャンスが回ってくる可能性は低いのですよ」


 アムールさんをポジティブとするとドンさんはネガティブだろうか。

 アムールさんが、ほかのパーティーから嫌がらせを受けて、仕事を干されて、騙された仕事で暗殺者に仕立て上げられそうになった過去をドンさんは知らない。逆に知っている側としては、彼女のポジティブさは、パティーさんの種族的な脳天気さと異なり、本人の持って生まれた物で素晴らしいと思う。


「今頑張っている魔法の光を精進したらどうか。

 精霊魔法を使わない魔術をずっと研究していたんだろ」


 アムールさんは、励ますつもりで言ったのだろう。

 ところが、ドンさんは、馬鹿にされていると思った様だ。


「光は、リョウシカク魔法を習得しないと、全然駄目なんです。

 フィルさんは教えてくれないし、習得がままならないんです」


「フィル。

 その、りょーしなんたら魔法を教えてやったらどうか」


 やばい、話がこちらに回ってきた。


「教えるも何も、詳しいことは知らないよ。

 聖女や精霊魔法と一緒で適正がないといけないと思う」


 とりあえず、無難に誤魔化そう。

 量子核魔法を教える気は無いので、適正の有無で誤魔化そう。


「フィル。

 なぜ聖女の私に、適性があるのでしょうか。

 パシオンさんも適性がありましたし、聖女と関係があるのでしょうか」


 クリスが疑問を口にするが、私も聖女と量子核魔法の関係は分からない。




-???-

 大きな鏡に遺跡中央の部屋が白と黒のグレースケールで映っている。

 鏡を眺めている女2人組も含め、この空間も同様のグレースケールである。

 1柱は、若く黒い長髪と白い肌が、淡い色のドレスとマッチしている女神である。

 もう1柱は、短い白髪に地黒の肌が燕尾服を身に付けているやや暗い印象を与える男装の麗人の格好をした女神である。



「こいつら、光魔法と聖女の関係を理解していない様だな。

 ここは親切に事実を教えてあげるか」


 男装の麗人が楽しそうな表情を見せている。

 この世界では、4大精霊王を神とする神話が残存しているが、光の神と闇の神の記録は残っていない。そのため、光の眷属の末裔である聖女は、単なる突然変異ではないかと言う程度にしか理解されていない。


「どうやって教えるつもりなの?

 それに教えても理解できるかしら」


 ドレスの女は、懐疑的だ。

 そもそも、量子核魔法は失われた魔術であり、伝承すら残っていない。


「まぁまぁ、いいじゃないの。

 彼らは量子核魔法の一部を使えるし、可能性はあるじゃん。

 あのテレビとか言う物使うわ」




-遺跡中央の部屋-

 祭壇の中に転がっていた直方体の一面が光り出す。

 直方体は、別の面に4つの足の様な物がついている。


「これって、テレビとちゃうか」


 アレックスさんが、不思議なことを言った。

 目の前にある直方体は、光っている面はフラットでは無く中央が膨らんでおり、ベゼルの替わりにプラスチックなどの外枠がある。しかも、その面に小さな棒と安い電子レンジの様なつまみが2つある。

 ああ、安物の電子レンジか。


「え、電子レンジじゃないのですか。

 テレビって、こんな分厚いのですか」


 私の疑問に、アレックスさんはびっくりしている。

 私は、アレをテレビというアレックスさんにびっくりしているのに。


「ブラウン管テレビはテレビの上に猫が乗れるぐらい分厚いよ。

 薄いのは、新しい薄型テレビでしょ」


 ブラウン管テレビって何だろう。

 猫が乗れるテレビなんて家電量販店でも見たことが無い。

 それに薄いのが薄型テレビなら、分厚いのはブラウン管テレビではなく厚形テレビではないだろうか。


「ねぇねぇ、テレビと電子レンジって何?」


 空気を読めないパティーさんが、聞いてくる。

 テレビや電子レンジを電気の無い世界の人に説明するのは無理だ。


『ホンジツハセイテンナリ

 ホンジツハセイテンナリ


   ・


   ・


   ・


   ・


 リョウシカクマホウノシンジツヲミセテアゲヨウ』


 光っていた一面に、モノクロの画像が映りだした。

 映像が流れ出したのに、テレビと違って音が無い。

 先ほどまでしゃべっていたのに、なぜ、無音なのだろうか。

 小さな画面にモノクロの映像が流れていく。

 白と黒の女性が戦っていて、4つの精霊が白い女性に加勢して黒い女性が敗れる。その後、黒い女性から薄い女性の影が出てくる。これは女性の霊だろうか。

 その後、白い女性が影を取り込み、4つの精霊が白い女性ごと封印し、精霊も消滅した。

 そして、今の遺跡を上から見た画像が流れて、放送が終了する。


「これ何?

 さっきまで声が聞こえていたのに、何で画像が出ている間は音が無いの」


 パティーさんが、文句を言っている。

 みんな同じ気持ちだが、文句を言う相手が見当たらないから言うのを控えていたのだろう。

 このまま分からない状態が続いて不安になるのを防ぐために、いつも黙っているけれど、たまには予想をしてみよう。


「ここは精霊の力を借りて何かを封印した場所でしょうか。

 4つの部屋は4大精霊と何か関係があるのですかね」


 見たままだけれど、仕方が無い。

 ナレーションがないので、あの画像からはそれぐらいしか分からない。


「そうすると、この部屋には何か封印されていたのですよね。

 どこに行ってしまったのですかね」


 アレックスさんが、推理を展開する。

 洪水で封印が解けて、どこかに流れていったのだろうか。


「洪水は昨年の6月でしたね。

 ここからだと、帝都の東に流れ着いた可能性が……」


 クリスが、何か思い出した様に話をして、突然言葉に詰まる。

 あ、私が発見されたのは、この洪水だった。

 クリスに目をやると、視線を背けられた。

 もしかすると、私が封印されていたのかな?


「昨年の洪水で救助もしくは亡くなったのは、女性ですよね。

 あのとき、救助現場に行ったことのある人は居ますか?」


 先ほどのテレビは女性だから、私では無い様だ。とりあえず、一安心。

 ドンさんが、みんなに確認をするが、クリスも含めて誰も反応しない。

 私も、黙っておこう。

 静かに時間が過ぎていく。


「ところで、さっきのテレビはどこに行ったの?」


 パティーさんの言葉に、みんなはっとする。

 厚形テレビはどこにも無い。

 どこに消えたのだろうか。




-???-

 再び、2人組。

 鏡の前の様子を眺めている。


「これで、量子核魔法が理解できるだろう。

 親切だろう」


 男装の麗人が鏡の向こうの彼らを見て満足そうに呟く。


「ところで、さっきの画像の見える箱は何だったの?」


 ドレスの女が聞く。

 この世界には存在していない者だったので、興味があったのだろう。


「あ、これはテレビジョンと言うらしい。

 我が眷属のテネーブルが教えてくれた異世界の道具だ」


 男装の麗人が無い胸を張って自慢する。


「便利な道具だね。

 もっとも、あの人たちが理解した様に見えないけど」


 ドレスの女が、鏡を指す。

 鏡には、彼らが祭壇の近くであたふたしている姿が見える。


「あれぇ?

 おかしいなぁ」


 男装の麗人も、うまく伝えられなかったことに気がついた。

 神と人では、なかなかわかり合えない様である




-遺跡そばのキャンプ場-

 遺跡中央の部屋を探したが、厚形テレビはおろか何も見つからなかった。その後、お昼が近づいてきたので、遺跡そばのキャンプ場に戻ることにした。


「お、おい。

 キャンプ場にゴブリンたちが居るぞ」


 食料を漁りに来たと思われるゴブリンたちと遭遇した。

 誰も見張りを置いていなかったのは失敗だったか。

 今回のゴブリンたちは、ホブゴブリン3体、ゴブリン7体で今までのゴブリンセットと違う構成だった。

 アムールさんと戦っているホブゴブリンは、かなり腕が立つ。それに対して、私が戦っているホブゴブリンは、凄く弱く、すぐに倒せた。残りのゴブリンを、仲間と一緒に倒した。

 アレックスさんも、最初に見かけた頃に比べて、少し強くなった様な気がする。ドンさんは……ここに居ない。

 居ない!?

 みんなドンさんが居ないことに気がついて、周りを探すが見当たらなかった。

 たぶん、遺跡に戻ったのでは無いかと予想して、ご飯を作るメンバーと、遺跡に確認するメンバーに別れた。案の定、遺跡の中央の部屋に居た。

 量子核魔法の真実を教えると言っていたので、気になって残っていた様だ。

 団体行動なのだから、勝手に居なくなるのは、やめてほしい。

お読みいただきありがとうございます

ブックマーク、評価ありがとうございます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ