遺跡調査(3)
-3/20 謎の遺跡前-
クレアモン村から北に3日ほど進み、2-3m程度の灌木の林にある遺跡に到着した。遺跡は、ゴブリンクイーン調査隊が発見したもので、昨年の洪水で遺跡の一部が破損し中に入れる様になったため、未発掘の可能性が高いそうだ。
「ここが遺跡の進入口なのか。
なぜ、昨年の洪水でできたものだと分かるのか?」
アムールさんが、進入口を前に疑問を口にする。
パティーさん以外は、ここに来たことが無いから、この疑問はパティーさんに向けられたものだろう。
ところが、当の本人は、一緒になって「誰かがすでに侵入しているかも」とか、意味不明なことを言っている。ここに案内したのはあなたですよ。
「ここの割れている石ですが、新しい傷が両方に付いていて一つにつながりそうです。
この進入口が、数年以内にできたのは間違いないようです。
ほかに、侵入できる場所があるか確認してみませんか」
ドンさんが、遺跡の進入口の壁と近くにある岩の傷を指さして説明している。魔術ギルドは、魔法はさっぱりだが、遺跡の発掘や魔術品の鑑定などでギルド員の生計やギルドの運営資金を確保しているそうだ。すでに発掘されている遺跡か未発掘の遺跡か見極める方法も研究しているそうだ。
魔術ギルドは、ただの魔法に憧れている団体では無かった様だ。
「中が安全か分からないし、まずは外の調査から頑張ろう」
パティーさんが、張り切って宣言している。
あれ?周りが安全かどうか確認していなかったのだろうか。
好意的に考えると、ゴブリンの調査中にたまたま見つけただけで、安全確認も何もしていないのかもしれない。それだと、未調査で依頼をした軍は、以前の冒険者ギルドと同じかもしれない。
ー白と黒の獣-
遺跡の周辺は灌木が生い茂り、少し離れたところには森もある。
遺跡から少し離れたところ場所にキャンプを設営し、周辺の安全確認を終えてから昼食をとる。
「食事後は、あそこの森で食材の採集を行おう。
遺跡の調査は明日からで良いじゃん」
アレックスさんが、モラトリアムな発言をする。
確かに、遺跡の発掘に期限はないし、ずっとカレンダーに追われる様な生活をしていたので、自由に行動するのも楽しそうだ。
みんなで、夕食や今後の食事を改善するために森に繰り出す。そこで、1時間くらい採集をしていたところ、森の奥から複数の悲鳴が聞こえる。
「あれはゴブリンたちかね。
恐怖の雄叫びみたいだな」
声は徐々に近づいてきた。
ゴブリンやホブゴブリンが3メートルくらいの大きさで白と黒の毛むくじゃらな獣に追われている様だ。しかも、ゴブリンたちよりも動きが速く逃げ遅れたゴブリンを数体倒していく。
「アレが、熊か。
色が可笑しいし、でかすぎだろ」
「大きいのに動きが速すぎ。
あんなの見たこと無い」
アムールさんもパティーさんも驚きの声を上げている。
「フィルさん、あれはパンダだよね。
こっちの世界じゃ、笹じゃ無くてゴブリンを喰うのか」
倒したゴブリンを頭から丸かじりしているパンダとそっくりな獣を見て、アレックスさんは動揺している。
さすがに、これは動物園に居ても人気者になれないだろう。
「あれがパンダですか。
アレックスさんのいた世界では百獣の王だったのですか」
ドンさんは、変な風に勘違いしている。
元の世界のパンダは、もっと小さいし、動きもゆっくりだった。
そもそも、野生動物を襲って食べたりしていたのだろか。
「元の世界でも、食料が無いときには家畜などを襲って食べていたらしいよ。
外見は可愛らしいが熊の仲間だからな」
アレックスさんが、パンダの意外な一面を教えてくれる。
確かに、かわいいだけでは野生で生き残れないかもしれない。
私たちはパンダに警戒するが、パンダは私たちを気にかけること無くゴブリンをむさぼる様に食べていく。
「ゴブリンの次は、アムールたちかもしれない。
みんな、迎え撃つ準備を整えよう」
アムールさんの号令で迎撃の準備を整える。
そんな私たちをよそに、パンダはゴブリンを食べている。そして、食べ終わると、満足したのか、そのまま森に帰っていった。
「お腹一杯になって満足したのでしょうか。
後ろ姿は、大きなお尻でかわいいですね」
緊迫した空気がクリスの一言で和らいだ。
しかし、食後に、森に戻っていくときの仕草は元の世界のパンダと同じでかわいかったけれど、ゴブリンを狩って食べる姿は悪魔みたいなものだろう。女性の言う「かわいい」は、元の世界も、この世界も理解ができない。
「パンダがキャンプを襲う可能性はあるかな」
アムールさんが疑問を口にする。
確かに、あのパンダが襲ってきたら無事で済まない。
下手したら全員が餌になる可能性もある。
「遺跡のあたりは森から少し離れているから大丈夫かも。
パンダはゴブリンを食べていて、味を覚えているから餌と思っているだけかな。
これまでに、人間を襲ったことが無ければ大丈夫かも……」
パティーさんが、安全だと訴えているが、トーンが徐々に下がっていくので余計に不安になる。
誰もパンダの生態は分からないので、とりあえずキャンプ地に戻ることにした。
-キャンプ場の襲撃-
パンダ襲撃の興奮が冷めぬ中、アレックスさんと女性陣が夕食を作ることになった。そして、男性陣は、ご飯ができるまでのんびり休憩する……
そんな亭主関白は存在せず、周辺の見張りに付く。
日が暮れ、おいしそうな匂いがあたりに充満してきた頃、少し離れたところにある灌木が揺れた。
「まさか、パンダか」
ドンさんの一言で、調理をしていた女性陣も警戒をする。
「木の揺れからすると、小柄で数体のはず」
パティーさんが、得られる情報から敵を推定する。
小柄で集団で徘徊する動物か。
「小柄で複数体ならゴブリンじゃないか」
アムールさんがその情報から敵を推測する。
ゴブリンなら、アムールさんとクリスが加われば、なんとかなる。
そのまま身構えていると、ゴブリンが出てきた。
「意地汚いゴブリンたちだな。
フィル、クリス、こいつらを蹴散らすぞ」
アムールさんの号令でゴブリンたちを迎え撃つ。
ボロボロの衣服に素手の状態のゴブリンたちは、私たちを見てかなわないと判断したのか戦う前に逃げ出していった。
「さっきのパンダに追われていた奴らか。
おおかた、腹を空かせて食事の匂いにつられて出てきたところだろ」
アムールさんが、彼らの装備を見て推定する。
「悲しいけど、これも現実なのね」
アレックスさんは、前回外した元の世界のロボアニメネタを披露するが、ネタが分からないクリスたちには理解されていない様だ。
彼らは遺跡の方に逃げていったが、大きな悲鳴が聞こえる。
遺跡のトラップにでも引っかかったのだろう。私たちに実害は無いので、食事を優先する。
すでに日が暮れて視界が良くない状態で調べるよりも、明るくなってから調べた方が安全だろう。
「夜の警戒は怠らない様にしよう」
こうして、今日という日が終わる。
明日から遺跡の調査が始まるが、どのような未来があるのだろか。
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