遺跡調査(2)
-3/17 夕方-
ジェニーさんお墓参りが終わりクレアモン村に戻ってくると、女ハーフエルフが駆け寄ってくる。
「クリス。フィル。おかえりなさーい」
徴発された冒険者はパティーさんだった。
久しぶりの再会で、ガブリエル卿が一緒にいることを忘れて盛り上がる。
10分以上盛り上がって気がついたときには、ガブリエル卿は呆れていた。
みんなで謝るが「案内役が仲の良い知り合いで良かったな」と逆にフォローされた。偉い人に気を遣わせる私たちは大物かもしれない。
明日から遺跡の調査に向かうが、あと2人参加するらしいが、今日は遠征用の食料などを購入しに行っているそうだ。
-3/18 クレアモン村-
遺跡に探索するために準備していると、ドンさんとアレックスさんが遠征用の荷物を持って近づいてくる。たしか、隊商の護衛で一緒に帝都に戻ったはず。
「実は、武官の人に頼んで、遺跡探索にいける様になったんだ。
あの偉い人との決闘で立ち向かった冒険者は少ないらしく、意気込みを認めてくれたんだ。
ドンが魔術の鑑定要員で私が調理要員と言う名目なんだ。
冒険者で無いのが、悲しいけど、(今の実力だと)現実なのよね」
アレックスさんが、もとの世界のアニメネタを混ぜながら説明をする。私以外はネタを知らないので、そこはスルーされている。
「また、一緒に冒険をするのか。よろしく。
ところで、護衛を完遂しなくて良いと言うことは、最初から護衛として認識されていなかったんだろうねぇ。
ここで立ち話をするぐらいなら遺跡に向かいながら話をしよう」
アムールさんが、2人をからかう。
隊商の護衛について確認すると、私たちの替わりに帝都に戻る予定の軍人が護衛をするため、ドンさんとアレックスさんは居ても居なくても問題が無かったそうだ。まぁ、ゴブリン退治に失敗する様な冒険者を護衛として扱わないのは普通か。
あと、クエスト失敗の再教育については、今回の任務を再教育の日数に換算する様に融通してもらえる様だ。私たちの時と違って柔軟でうらやましい。
「たしか、クリスたちは、再教育中に冒険をしたのがバレて、ペナルティーで再教育が倍の2ヶ月だったよね」
パティーさんが、私とクリスの黒歴史に近い過去をばらす。武術のスキルアップなど貴重な経験もあったが、二度としたくないし、あまり公言はして欲しくない。もっとも、この世界のハーフエルフに他人の気持ちを推し量る忖度を期待しても無駄だ。
「フィルさんたちも再教育を受けたことがあるんですか。
内容はどんなものだったのでしょうか」
そんな私たちの事情を知らないアレックスさんが、根掘り葉掘り聞こうとする。
「槍術と魔闘法の修行だったかな。
クリスが聖女だったから、稽古で打ち合いをした後すぐに回復して、また打ち合いを繰り返したかな。
あとは、魔闘法で気力を練る方法を延々と繰り返していたかな。
ココとグエンとスタンも一緒だったね」
隠すことでは無いので正直に伝えたところ、ドンさんとアレックスさんが引いていた。聖女がいなければ、そこまで大変じゃないし、そもそも、あそこまで打ち込むかどうかは本人次第かな。
「静かに。
あそこに何か居る」
警戒感も無く、わいわいと進んでいると、アムールさんが何かの気配を感じた様だ。
遺跡は大河の川原と森の境界にあり、森の方は熊が出る可能性があるので川原の方から進んでいる。
「多分、ゴブリンだよ。
集団で騒ぎながら動いているのに、近づいてくるのは、あいつらしかいないから」
パティーさんが、近くに居る集団の正体を断言している。
向こうから出てきたのは、いつも通りのゴブリンセットのホブゴブリン2体とゴブリンシャーマンとゴブリンたちであわせて10体ぐらいだろうか。
アムールさんと私がホブゴブリンを、クリスがシャーマン、パティーさんとドンさんとアレックスさんがゴブリンを相手にする様に散開して迎撃に入る。
前に遭遇した餓死寸前のホブゴブリンよりはマシだが、やはり貧弱である。打たれ強いので少し時間がかかったがワンサイドゲームで倒せる。
周りを確認すると、アムールさんはホブゴブリンを倒した後に、さらにゴブリンを2体も倒していた。ドンさんもゴブリンを倒しているらしく、逃げ出したゴブリンもパティーさんに射殺されていた。
「相変わらず歯ごたえがない奴らだな。
ホブゴブリンが弱いと過信すると別の場所でホブゴブリンに遭遇したときに取り返しがつかなくなりそうだ」
アムールさんの意見に同意する。
半年前に初めて対戦したホブゴブリンは、今の連中よりも強かった。あのときよりも私の腕も上がっているが、ホブゴブリンは軽く勝てる相手ではない。
「ここのゴブリンたちは、普通のゴブリンよりも弱いんですね。
それにすら勝てなかった俺らは、やはり訓練所で鍛え直さないと、冒険者として通用しないんですね」
アレックスさんは、ゴブリンを圧倒できて自信を付けたみたいだが、現実に戻された様だ。
「私の魔法は、こいつらにも効かないし、魔術ギルドの魔法では限界があるのか。
やはり、アインシュタイン様の言っていたリョーシ核魔法か放射線を出せる様に努力しないと駄目だな」
ドンさんが、ブツブツと危険なワードを口に出している。
放射線を出す魔法は、即効性が無いし、発動者や周りの人に二次被害が出るので、もう少し安全な魔法を選んで欲しい。
私の量子核魔法のうち、質量をエネルギーに変換して爆発させる魔法は、被曝はなく安全だが、エネルギーの調整が非常に難しい。あと、今の私だと、エネルギーへの変換か何かに時間がかかるため、発動まで時間がかかり動く敵に使用できない。
どちらにしても、ドンさんが量子物理学かE=mc^2を理解しないと使うことができないはずだ。
そう考えると、この世界の知識で精霊を介さずに魔術で生きて行くには光魔法で花火師になるぐらいしか未来は無いだろうから、そっとしておこう。
ー3/18 夕方-
パティーさんがリーダーになって採集を開始する。保存食は持ってきているが、新鮮な野菜も摂取したいのだ。
「こんな食材もあるんですね
勉強になります」
アレックスさんが興奮しながらパティーさんに教えてもらっている。
特に食材の見極め方は、毒の有無や味を左右するので、野外活動では必須になる。 秋は実物やキノコが多かったが、春は新芽や若葉、花の蜜などがメインになるため、秋の知識全く役に立たず、私やクリスも非常に勉強になった。
「こういう日の当たる場所と森の中だとまた違うんだよね」
パティーさんの現地授業のあとは、アレックスさんが新鮮な野菜を使って見事な料理を作ってくれた。
ようやく、おいしい食事にありつけた。
やはり食事は大事だよね。
お読みいただきありがとうございます
ブックマークや評価ありがとうございます




