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Lvが1.2Gでした  作者: ねろっと
ゴブリンクイーン
73/92

鉱山都市ヴィルバンド(4)

量が多くなって、水曜日が終わっていました


一部、設定に矛盾があったので

 ヴィルバンドから帝都に移送される貴金属をインゴットから合金に変更しました

-2/1 夕方 ヴィルバンド 食堂-

「危ない!!」


 吹き矢のザックに気がついたアムールさんがクリスを押し倒したようだ。


『いってー』


 クリスに命中しなかった吹き矢は、誰か別の運の悪い人に命中したようだ。私は、逃げ出した吹き矢のザックを追うため食堂の外に出る。

 奴は、食堂の外で背負い袋のようなものを拾って、それを抱えて逃げていく。たしか、奴は1/11に決闘で吹き矢を使って捕まり鉱山労働の刑になったはず。

 あ、ヴィルバンド(ここ)が鉱山労働で送られた場所か。そうすると、移送期間も考えると、奴はここに10日程度しか滞在していないはずだ。そうすると、この町に、つては無いから、荷物を持ってそのまま町の外に逃げ出すのか。

 

「1.2Lv、どこまでも、私の邪魔をするのか」


「自業自得の逆恨みだろ」


 前回は、因縁をつけて挑んだ決闘で自爆し、今回は、クリスに吹き矢を仕掛けてきた。どこに邪魔をしたという要素があるのかさっぱり分からない。

 ヴィルバンドは、囚人が多い町なので、脱走防止のため町の出入り口には門番が配置されているが、奴は吹き矢で門番を倒すと、そのまま町の外に抜けていく。私は、倒れた門番の槍を拾って、そのまま奴を追いかけていく。

 



-夕方 ヴィルバンド郊外-

「クソッ

 こっちに来てまともな飯にありつけないから、持久力が無くなった。

 1.2Lv。てめえごときは、俺が倒してやる」


 吹き矢のザックが抱えていた荷物を放り出し、片手剣を構える。左手には、先ほどの吹き矢の筒がある。こちらは、先ほど倒れた門番が持っていた槍を構える。


「前回の決闘では、卑怯な手で思わぬ不覚をとったが、今回は容赦しない」


「吹き矢を口に含んで自爆したのはお前だろ。

 どこをどう考えたら、そういう思考になるのか」


「うるさい!!

 1.2Lvのくせに熊殺しのマッツに勝つのがいけないんだ」


「悪いが、マッツと戦ったら10回やっても全部勝つ自信はある」


「インチキだ。

 イカサマだ。

 鑑定もごまかしていたのだろ」


 鑑定の数値ばかり見て、相手を観察していなかったのだろう。

 1.2Lvと言う数値にあぐらをかいて、こちらを見下した報いだと思う。

 借り物の武器ではあるが、槍と片手剣ではリーチが違うので、そもそも勝負にならない。左手の吹き矢に賭けている様だ。


「数値にばかりに気をとられて、決闘前のウォーミングアップやマッツとの戦いで、相手の強さを見極めなかっただけだろう。

 鑑定の数値が全てじゃない」


「真っ当に戦ったら厳しいと分かったから吹き矢を隠し持ったのだ。

 いつまでも勝負を始めない、お前が悪いのだ」


 あら、意外な答えが来た。

 決闘の時点でまともに戦ったら勝てないと理解していたのか。


「決闘に吹き矢を使うことがイカサマだろ。

 卑怯者の吹き矢のザックさんや」


 事実を突きつけたら、奴の顔色が赤くなってきた。

 左手を口に近づけて吹き矢を放つようだが、行動が丸わかりなので左手に一撃を叩き込む。吹き矢が奴の手から離れていくのを確認して、さらに足を払い戦闘不能にさせる。

 あとは、駆けつけてきた門番たちに奴を引き渡し、拝借していた槍を返す。囚人が吹き矢を持つことも、逃走用の荷物を持つことも不自然だ。何か裏があると思うが、ここのヴィルバンドの司法に任せよう。




-2/2 ヴィルバンド庁舎-

 早朝から昨日の騒動で、クリスとアムールさんと一緒にヴィルバンドの庁舎に呼ばれた。応対しているのは、この町の長官とこの前医療棟に案内してくれた役人でピエールと言われていたはずだ。


「昨日の襲撃事件ですが、依頼者は聖女のオミションです。

 仲介をした者を含め、全員逮捕しています

 そこで、お願いですが次の聖女様が赴任するまで、ヴィルバンドで聖女として働いていただけないでしょうか」


「手抜きの治療を指摘された程度で、人の命を狙うのでしょうか」


 先ほどの役人が襲撃に至る詳細を話してくれた。

 オミションは魔術ギルドの出身で治療のように見える魔術を使って聖女のなりすましをしていたようだ。そのため、聖女協会に報告されることを恐れて口封じのために襲撃させたようだ。

 鑑定を行う役人を巻き込んでいて、彼が吹き矢のザックに指令を出していたようだ。


「聖女のなりすましですか。

 そうすると、ここの怪我人は放置されていたのですか。

 それに歓楽街の性感染症の検査は、大丈夫ですか」


 怪我しているのに治療しているように見える魔術だけで放置は拷問に近い。

 それに、性感染症の放置はヤバすぎる。

 長官からゴブリンクイーンの件は帝国の軍隊が対応する予定で、この町からも5名の兵士が出征すると伝えられた。彼らが、私たちが護衛をした隊商とオミションたちを帝都まで移送するそうだ。

 今年に入ってから、いや、訓練所を出た後から一度も、主体的に冒険を決めたことが無い気がする。しかも、大量の性病検査を行うことになるクリスは、あまり気が進まないようだ。

 ここで、『嫌なら無理をしなくても良いよ』と言うと、逆効果になるのも分かっているので、クリスの判断を待とう。


「クリスよ。

 女性だけで無く、相手をした男の、その、アレをだな・・・・」


 かわりに、アムールさんがフォローしようとしているが、途中からしどろもどろになっている。彼女も妙齢の女性だから口に出しづらいのだろう。


「わかっています。

 しかし、放置すると、歓楽街の営業が止まりますし、病気が進行すると、治すのが難しくなります。

 帝都までの往復の日数を考えると断ると言う選択肢はなさそうです」


 あ、またクリスが無理をしている。

 言い出したら止まらないし、精神的にフォローするしかなさそうだ。

 長官が直々に帝都に出向き、一時的に軍隊の聖女を派遣してもらい、同時に聖女協会にも派遣を要請するそうだ。

 長官も隊商に同行するために明日出発する予定だそうだ。




-地下室-

 クリスはアムールさんと歓楽街の女性の性病検査に向かう。

 男性である私は同席できないので、暇になる。そこに、ドンさんとアレックスさんが、見せたいものがあるといい地下室に案内された。


「昨日夢の中で、アインシュタインさんに会いました。

 彼が教えてくれた光子を魔術で再現してみました。

 これが、光子です」

 

 その後、ドンさんが魔法を使うと、時折、うっすらと赤く、極まれに橙になる程度の淡い光が2、3秒発生した。横では、ドンさんが肩で息をしている。


「はぁはぁ。

 今は、これが限界です。

 フィルさんは、どのくらいまで出せますか」


 今の赤や橙の光を見て考える。放射線は、水中で青い光を発生するが赤や橙は発生しない。核融合で作られる恒星だと赤色はあるか。しかし、光が出ても熱が発生ていない。

 赤や橙だと金属が燃焼したときの色かもしれないし、この光は何者なのだろうか。


「ドンさん。

 これがもっと明るくなれば、暗いところでも、本が読めそうですね」


 アレックスさんはLED照明などの室内灯をイメージしたようだ。

明かりも光だったね。つまり可視光線を発生させたのだろう。

 光は、エネルギーの低い順に電波、遠赤外線、赤外線、可視光線、紫外線、電離放射線となる。なお、可視光線と電離放射線ではエネルギーが桁2つ異なるので、ドンさんの方法では放射線を出すことは不可能だろう。(可視光と医療診断用の放射線と比べると4桁ぐらいエネルギーが異なります)


「私も、光を出したことはないので挑戦してみようかな」


 地下室の壁に、光を投影させると、赤色から青色まで色が絶え間なく変わるが光を出し続けることはできた。

 可視光の領域は、エネルギーが変わると、赤や橙から紫や青まで色が変化するので、光子のエネルギーが安定していないと思われる。


「すげぇ。

 明るさも違うし、いろいろな色が出てきてきれいだ」


 ドンさんは、自分の出した光と比べて感心している。


「フィルさん。

 テレビが再現できますかね」


 アレックスさんは、とんでもないことを言い出す。


「アレックスさん、テレビって何ですか」


 ドンさんが未知の単語に食らいつく。

 アレックスさんがテレビを説明すると、さらに興奮する。


「フィルさん。

 テレビができれば、世界に変革が生まれます。

 是非、一緒に研究をしましょう」


 表示できるのが一人しかいなければ意味が無いが放射線にこだわられるよりはマシか。

 それとも、魔道具でも作るのだろうか。

 地下室で、色が変わりながら煌々と光るのは、目に辛い。練習するのは外でしよう。




-2/18 ヴィルバンド-

 本日、別の隊商が着いたらしい。今回の隊商は、事件のことは知らないはずなので、聖女が来ることは無いだろう。

 今日までの約2週間、クリスとアムールさんは性病の検査と治療に明け暮れていた。

 毎日朝夕に、気晴らしのために武術の稽古の相手をしているが、『もう、見るのも嫌』と愚痴をこぼしている。まぁ、年頃の女性がするお仕事では無いですもんね。

 セクハラをしてくる患者は、アムールさんによって病院送りにされたそうだ。まぁ、ヴィルバンドには聖女がクリスしかいないから治療を期待するのは諦めた方が良いと思う。自業自得とは、まさにこのことだね。

 稽古以外は、文字の習得と量子核魔法の制御の実践を行う。可視光は、目で見て判断できるので、エネルギーや光子数の調整、遠隔操作、複数の色の同時発色など、いろいろ試行錯誤ができる。これに対し、マイクロ波(電子レンジ)は、水の分子を振動させる周波数のエネルギーに調整するのに苦労する。何しろ、色などは出ないので、エネルギーを少しずつ変えながら、水の温度が上がるエネルギーを探さなければいけないからだ。今のところ、まだ発見できていない。

 まだまだ、努力が必要である。ドンさんも光を出す努力をしているが、火花の出ない線香花火の様な、薄暗い不安定な光が限界だ。




-グエンとの再会-

いろいろな光を安定的に出す実験を続けている私に、後ろから呼ぶ声がする。

 振り返るとグエンだった。


「フィルさんたちが帰ってこれないと聞いて、こっちに来ました。

 ゴブリンクイーンは軍が対応することになって、ガブリエル大公の命令でスタントココはアニアさんとパティーさんを連れて別の仕事をしています」


 グエンが、ヴィルバンドに来たことも驚いたが、衝撃のある話ばかりな気がする。新大公にガブリエル卿が就任したこと。ゴブリンクイーンの捜索が冒険者の仕事から軍の仕事になったこと。スタンたちが別の仕事を受けていること。

 何か浦島太郎のような気がしてきた。

 

「フィルさん、その光は魔法ですか?」


 グエンから指摘されたが、精霊術士から見たらこの光が魔法であることは一目で分かるのだろう。

 

「グエンさんには、やはり分かりますか」


「某と同じで魔法が使えたのか。

 隠すとは水くさい。

 色が乱れているので魔力が安定していない。

 3色同時発色は、同時使用と見たが、コツがつかめていない」


 あれ?

 そこまで見極めるのか。


「完全に見透かされましたね。

 使えるようになってまだ日が浅いので、まだまだです。

 魔力を安定させ、同時に発動する際のコツはありますか」


「コツはですね。

 毎日、地道に集中して魔力を使うことですかね。

 魔力操作は、訓練所で魔闘法の訓練をしましたがあんな感じで鍛えられます」


 おい。

 当たり前すぎるけれど、意外に魔法使いの修行って地道なのね。


「そうすると、今の練習と魔闘法の時の練習で良いのかな?」


「基本的には、それしかないのですが、同時使用や遠隔使用は、別のコツが必要なので、実践で教えた方が良さそうですね。

 この町の精錬所に行きましょうか」


 自己顕示欲が強くて、自信家と思っていたけれど、意外にコツコツ努力をするタイプみたいだ。


「グエンさん、私たちもついて行って良いですか」


 ドンさんの申し出を、『別に構わないですよ』とグエンは快く快諾する。


 せっかくコツを教えてくれるので、精錬所までグエンと一緒に向かう。




-精錬所-

 精錬所は、鉱夫が鉱石を運んできて、精霊術士が精錬をする場所だそうだ。

 今は、精錬所にどっさりと山の様に鉱石が積み上がっているが、精霊術士たちは別室で談笑しているようだ。


「どうも、サボっているようで、こちらにとって好都合だ。

 某が、彼らに使用許可を貰ってくるので、そこで待っていてくれ」


 グエンが許可を貰うまでの間に、周りを見渡す。


「この鉱石、貴金属を抽出した後どうなるのですかね」


 アレックスさんがつぶやいたので、想像してみる。

 確か、金鉱山とかでも、1トン当たり数グラムのはず。

「たしかに、他の回収される金属や、残渣池に棄てられる重金属以外は、どこに行くのかね」


 鉱山のことを何も知らない3人が談笑しているところにグエンさんが帰ってきた。


「さて、始めますか。

 まずは破砕と抽出です」


 グエンが、魔法をいくつも展開させている。

 目の前で鉱石が砕けて砂煙が舞い、少し放れたところにあるバケツに、水銀のような金属が貯まっていく。

 騒音と振動が凄まじく、別室で談笑していた精霊術士たちがこちらに出てきて、何か騒いでいるようだ。騒音の規模は、彼らが何を言っているかもこちらには聞こえないし、彼らが別室で談笑することもできないぐらいだ。当然、私たちは、耳栓をしてグエンの魔法を眺めている。 

 十数分後、精錬所にあった鉱石の山はすべて砕かれて砂状になり、バケツは金属で満たされている。


「これで、破砕と抽出は終わりです。

 次は、集めた金属から金や銀などを精錬します」


 バケツが輝きだし、近くにある小さな壺が共鳴するように光り出し、5分程度で終了する。

 

「これで終わりですね。」


 凄い音がしたので、結構人が集まってきた。

 グエンは、鉱夫たちに指示を出している役人と思われる人と話をして、3つの壺を渡した。鉱夫たちが、元鉱石とバケツを外に搬出する様である。

 談笑していた精霊術士たちのリーダーと思われる人物が近づいてきた。


「あんた、アレ全部、片付けてしまったのかよ

 俺たち全員で2、3日かかる仕事だぞ」


 グエンを称えて、自分たちの別室に案内するので、私たちもついて行く。

 リーダーが精霊術士2で残りの人は精霊術士1らしい。


「3以上の人間は、もっと待遇が良いところか都会に行くからな」


 土の精霊術士はスキル2でも、貴族のお抱えになれるそうだ。

 火水風に比べると地味だが、金属の精錬や農地の開墾など需要が多いそうだ。

 2種以上の適正のある精霊術士の場合、地味な土を鍛える人が殆どいないため、大抵もう1つの適正だけの専属になり、あとで一番お金が稼げると知って後悔する人が多いそうだ。実際に、火の精霊術士は、殆どが軍人になるらしい。

 帝都の下水道で蜂を巣ごと退治した人も、軍人だった気がする。

 グエンは彼女から修練方法を教えて貰っていて毎日繰り返しているらしい。

 私たちも、教えて貰って早速実践したが、とても地味でハードだった。

 量子核魔法を使いこなすのは、かなり先の話になりそうだ。

お読みいただきありがとうございます

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