表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Lvが1.2Gでした  作者: ねろっと
ゴブリンクイーン
72/92

鉱山都市ヴィルバンド(3)

土曜日中に間に合いませんでした

一部、専門的な記述があるので、嫌いな人は、読み飛ばしてください


第60話に、ドン、アニア、アレックスを追加

-1/30 ヴィルバンドの聖女の館-

 昨日は、医療施設で騒動があったため、翌朝にここに常駐している聖女の元に挨拶に行く。

 40前後の頬骨が出ているぐらい痩せている女性が、ここの聖女でオミションと言うらしい。


「囚人棟の治療は任せました。

 あと、普通病棟に隔離したあの男の治療もしておいてください」


 事前に役人が、『あの聖女は、ここには向いていないが、他に来てくれる聖女がいないので仕方なく雇っている』と言うとおりの人物だった。

 通常朝晩2回の治療も、囚人棟は朝1回のみしか行わず、他の聖女が来たときには押しつけるそうだ。いや、『そうだ』ではない、今押しつけられた。

 元の世界だと、挨拶の後に、少しは雑談をするはずだけれど、クリスは治療に向かいますと宣言し、さっさと切り上げ退出した。


「聖女は聖人君子である必要はありませんので、差別することは否定しません。

 しかし、聖女の仕事を放棄するのは、言語道断です。

 戻ったら聖女協会に報告します」


 やはりクリスは怒っていた。

 しかし、真っ直ぐすぎると他と衝突するから、もう少し丸くなった方がトラブルには巻き込まれないと思う。まぁ、そういうところも含めてクリスだから、トラブルは守護者である自分が守れば良いかな。

 アムールさんも、『丸くなった方が良いけどねぇ』とクリスを窘めているが、多分、治らないと思う。




-ヴィルバンドの治療棟-

 囚人棟の治療が終わり、隔離された未遂男の治療のために、普通病棟に入る。ちょうど、オミションも、治療を開始したようだ。患者に手をかざして、10秒程度で、次の患者に向かうため、クリスが未遂男の治療を終わるまでに5人の治療を終わらせている。いろいろな聖女の治療を見てきたが、こんな高速は見たことがない。


「あれで治るのか

 あんな短時間じゃ効果がないはずだけど」


「あれは治療ではありません

 ただ、手をかざしているだけです」


 アムールさんの呟きに、治療棟全員に聞こえるくらいの音量でクリスが答える。

 オミションがクリスを睨みつけるが、患者たちが『ねーちゃんの治療の方が効果があった』『いつも、治療が手抜きなんだよ』『あんたの治療で治った奴はいねーよ』とこれまでの不満をぶつける。オミションは、勢いに押されそのまま逃げ出し、患者からクリスへの喝采の声があがる。

 その結果、クリスが治療する患者が増えてしまったようだが、ここにいる間に他にすることもないし、クリス本人が問題にしていないので気にしないでおこう。




-2/1 ヴィルバンド 残渣池 注意 物理の苦手な方は、この章は飛ばしてください-

 ヴィルバンドに滞在しているが、訪問者用の施設は宿、食堂、歓楽街以外に何もない。そこで、空き時間を文字の勉強、クリスの手伝い、そして量子核魔法の研究を行っている。

 量子核魔法の研究と言うと大事に聞こえるかもしれないが、この世界に量子力学の一部が働いていること発見したのだ。ヴィルバンドの鉱山では、採掘した鉱石を製錬するのだが、最初に鉱石から金属成分を抽出し、その金属成分だけを精錬するようだ。その際、精錬で残る不純物には重金属が混ざっているらしく、放置すると風で宙に舞ったり、雨などで、ここより低い場所に流出したりするため、プールのような残渣池に投棄している。この残渣池は直接日が当たらず暗い場所にあるため、水中に青白い光が発生したのが確認できた。

 私のいた世界ではチェレンコフ光と言うもので、電子が水中をある一定速度以上で進む場合に発する光である。天然では、水中でウランやプルトニウムなどが核分裂をする際に生成される電子から発生する。

 そこで、量子核魔法で中エネルギーの光子(光の粒子)をこの残渣池に射出するとチェレンコフ光が見えた。ここで、電子でなく光子を飛ばしたのは、電子を飛ばすと空気や水と衝突して、電子の一部が射出した方向と反対側に飛んでくる。射出する方向と反対側と言うことは、この場合は私の方向にバックファイアするわけだ。飛んでいる電子は放射線(電子線と言います)なので、電子を飛ばすと飛ばした術者も被曝をする。

 そう考えると射出型のライトニングの魔法や、SFの電子銃は、術者や射手も被曝する。電子を使って被曝しにくいのは、落雷型のライトニングの魔法だろうか。

 なお、実際には光子も空気や水と衝突して射出した方向と反対側に飛んでくるが、電子に比べると非常に少なく被曝も減る。

 ちょうど、射出口のような、穴の開いた遮蔽物を見つけたので、これを遮蔽に活用して、光子のエネルギーを変えず、射出する光子の量を増やす実験を繰り返す。

 さて、それでは、光子や電子を射出する魔法は利用価値はあるのだろうか。

 人間の全身に4Gyの放射線を当てた場合、骨髄やリンパ球が破壊されるので、1月後に半数が死ぬと言われており、そのエネルギーは1kg当たり1カロリー程度である。これが1キロカロリーなら1度上昇するが、これでは誤差である。お腹だけに当てるなら、20Gyあれば、小腸の上皮細胞が破壊されるので1週間で半数被曝が、知覚できないことである。

 ところが、攻撃魔法としては効果が1週間後や1ヶ月後に出るのでは役に立たない。もし、直撃した相手にすぐに効果が発動するだけの量の光子や電子を放出すると、近くにいる術者も致死線量を超える被爆をして1週間後または1ヶ月後に死ぬだろう。暗殺や自爆覚悟、集団テロであれば、非常に効果があるが、そんな魔法を極める気は無い。

 光子なら、マイクロ波(光子のエネルギーと周波数には相関関係があるので、一定のエネルギーにする必要があります)や、赤外線(人体に放射線として影響が出ないエネルギーに下げて、射出する光子の数を大幅に増やす)、電子ならSAR当たりなら効果があるが、相当の精度が必要な上に周波数の計測方法が無いこの世界では非常に難しい。

 特に、電子レンジの効果を期待する場合は、水分子が共鳴する2450MHzにする必要があるので、ものすごい精度が必要になる。



-2/1 夕方

 同じ異世界転移者のアレックスさんと一緒に、ドンさんから文字を教えてもらっている。この町は他にすることが無いからね。

 

「フィルさん。

 さっきの池で何をしていたのですか?」


 ドンさんの一言で、私の手が止まる。

 実験に集中しすぎて周囲の確認を忘れていた。


「池の水から青白い光が出ていたよね」


 アレックスさんも見ていたようだ。

 元の世界でも、チェレンコフ光を知っている人の方が少数派のため、何かわからないようだ。

 

「あの青い光は、あそこに棄てられた重金属から出ているんだ。

 アレックスさんには、放射線といった方がわかりやすいかな」


「放射線がこっちの世界にもあるのか。

 俺たち、被曝してないよね」


 やはり、元の世界の人は、放射線にアレルギーのある人が多く。アレックスさんも、興味より恐怖の方が勝るようだ。


「ホウシャセンやヒバクって何ですか」


 ドンさんは、魔術ギルドにいるため未知の用語に興味津々だ。

 ここはアレックスさんに、元の世界の一般人として危険性を説いてもらう。


「目に見えず、感じないので危険と言いますが、青く光って目で確認できましたよ。

 精霊の力を借りない、新しい力で、魔術が進歩するのです。

 どうやってホウシャセンを出すことができたのですか」


 あー。

 ドンさんは、いわゆるマッドサイエンティストならぬ、マッドウィザードか。


「ドンさん。

 放射線は危険なんですって」


 残渣池の実験だって、穴の開いた遮蔽物でできるだけ被曝しないようにしていたのに、この人に巻き込まれたら危険だ。


「いやいや、魔術の進歩に危険はつきものです」


 駄目だ、この人。

 未知の危険ならまだしも、既知の危険を防護しないのは自殺行為だ。


「皆さん、遅くなりました。

 お待たせしてすみません」


 夕方の治療に行っていたクリスとアムールさんが帰ってきた。

 その後ろには、見覚えのある男がいる。


「吹き矢のザック!」


 なんで彼がここにいるのだろう。

 そして、手に細長い筒、吹き矢を持っている。


「そんなことで話をそらしても駄目です。

 それよりも、ほうっ。ぐぇ」


 吹き矢のザックを止めようと動こうとしたが、ドンさんが邪魔をする。仕方が無いので、まずドンさんを殴って、それから動こうとするが、その前に、吹き矢が放たれた。

お読みいただきありがとうございました

ブックマーク、評価、ありがとうございます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ