鉱山都市ヴィルバンド(2)
週末に誤字の修正を行いました
ご指摘をいただいた方に感謝いたします
その後、全体の修正をしましたが、かなりの誤字がありました
もう少し、読みやすい文章を作るように努力いたします
-ベジエ村-
ベジエ村は、クレアモン村から東に2日向かったところにある宿場町だ。
これより東は、草原になりヴィルバンドまで野宿となる。ヴィルバンドの鉱山の排煙で、木々が育ちにくくなっているからだそうだ。
ベジエ村の宿場宿に向かう途中アレックスさんが声をかけてきた。
「原爆を造ったのはアインシュタインでよかったですよね」
アインシュタインはマンハッタン計画に参加していたから、製作者の一人と言われたらそうだ。オッペンハイマーやフェルミ、テラーなどもいるけれど、一般人にとって一番有名なのは彼だろう。
「原爆には関わっていたけど、こっちの世界でなぜ?」
「ドンが、こっちの世界で、奴を見たらしい。
そもそも、こっちの世界の人は、奴のことを知らないはずだよねぇ」
アレックスさんの言うことはわかるけれど、気絶して意識が飛んでいたときにアインシュタインが現れたから、この世界で他の人の意識に出現していたとしてもおかしくない。ドンさんの件は、間違いなく奴が出現したと思う。
奴は、この世界に量子核魔法を普及させるつもりなのだろうか。それこそ、世界が滅びそうだ。
「アレックスさんは、こちらの世界に現れて欲しい人はいますか」
「道場○三郎。
この世界の食材で、どんな料理を創作するのか勝負したい」
食べてみたいではなく、勝負したいか。
さすがは調理人と言うべきだろうか。
私は、その対決を生で見て、その料理を食べたい。
そう思っても、今日の食事は、干し肉の塩辛い料理だった。
ここから先は、宿場町がなく、自炊になるそうだ。ゴブリンクイーンの捜索チームも自炊になるけれど、あちらはパティーさんがいろいろ収拾するから豪勢になるだろうなぁ。
「明日からは、俺が作るから、まかしとき」
異世界の調理人の腕に期待しよう。
-1/24 ヴィルバンドに向かう街道-
ベジエ村を出発し、さらに東に向かう。
ここから先の風景は、草原に低木が疎らに生えているだけだ。
隊商の人に聞いたところ、そのうち、草が疎らに生えて土砂がむき出しになるそうだ。
ヴィルバンドは不毛の地で、貴金属を産出しているので、人がいるだけだそうだが、鉱毒で不毛の地になったと思うのは、私だけだろうか。
鉱山、精錬所、歓楽街と兵舎があるだけだそうだ。鉱山労働者は、借金で首が回らなくなった者や囚人も多いらしい。ヴィルバンドから逃げ出しても、周りが不毛の地で、一番近い集落が徒歩5日かかるベジエ村のため、途中で野垂れ死ぬだけだそうだ。
帝国で鉱山労働の刑は死刑と同義語に近いのかもしれない。
「ここの護衛は、他より給金は高いけど人気が無いのよ。
風景、町、飯、どれも、良くないからね。
レーヌの時も、できれば行きたくないところだったね」
アムールさんの話だと、給金は良くても、人気の無いルートらしい。
「ここは、いつも臨時の募集が出ていますね。
この規模で常駐がいないのは、辺境以外だと、ここだけだと思います」
聖女にも人気がないようだ。
そりゃ、エリート職の聖女様は、囚人とか商売女の面倒は見たくないでしょう。
刑務所の医務官みたいなものだろうか。
「貴金属の抽出に、土の精霊術士が必要ですが、かなりの好待遇だと聞いています。
土壌改良を行わない時期に、アルバイトをする精霊使いも多いらしいですよ」
ドンさんが、この世界の金属の精錬について教えてくれた。
そういえば、グエンが、土の精霊術士は、給料は高いが、土壌改良も含め地味な仕事が多いと言っていたな。彼は、他のメンバーやパーティーとうまくやっているだろうか。
「アレックスさん。
調理部門の人が呼んでいますよ」
アレックスさんは、隊商の調理担当の人たちに混ざって食事を作るそうだ。野営時の調理の勉強になるそうだ。やりたいことが見つかるのは良いことだと思う。
私も、この移動の時間を文字の勉強や魔力操作の修練に活用しよう。
-1/29 夕方 ヴィルバンド-
ヴィルバンドに着いたとき、緑のほとんど無く、町の外には坑道の通気口と思われる屋根のついた構造物が点在するだけの殺風景な街と言うのが第一印象だ。ここで、3日間の自由行動となり、隊商と別れる。もっとも、よそ者の私たちは、歓楽街か食堂を兼ねた宿屋ぐらいしか寄るところはなさそうだ。
隊商と別れた後、ヴィルバンドの40歳前後の少し小太りの役人が近づいてくる。私たちを軽く一瞥した後、視線がずっとクリスの胸に注がれている。この役人がスケベなのか歓楽街で働くと思ったのだろうか。
「聖女様ですか。
長旅でお疲れと思いますが、医療施設をご案内してよろしいでしょうか」
ごめん、聖女の確認のためだったのね。
巨乳のガン見が正当化できる、この世界はある意味男性のパラダイスなのだろうか。
「かまいませんよ。
是非案内してください」
クリスが即答すると、役人が医療施設に案内するので、クリス、アムールさんと一緒に役人について行く。ドンさんとアレックスさんは、歓楽街で羽を伸ばしてくる様だ。
アムールさんが、『パシオンが、治療を求められると断れない』とぼやいていたのを思い出したと私に聞こえるようにささやく。クリスも、同じ様な事があった事を思い出す。
役人は、クリスに対して話しかけており、私たちはただの護衛としか思っていないようだが、これもいつも通りだ。
-ヴィルバンドの医療施設-
役人に案内された医療施設は普通病棟が2棟と囚人用病棟が1棟の計3棟だった。普通病棟は、3つの部屋があり患者が簡易なベッドに寝かされていた。囚人用病棟は、囚人用の医療施設で、入り口に30歳前後の小柄だが筋肉質の門番が立っており、室内は一つの大部屋になっており、患者がゴザの様なもの上に寝かされていた。
3つの病棟で患者が20名ほどいたが、クリスは囚人を含めて分け隔て無く治療した。途中で不埒な行為を企てる不届き者が普通病棟で3名、囚人病棟で1名の計4名いたが、すべて事前に察知して槍の石突きで制止させた。
「フィルは、クリスのことになると手が早いな」
アムールさんが、誤解を招きそうな発言をする。
ジェームズ帝に鍛えられて以降、相手の行動を事前に察知できることがあり、今回もその成果だと思う。
普通病棟の時は、未遂だったこともあり、周りも『おいおい、何やっているんだよ』程度だった。
それに対して囚人病棟では、『そんなことして、もう聖女様が来なかったらどうするんだ』『もう、聖女様が来ないで放置されるのは勘弁だ』と他の囚人労働者が叫びだし、未遂犯に私的な制裁が始まる。
このままだと、未遂犯が大けがをしそうだったため、門番と私たちは、慌てて止めに入る。その騒動で、先ほどここを案内した役人が駆けつけてきて、未遂犯を普通病棟に隔離した。
「この男は女癖が悪いんですよ。
こっちに来ても反省をせず困ったものです」
役人の話によると元の世界で言えばヒモであり、女性を食い物にしたので、カルマが激減して3年の鉱山労働の刑を食らったそうだ。それでも、ここの歓楽街の女に貢がせ、他の鉱山労働者と暴力沙汰になり、大怪我をしたため治療中だそうだ。現在、終身鉱山労働の刑に処する手続きをしていると教えてくれる。どうやら、未遂犯の騒動で、この役人に認めてもらっているようだ。
「リンチに加わった連中は、早く現場復帰して刑期を終えたい連中なんですよ。
あの男よりも重い罪を犯しましたが、反省して償っているんですよ」
囚人労働者は、毎月簡易鑑定でカルマと鉱山関係のスキルの伸びをチェックされているようだ。カルマが回復傾向にありプラスに戻った囚人は、残りの刑期にかかわらず帝都に帰還し職業訓練を受けて社会復帰できるようだ。逆に、カルマが回復しない囚人は、刑期がきても釈放されず刑期が自動延長されるそうだ。さらに、作業態度が悪く、カルマが悪化し続けると帝都に送られ処刑されるようだ。
「このままだと、あの男を帝都に送らないといけなくなります
他の人が担当の時に判断して欲しいですな」
「ピエールさんは、囚人にもやさしいですよねぇ。
囚人の社会復帰率は高いけど、もっと処分しないといつまでも、ここの勤務のままですよ」
役人のぼやきに門番がツッコミを入れている。
「君だって、今回も異動届を出していないじゃないか」
役人が笑いながら門番に言い返している。
お互い、ここから別の部署に異動したこともあるが、自分でここに戻るように異動を希望したらしい。大きな変化がないのと、囚人が更生していくことが、楽しいらしい。
「兵士は体力勝負だから、こいつに書類仕事を教えている」
役人は、元兵士でここの門番をしていた時に上司の役人に見込まれて仕事を教えてもらって役人になったそうだ。そこで、今度はこの門番に、ここの仕事を教えて後継にするそうだ。
「ここの仕事は向き不向きがあります」
どの世界でも、受刑者の更生はなかなか難しいようだ。
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