ゴブリンクイーン(5)
-1/16 集落-
冒険者の救出依頼は達成したが、2名の冒険者が重症だ。しかも、この集落に冒険者が治るまで看病できる施設はなく、近くだとE2になると思う。
「症状の軽い方は馬車でしたら移動ができますが、重い方は、あと2、3日は移動ができないです」
クリスは、そう判断して、この集落に3日間世話になるしかないと主張する。ところが、これ以上、人の家に居続けるわけにもいかないため、みんなで話し合って次のようにした。
クリスと重傷者2名・・・集落で治療
ドンさんとアニアさん・・・E2に行き、馬車を調達する
クリスを除いたパーティーメンバー・・・クレアモン村に行き、ゴブリンクイーンの調査
集落の方々も、聖女のクリスと病人を追い出すことはしない。ただ、心づけとして、わずかだがお金を渡す。
さて、気持ちを切り替えてゴブリンクイーンの調査を行おう。
-街道-
クリス達と別れ、クレアモン村に向かう。
「フィル。
クリスのお父さんへの挨拶って、どうだったの」
パティーさんの何気ない一言で、みんなの足が止まる。空気を読んで、今まで聞かなかったココも興味があるので、食いついてくる。アムールさんは、挨拶に行くまでの経緯は知らないけれど、挨拶の場に居たから、知らない顔をしようとしている。
「アムールさん。
フィルの挨拶の場にいたと聞いていますの。
クリスに聞いても、うまくはぐらかされたのでどうだったか教えて欲しいですの」
アムールさんがココに追及されている。
挨拶で武器を交えたのは、あれも意思疎通の一種と思うけれど、挨拶だったのかと言われれば挨拶ではない。そもそも、挨拶に行く前日に偶然出くわすというイレギュラーまで重なっている。
まして、恋バナの要素は欠片もない汗臭い物語だ。
どう言い逃れようか悩んでいる様子のアムールさんが私を伺っている。
「アムールさん。
フィルばっかり見ているけど、もしかして気があるとか。
フィル君、もしかして、挨拶がうまくいかなくて、クリスと別れたのかな」
このハーフエルフ(パティ)は、何を考えているのやら。
ところが、アムールさんが焦ってしまい、ココからも私が変な目で見られる。
誤解だから。
話が脱線したまま、クレアモン村に着くのであった。
-お昼 クレアモン村からゴブリンの洞窟-
クレアモン村に着いた。
情報収集をすると、年末ごろからゴブリンを見かけたそうだ。12月初旬に退治したばかりなので、異常だ。
まず、みんなで亡くなったジェニーさんの墓の前に向かおう。
ジェニーさんのお墓は、村から離れたゴブリンの洞窟のあった場所の近くだ。
洞窟の近くまで行くと、日が傾きだしてきた。
「待って。ゴブリンがいる」
やはり、洞窟の近くにゴブリンが居るようだ。この洞窟は、ゴブリンに人気なのだろうか。
パティーさんが周辺を偵察して、ホブゴブリンを含むゴブリン達が洞窟周辺にいることが確認できた。 たぶん、いつも通りのゴブリンセットであるホブゴブリン2体とゴブリンシャーマン1体とゴブリン数体だろう
完全に無警戒だったため、外にいるゴブリンをパティーさんの弓で射殺した後、襲撃をする。打ち合わせ通りホブゴブリンは、アムールさんとココさんが受け持って、パティーさんと二人で、動揺した残りのゴブリンを狩っていく。
「今回のホブゴブリンは、戦い方を知らないですの」
「襲撃にビックリして武器を落としたホブゴブリンを初めて見た」
「油断してたねぇ。
ゴブリンも日光浴をするのかね」
奇襲に成功したと言うこともあるが、ゴブリンの経験が不足しているように感じた。
夜行性のゴブリンが日中に外にいるのも珍しい。
仲間も同じ感想だ。
「ゴブリンクイーンかどうかは不明だけど、ホブゴブリンとかが量産されている感じですかね?」
この意見に仲間も賛同した。
今回襲撃した個体は、全部成人の個体にもかかわらず、経験が無く、促成栽培かクローンで作ったような感じがする。
他にゴブリン達が居ないか確認した後で、ジェシーさんの墓参りをする。
「ジェシー。
おまえの分も、アムールは頑張るから、安らかに眠ってくれ」
アムールさんのお参りが終わった後、クレアモン村に帰還した。
-夕方 クレアモン村-
「え!
また、ゴブリンが沸いたのですか!!」
クレアモン村に戻ってきて村長に報告をした返事が、これである。
駆除しても1-2カ月1回の割合で沸くのだから、こう言いたくなる気持ちはわかる。
「もう、日が暮れてしまいましたので、今日は、私の家でお休みください。
明日、一緒に討伐の確認をいたしましょう」
今日は村長の家に泊まり、翌日に、この村の猟師と倒したゴブリンの確認することになった。
さらに、12月に退治した残り2つの洞窟にもゴブリンがいるか確認しておこう。
-1/17 ゴブリンの洞窟-
村の猟師と一緒に、ゴブリンの洞窟に向かう。
この猟師さんは、前回のゴブリン退治で一緒に確認した人であり、これで2度目である。
「また、沸いていたみたいですね。
うちの村、大丈夫ですかね?」
猟師さんは何度もゴブリンが住み着くので心配になっているようだ。
クレアモン村は、リバーサイドから東に向かう主要街道を2日半進み、北に向かう支線の街道に入り半日のところにある。村自体は森に囲まれているが、西側は大河、北側は山岳地域になるため、村から先の街道は東に延びて鉱山都市ヴィルバントまで続く。
猟師さんによると、ゴブリンは大河沿いに南下してきて住み着いた可能性があるようだ。
山岳地帯に近い森は熊が出るらしくゴブリンたちだと餌にしかならないから、そちらに生息している可能性は少ないようだ。
「ほかにゴブリンがねぐらにしそうなところに案内しますね」
彼の案内で、ゴブリンがねぐらにしそうな別の洞窟に向かう。
-クレアモン村近辺 別のゴブリンのねぐら-
前回、ゴブリンがねぐらにした別の洞窟に向かう。
1つ目の洞窟には、幸いゴブリンは住み着いていなかったが、もう1つの洞窟には、すでにゴブリンが住み着いている様だ。
「こりゃ、毎月駆除する必要がありそうですね」
猟師さんは、大きなため息をつきながらつぶやいた。
洞窟周辺を確認したところ、洞窟の外にゴブリンは居ない様だ。
洞窟の中に入っていくと、夜行性のゴブリンは寝ているようだ。
ゴブリン相手に正々堂々戦う必要が無いので、寝込みを襲い、大した反撃もなく退治することに成功する。倒したゴブリンを確認すると、やはりゴブリンセットであるホブゴブリン2体、ゴブリンシャーマン1体とゴブリン7体だった。今回のゴブリンはオオカミを連れていなかった。
「いくら夜行性だからと言って、見張りも立てずに全員が爆睡しているのか」
「眠りが深くて、無防備ですの」
「あれ?
このゴブリン達、食料がないよ」
冬に移住して、食料の確保がうまくいかなかったようだ。
今は、ゴブリンが南下してきても食料確保が厳しいから大丈夫かもしれないが、春になると食料の確保がしやすくなるため、危険になると思う。
今日は、村に戻ろう。
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クリスの父親への挨拶は「55話 バトルジャンキー祭り」「56話 クリスの父親」を参照してください。




