ゴブリンクイーン(4)
-冒険者たち-
パティーさんの案内で冒険者たちが避難している場所に向かうと、男性3名と女性1名のパーティーが居た。そのうち、男性2名は、怪我か病気で横たわっており、何かにうなされている様だ。
クリスが、横たわっている2人に駆け付ける。
「高熱に浮かされています。
なにか、心当たりはありますか?」
クリスが、残りの2人に確認するが、『急に具合が悪くなった』『熱が高い』などと要領を得ない。仕方が無いのでクリスは治療に専念し、アムールさんとココが、聞き取りを続けている。
冒険者の居た場所は、ゴブリンのねぐらから集落と反対側にあり、ねぐらとの間は小川をはさんでいる。しかし、なぜ窪地にいるのだろうか。最近は雨も降っていたし、今でもジメジメする。
「ここは、ゴブリンのねぐらから死角になるね。
それに、風を遮ることができるから、身体を冷やさないためには、ベストではないけど、マシと言ったところね」
パティーさんに言われて気が付いた。
たぶん、彼らは、ゴブリン達から逃れて身を隠していたのか。しかも、野外活動が得意でないか、重傷者が出て、一時退避した場所から移動できなかったのかもしれない。
どちらにしても、冬の野外は、野営自体が厳しいようだ。
私たちは、まだ秋だったので、食料も確保できたし、何より寒さ対策をしなくてよかった分、助かったのだろう。
治療は、ゴブリン遭遇時に傷を負っていたらしく、その怪我による感染症の様だ。一度、治療をした後、集落で安静にする必要があるみたいだ。パティーさんと一緒に、担架に使う木を採取し担架を作る。
-夜 集落-
救出した冒険者たちを集落に連れてきたときには、すでに日が暮れていた。重傷者はベットに寝かせてクリスが治療をしている。その間に、残った二人の冒険者たちと食事をとる。
「こちらがアニア(アナスタシア)さんで、そちらがドン(ドミニク)さんなの。
あと重傷者の1人のアレックス(アレクサンド)さんは、私たちと同じで異世界転移者みたいなの」
ココが冒険者の2人と重傷者を紹介した。
アニアさんは、貴族の庶子の元兵士で、戦争が少なく出世が難しそうなので、冒険者になったそうだ。
兵士として戦闘経験はあるようで、リーダーを務めているらしい。20歳前後の細身の女性だ。
ドンさんは、魔術ギルドの研究員で25前後のこちらも細身の男性だ。魔術ギルドは、精霊術師以外の魔法を研究しているそうだ。冒険者証でスキルを確認したところ、魔力操作2と魔術2があった。精霊術師は、マナを精霊が魔力に変換して力を使うのに対して、マナを使用者が直接変換して使うらしい。マナは、大気や土壌だけでなく人間など生物にも微量に含まれるらしく、通常の生物がマナを異常に代謝できるようになると魔物になるらしい。
精霊と人間では、精霊の方がはるかに効率良くマナを魔力に変換できるので、精霊魔法と比べると魔術は出力が圧倒的に劣るようだ。ドンさんの魔法だと、ゴブリンすら倒すことができないそうだ。
「そう言えば、さっき戦う直前にオオカミの頭が爆発したの。
それも、もしかしたら魔法なのかな?」
やばい、ココが先ほどのゴブリン戦の話を持ち出し、話が盛り上がる。
何か、話題をそらす方法を考えないといけない。
「そう言えば、気槍術や魔闘法は、マナが関係しているのかな?」
実は、この話には、別の意図もある。
これまで攻撃魔法は、射出型しか見ていなかったが、射出型の場合は減衰率が影響するはずだ。それに対して量子核魔法や気槍術は距離ゼロだから、威力が少なくても、効果は大きくなる。それに、身体強化も距離ゼロだ。生物の魔物化に近いかもしれないけれどね。
ドンさんが気槍術や魔闘法に興味を持ち、ココが実演を交えながら説明をしている。
「マナが魔力になって体内を循環しているようです。
それで身体能力が上がっているのではないでしょうか。
魔闘法も、魔術の1つの様ですね。
そして、かなり効率が良いように思います」
どうやら、魔闘法はマナを利用した身体強化法で、気槍術などは、変換した魔力が武器を通じて相手にダメージとして与えるものだそうだ。逆に精霊魔法は、精霊がマナを変換して作った魔力が人間との相性がそれほど良くなく、身体強化にすると、効率がかなり悪くなるらしい。
「魔闘法は凄いな。アムールにも、ぜひ教えてくれ」
「これで、体力不足に悩まされなくてよいわ」
アムールさん、アニアさんともに、魔闘法を習得したい様でココにいろいろと聞いている。
クリスが治療を終えて戻ってきたので、用意していた食事を渡す。
「フィル。
らーめって何かしら?
重傷の方が、それを食べたいとずっとうなっていました」
「たぶん、ラーメンだと思う。
温かい麺料理で、白い容器にお湯を入れると3分で食べられる料理なんだ」
クリスが首をひねっている。
実はこの世界に、ラーメンや、そばやうどんの様な温かい汁に浸かった麺料理が無い。
しかも、麺料理も『きしめん』の様な平たい麺が、冷やし中華のような、ぬるくソースの様な物かけてハーブを乗せる料理だ。そこから、細い麺が汁に浸かっている料理を想像してもらうのは大変だ。
クリスとお互いに、イメージしている物をすり合わせるがうまくいかない。
「ラーメンのお話ですの?
鍋に水を入れて、沸騰したら麺を入れて、2分ほど湯がいてからスープの素を入れるの。
スープ自体に味が付いていて、それが麺に絡みつくの。
麺は、細長くて、食べる時は、一気にすするの」
凄い!!
ココは、ラーメンを自宅で作っていたのだ。
ところが、クリスは余計にわからなくなったみたいだ。
「アムールの故郷には、乾燥した米を、お湯に浸して食べる料理があったぞ」
「軍隊でも、乾燥した米を野菜と一緒に戻していましたね」
アムールさんやアニアさんも話に加わってきた。
「麺料理と言えば、かつては雑穀を粉にして、水に溶かして伸ばして細い麺上にした料理があったそうだ。
確か、異世界から来た人が作り出した料理らしい」
ドンさんによると異世界人が麺料理を伝えたらしい。
雑穀と言うことは、小麦ではなさそうだし、アワ、ヒエ?なんだろう。
「雑穀と言うことはソバですの。
そば粉に水を入れて混ぜたものを、玉状にして、たしか、平たく伸ばしたものを細く切っていくはずですの。小麦粉で作るうどんやラーメンは別の作り方ですの」
ココが、ドンさんの話がそばと判断した様だ。
「それだけ詳しいなら、ココさんか、フィルは、ここでラーメンを作れますか」
え?
私は、コンビニでカップ麺を買ってきてお湯を入れるだけだから、作れない。
「うちは、袋麺を調理するだけですの。
元の世界で、そば以外の麺を打てる人は、職人だけですの。
ラーメンですと、ラーメン屋さんでも、麺は専門の工場の物を購入しますの」
そう言えば、そばを打つ人は知っているけれど、うどんやラーメンは聞かないね。
手打ちうどんはあっても、手打ちラーメンは、記憶になかった気がする。
インスタントか電子レンジしか使わなかった、私は、そもそも、何も作れないけれどね。
その後、解散して今日は寝ることになった。
アレックスさんは、異世界の料理を何か作れるのだろうか。
気になるが、まずは、彼が回復してからだろう。
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