ゴブリンクイーン(3)
土曜日に更新するはずが遅れて申し訳ございません
-1/15 街道から集落-
昨夜降っていた雨でぬかるみがあると思ったが、主要街道は舗装されていて水はけが良く、たまに、窪みに水たまりができているだけだった。そのおかげで快適に移動ができた。
ところが支線に入ると、道の整備が追い付いていないのか、砂利道や、ぬかるみのあるところもあった。そのまま、少し進むと冒険者ギルドに依頼を出した集落がある。ゴブリンに負けて、クリスとパティーさんと必死の思いで逃げたところだ。
「あら。
この前、じぃ様を看取ってくれた聖女様じゃないですか」
前に亡くなったおじいさんと看取って欲しいと依頼してきたお母さんだ。乳飲み子だった赤ちゃんは、お母さんの裾を掴んでつかまり立ちをしている。
彼女の声を聴いた村人も集まってきて、クリスに感謝をしている。
「聖女様、数日前に、ゴブリン退治に向かった冒険者たちが帰ってきてないのです。
お強い方を連れているようですし、できれば、鎮魂を行っていただきたいと思いまして」
いや、タダ働きじゃん。
村にもならない集落だから払えるものはないと思うけれどね。
「以前、助けていただきましたし、よろしいですよ」
クリスが、あっさり引き受ける。
着の身着のままで流れ着いて、衣服を貰ったし冒険者ギルドから報酬を貰っていて、二重徴収はダメだろうけれど。
そんな風に考えていたので、私の顔は渋く見えたのだろう。
「何不思議そうな顔をしているのだ。
モンスター退治の報酬の原資は、帝国だぞ」
アムールさんから意外なことを教えてもらった。
たしかに、クレアモン村のゴブリン退治の依頼回数を考えれば、自腹では無理か。
ココによると、帝国内の物流を活発にさせるため、隊商の護衛にも、補助金が出ているそうだ。
道路の整備も含め、帝国は交易に重点を置いているのだろう。元の世界では、江戸時代や中国など農業主体の政策に比べると合理的と思う。
軍隊は、常駐すると費用が掛かるので、モンスター退治や隊商の護衛を冒険者にアウトソーシングをしているようだ。腐敗した冒険者ギルドは、委託先の仲介業者がピンハネをしていると言う、元の世界で良く会った構造だね。
「冒険者は、大切なアウトソーシング先だから、仲介機関である冒険者ギルドの不正は看過できなかったみたいですの」
ココが、冒険者ギルドの処分の裏事情を含めて説明してくれる。スタンの早朝稽古時に情報を交換していたらしく、冒険者ギルドが殆どの人員を入れ替えた理由も知っているみたいだ。帝国も、仲介業者である冒険者ギルドの不正には我慢がならなかったようだ。
「ココは冒険者ギルドと言うよりも、スタンについて詳しそうだな」
アムールさんが茶化すとココは頬を赤く染めた。そりゃ、毎日早朝訓練の相手をする間柄だから、そう言う事なのだろう。7月には、強制的に妾にさせられるし、その前に自由があっても良いと思う。
「そ、それよりも、早く冒険者の皆様を救出しなければいけないと思いますの」
ココがスタンの話をそらすために、救出する冒険者の話を振ってきた。
そう言えば、彼らの救出のために来たのだった。
ココが村人からゴブリンのねぐらを確認したので、そこに向かおう。
-ゴブリンのねぐら-
「ここのゴブリンは、どんな編成なのだ?
普通のゴブリンは、ホブゴブリンやシャーマンが一体でもいたら、珍しいぞ」
アムールさんにゴブリンセットの話をしたところ、帰ってきた台詞だ。
「いつも、ホブゴブリン2体とゴブリンシャーマン1体にゴブリンが数体ついてきますの。
毎回この組み合わせですの」
「豪勢な組み合わせだな。
ランク1どころか2や3でも厳しい組み合わせだな。
もし、その組み合わせが出たら、誰が何と相手するか?」
そう言えば、今まで、事前の打ち合わせをしたことが無かったな。
みんなで相談して、アムールさんとココが、それぞれホブゴブリンを1体ずつ相手して、私とクリスとパティーさんでシャーマンとゴブリンを受け持つことになった。
私がゴブリンシャーマンを受け持つ理由は、私には、攻撃魔法が効かないからだ。本当に効かないかどうかわからないけれど、今までダメージを受けたことが無い。だからと言って油断しないようにしよう。そう言えば、量子核魔法は、質量をエネルギーに変換したことはあるけれど、逆はできるのだろうか。実験して失敗しましたは、恥ずかしいと言うより痛いので、やめておこう。
「たぶん、あそこだと思うよ。
見張りにゴブリンとオオカミがいるね」
ゴブリンのねぐらの周辺は、低木や切り株などの障害物が多く足元が不安定だ。パティーさんがゴブリンを狙撃して、ねぐらから出てくるゴブリン達を殲滅することにした。
パティーさんが、ゴブリンに照準を合わせる。ふと、量子核魔法をオオカミに使ったらどうなるだろうと思い、その誘惑に負けた。
パティーさんの弓がゴブリンに命中したと同時に、オオカミの頭がR15+やスプラッター映画の様並みの破裂をした。
「な、なんだ、ありゃ」
「オオカミさんが、居なくなったですの」
「え。何が起こったの」
「あ、あたいじゃないよ」
やばい、味方の方が大混乱になった。
騒ぎになったので、ゴブリン達が、ねぐらから出てきたが、オオカミのスプラッターを見て、大騒ぎになる。
お互いの騒ぎが収まった頃に、乱戦となる。
こちらの事前の打ち合わせ通り、アムールさんとココはホブゴブリンとタイマンで、残りをクリス、パティーさんと私で迎え撃つ。今回も、ゴブリンやゴブリンシャーマンの動きが予測できたので、シャーマンの魔法を質量に換えることができた。
ほぼ、ワンサイドゲームの状態で数分後には、ゴブリン達は壊滅した。
「冒険者たちは何処にいるかな。
ねぐらの中に、何かあるだろうか」
アムールさんが、ねぐらの中を確認する間に、クリスがみんなの治療を行う。
みんな、かすり傷程度なので、治療もすぐに終わる。
「ねぐらの中には何もなかったよ。
一体何処にいったのだろうね」
クリスがねぐらから出てきたアムールさんの治療を行う。
「あたいが、まわりを確認するね」
パティーさんが、周りの確認しにいく。
その間に、私たちは、オオカミのスプラッターから避けるために、ねぐらから少し離れた場所で休憩する。
「フィル。
ちょっと話があるけど、良いかしら」
クリスが、私に個人的に話がしたいと言い、アムールさんと、ココから少し離れる。
「さっきの、オオカミの件だけど、フィルだよね」
いきなり直球の質問が来た。
どうやって誤魔化そうか、逡巡してしまった。
「年末の帝都南の野営地が焼け野原になりましたよね。
そして、今回のオオカミの爆発も同じだと思います。
どちらも、フィルがいる時に起きました。
怒らないので、何か、知っていることがあったら教えてください」
核心を突かれたので、誤魔化せそうにない。
しかし、怒らないのでって、悪い事をした子供を
「うーん。どう言えば良いのかな」
クリスに量子物理学や質量エネルギー保存則を話ししても通じないと思う。
そんな私をクリスが見つめている。美人に見つめられると、余計に困る。
「話しにくい事なのですか」
ファンタジー世界で物理学を説明するにはどうすればよいのだろうか。
それよりも難しい事を抜きに、エネルギーが発生することだけ伝えようか。
「理論は、元の世界でも理解できない人が多いです。
簡単に言えば、物質をエネルギーに変える、またはエネルギーを物質に変えることができると言うことです。
ただ、制御が凄く難しいため、今のところは、エネルギーへの変換だけにしています」
クリスは、一瞬驚いた表情をした後、考え込んでいる様だった。
しかも、帝都南の爆発があって、制御できていないと言われてもね。
「少し、整理させてください。
原理は理解できませんが、爆発させることはできるわけですね。
それで、制御できないとはどういう事でしょうか。
今回も、年末のような大爆発になる可能性があったのですか」
やはり、制御できないところが気になりますよね。
今回のオオカミが、前回の大爆発並みだったら、巻き込まれますからね。
「もう、年末の様な大爆発にはならないよ。
ある程度の大きさは予想できるけど、まだ調整中なんだ」
「年末の様にならないのであれば、安心しました。
でも、使うときは言っていただかないと、みんなビックリしますよ」
みんなビックリするのは、先ほど証明したとおりだね。
もう少し制御できるようになってから、事前に使うことを知らせると伝え、クリスも了承した。
そのあと、アムールさんとココの元に戻ると、ココがアムールさんに魔闘法を教えているところだった。
「冒険者を見つけたよ」
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