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Lvが1.2Gでした  作者: ねろっと
ゴブリンクイーン
63/92

決闘

ブックマークが30件を超えました。

 皆様、ありがとうございます

-冒険者ギルド近くの広場-

 私たちが、広場の真ん中に着く頃には、野次馬が観戦しやすい場所を陣取っており、さらに勝手に賭け事まで開催している。そもそも、対戦する方法も決まっていないのに、賭け事が始まるとは、どういう事だろうか。


「勝手に賭け事を始めない。

 対戦方法と賭け事は、冒険者ギルドが仲介します」


 はぁ?

 個人でも、団体でも、人様の対戦で上前をはねるのはダメでしょう。

 そんな私の意思は、完全に蚊帳の外に置かれて、賭け事と対戦方法が決まっていく。

 対戦方法は、1on1の勝抜戦になり、私とアスピラスィオンの腦筋でガタイの良い男が先鋒になり、クリスとチャラ男が大将となる。刃引きした武器を使うが、打ち所が悪いと死ぬこともあり、殺したら失格らしい。あと、事故の場合は無罪だが、故意の場合は殺人になり、殺意の有無は、カルマの増減で判断するそうだ。そのため、その前後で、他の大罪を犯すと冤罪が発生するらしいが、この世界では他に効率の良い方法が無いため、『悪いことしている人だから良いじゃん』になるそうだ。

 もっとも失格になるのは殺した本人だけなので、今回の団体戦の場合は、先鋒が一人目を普通に倒して相手のチームの大将を殺してしまった場合は、自チームの大将が残るので、一応勝ちになるそうだ。そこで、賭けの対象も、相打ちも含めていろいろ細分化されている。


「私も賭けてよいのかな」


 クリスの発言に、周りが静かになる。

 決闘になるように仕向けて、賭け事をするのは、何がしたいのかわからない。


『聖女様も賭け事をするのですか』『当事者が駆けてよいのですか?』『俺も、聖女様の守護者になりたいです』


 周りからちらほら、疑問の声が出ているが、様付けされている。

 胴元の冒険者ギルドの職員がクリスの元に駆け付けて何か話をしている。


「わかりました。

 フィルが2連勝するに100エキュを賭けます!!」


 クリスさん、先ほど、冒険者ギルドの職員が当事者は賭け事に参加できないと言っていませんでしたかね。冒険者ギルドの職員も、困った表情をしている。


『1.2Lvが連勝すれば聖女様は戦わないから当事者じゃないな』『当事者じゃないから、賭けても問題ないよね』


 周りの野次馬が、忖度したようなヤジを飛ばしている。

 それに対して、アスピラスィオンの2人組は、私に倒されると、宣言されたに等しい。


「俺はホブゴブリンとタイマンで勝ったことがあるぞ」


 ガタイの良い男が吠えた。

 私もホブゴブリンなら何とか倒せるので、良い勝負はできると思う。


『ホブゴブリンをタイマンで倒せたらランク3だっけ』『あいつ、熊殺しのマッツだよな』『ホブゴブリンより熊の方が強いよな』『ランク3がLv1.2のランク1とタイマンする方が恥ずかしくないか』


 この会場は、アスピラスィオンの2人組にとってアウェーの様だ。

 だからと言って私のホームではない。

 聖女補正のクリスのホームなだけだ。


「俺様は、ゴブリン3匹を一気に倒せるのだ。

 Lv1.2ぐらい、1.2秒で倒して見せる」


 チャラ男も吠えるが、それは凄い事なのだろうか。


『ゴブリン3体と言うことはランク3以下だね』『吹き矢のザックは剣を使えたんだ』『1.2秒って何で測るんだ?』『お前が戦うと言うことはマッツが負けるのは確定?』


 突っ込みが鋭い。

 ゴブリン3体かぁ。

 フレッドが5体位連続で倒していたから、あまり強そうな気配が感じられないが油断は禁物だろう。


「アムールもフィルの連勝に100エキュ」

「わたくしもフィルの連勝に100エキュを賭けますの」

「ギルド職員も賭けてよいので、スタンもフィルの連勝に100エキュを賭ける」


 君たちまで賭けてどうするのよ。

 アスピラスィオンの2人組はマジ切れしていて、更に自分を誇示することを言いそうだな。


「Lv1.2。たしか、ゴブリン退治を失敗していたな。

 俺様たちは2人だけで、ゴブリン退治を成功させたぞ」


 痛いところを突かれた。

 3か月前に、ゴブリン退治に失敗したのは事実だ。


『ゴブリン退治ができないパーティーは居ないだろう』『できて当たり前のことを自慢されてもなぁ』『もっと強い敵を退治していないのか』


 野次馬の突っ込みが厳しい。

 冒険者ギルドの職員が賭けをまとめているので、まだ戦闘は始まらない。

 なお、勝利者には掛け金の5%が還元されるみたいだ。

 その待ち時間でお互いにウォーミングアップを行っているが、アスピラスィオンの2人組は結構癖のある自己流の動きをしていて、動きも何となく予想できる。その点では、冒険開始と同時に失敗して訓練所で、マックスさんをはじめとする皆さんに、基礎から教えてもらったことは非常に大きいと思う。

 そんなことを考えていると、そろそろ決闘が開始される様だ。




-熊殺しのマッツ戦-

 熊殺しのマッツはガタイの良い体を生かしたパワータイプの両手剣戦士だ。

 ウォーミングアップの時から、右からの横薙ぎをして振りかぶって正面への振り下ろしの動作を繰り返している。横なぎは事前動作があるので予想しやすく、その後の正面からの振り下ろしは、前動作の振りかぶりがあり、凄い隙ができる。たぶん、横薙ぎで、相手の武器を使用できなくさせることが前提なのだろうか。

 

「試合開始!!」


 審判である冒険者ギルドの職員の声で決闘もとい試合が始まる。

 こちらが槍に対して、相手は両手剣なので、リーチはこちらの方が長い。

 マッツは、横薙ぎをしたいが届かず距離を測っているが、こちらが距離を確保する戦い方を進めて徐々にマッツを後退させている。この戦い方は、ジェームズ帝から教えていただいており、非常に有効だ。

 逆にマッツはこちらの獲物を知っていて、距離を詰める様なウォーミングアップをしておらず、たぶん相手に合わせて戦い方を変えることは知らないのかもしれない。


『Lv1.2に手も足も出ないぞ』『なんで踏み込まないのかな』『対人ができてないなぁ』


 野次馬から、厳しい指摘が飛んでいる。

 マッツがこちらの攻撃を避けるために後退して下がる場所が無くなったので、攻撃方法を突きの連続に変える。両手剣で突きを防ぐのは難しい。胸部への突きをフェイントに、持ち手を狙った突きが右手甲に命中する。そのまま、左手だけで持っている両手剣を叩き地面に落とす。


[勝負あり。

 勝者フィリップ」


 審判がそう宣言して初戦は終了する。

 何もできずに完封負けしたマッツは信じられないと言う表情でこちらを見る。

 武器に応じた戦い方をしない自己流の限界に気が付いていないのだろう。

 観客の半数以上は私が負ける方に賭けていたので、落胆の声を上げている。

 マッツはクリスの治療を受けた後、野次馬の中に混ざっていった。



-吹き矢のザック

 少し細身の見るからにゲスなチャラ男で、ウォーミングアップの様子から、ショートソードの片手剣剣士である。ショートソードは盾と併用するケースが多く、片手剣のみのスタイルは珍しいが、フレッドに似ているだ。ウォーミングアップを見ていると、一つ一つの動作の後に格好をつけるためにピタッと止まるので、隙が多い。しかも、高速型スタイルがその止めの動作で無駄になっている。本人は格好良いつもりかもしれないが、周りからすると滑稽に見える。


『あの速い動きできちんと止めができるのは凄いな』『格好良いけど、意味はあるのか?』『高速型が動きを止めてどうするんだろう』『実用性はあるのか?』


「わたくし、あの動き、気持ち悪いですの」

「アムールは、あの動きの意味が解らないな」


 観客の評判も良くないが、うちの女性陣にも受けが悪いようだ。クリスに至っては「気持ちが悪くて寒気がする」とまで言っている。

 批判の声を気にしたのか、吹き矢のザックが両手を挙げてアピールする。


「私は、1.2Lvを1.2秒で倒して見せる」


 そのあと、下ろした手から口に何かを入れた。

 吹き矢のザックだから吹き矢なのだろうか。


『秒殺宣言きたー』『1.2秒って凄くない』『で、どうやって測るんだよ』


 観客から、称賛やどよめきの声が出ている。

 私もアピールをしよう。


「私も秒殺を宣告します。

 この対戦を、勝つ以外に秒殺も含めて賭けを行えないだろうか」


『さっきの負けを取り返すチャンスだ』『俺も賭けたいぞ』


 野次馬は喜びの声を上げるが、吹き矢のザックの表情は青ざめていく。

 私と吹き矢のザックには、それぞれ1名の職員が付き、他の職員が掛け金を回収していく。


「私は、ザックの反則負けに100エキュを賭けます」


 クリスさん、大穴に賭けすぎじゃないですかね。

 クリスの宣言で、ざわめきが増え、掛け金の回収効率が悪くなる。

 30分ほど経った頃、ようやく掛け金の回収が終わった。

 既に、吹き矢のザックは、顔面蒼白だ。


「吹き矢のザックさん。

 大丈夫ですか?」


 冒険者ギルドの職員が話しかけるが、返事が無い。

 涙目で大丈夫と言うジェスチャーをしているが、誰が見てもどこか悪いように見える。


『顔色が悪いぞ』『吹き矢のザック、どうしたー』『このまま不戦敗になったら、賭けはどうなるんだ』『賭け金返せ』


 だんだん騒ぎが大きくなってくる。

 騒ぎが収まるまで試合は開始できないので、しばらく待たされる。

 そして20分ほどが経ち、騒ぎが収まる前に吹き矢のザックが白目をむいて倒れる。


「毒の症状と思います。

 治療を行います」


 クリスが近づいて治療を開始する。

 しかし、いくら治療をしても、状況が改善していない。


「すみません。

 口の中に、毒か何かがあって、治療している先から、また悪化していっています」


「アムールが手伝うよ」


 アムールさんが近づいて行って、吹き矢のザックの口をこじ開ける。

 口をのぞき込んでいたギルド職員が何かを発見した様だ。


「吹き矢だ!!

 しかも、矢が口に刺さっている」


 吹き矢を回収して、治療を再開したところ、症状が改善してきた。

 そのころには、憲兵隊がやってきて吹き矢のザックを毒の使用で逮捕して連行していった。

 騒然とした会場では、賭けの結果を気にする声があったが、吹き矢のザックは反則負けと判定された。

 憲兵隊が出動して文句も言えず掛け金を失った観客をしり目に、大穴を当ててご機嫌なクリスと一緒に、少し遅い昼食をとりに、冒険者ギルドをあとにした。さすがに、今日は冒険者ギルドに戻れないかな。


 余談だが、吹き矢に塗っていた毒が口の中で溶けだして、口の周辺から麻痺して、職員に呼びかけられても答えられなかったようだ。その後、矢が口内に刺さって一気に麻痺毒が回って気絶したみたいだ。

 なお、毒の使用は厳しく取り締まられていて、今回は未遂にもかかわらず、終生鉱山での強制労働になるそうだ。


お読みいただきありがとうございます

誤字脱字などがありましたら、教えてください


ブックマーク、評価、ありがとうございます

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