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Lvが1.2Gでした  作者: ねろっと
聖女を護れ
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イベントの襲撃者(6)

-リュドヴィック宅-

 家主に案内された部屋は、2畳程度の狭い寝室であり、ベッドと暖炉がある。

 クリスを寝かせて看病をしていると、家主ことリュドヴィックさんは、丸椅子とスープを持ってきてくれた。


「看病する方も、体力を消費しますよ」


 リュドヴィックさんは、10年前に聖女カサンドラが襲撃された際にも家を貸し出したそうだ。

 聖女カサンドラとは、20年前に商売に失敗し絶望のどん底にあった時に、炊き出しで出会ったのが初めてだそうだ。そこで生きる気力を貰い、もう一度商売を起こし、成功してからは、カサンドラの活動を支援していたそうだ。


「聖女カサンドラ様が亡くなられたとき、5歳ぐらいの娘さんが居たのですが、ここでカサンドラ様にしがみついて泣いていました。

 今でも、あの時の様子が忘れられません」


 夫のジェイムズ帝が公務で別の場所にいて駆けつけるのに時間がかかったことと、今回と違い腹部へ一刺しだったため、運び込まれてわずかの時間で亡くなったそうだ。

 今回は、斬り付けたため、短剣に塗った毒が飛び散り、さらに切り傷のため刺し傷より傷が浅くなったようだ。元の世界で、忠臣蔵の松の廊下で浅野内匠頭が斬りつけたために、殺せなかったのと同じようだ。毒が塗ってあるのに、斬りつけて毒が飛び、暗殺者として未熟なため助かったと言うところだろうか。

 一緒についてきたカティーさんによると、クリスは、顔の火傷と右胸の傷が痛々しいが、あくまでも負傷部位が表層のため、解毒できた時点で、命に別状はないらしい。


「もうすぐ新年だから、治さないと、クリスのお父様に挨拶ができないのじゃ。

 クリスが行かず後家になろうと、妾には無関係ですが、頑張るのじゃ」


 そして、いつも通り煽って帰っていく。もう少し丸くなれば良いのにねぇ。




-12/25 リュドヴィック宅-

 クリスが目覚めたのは、朝の10時くらいだった。


「フィル。

 迷惑をかけてすみません」


 日本人ではないから、被害者なのに謝らなくてよいです。クリスに、優しい言葉をかけて、落ち着かせてから治療を行う。顔の火傷の治療中、何回もクリスから流れてくる魔力が不安定になる。跡が残るのを防ぐため治療しているが、痛みに耐えているのだろう。

 治療の終わったクリスを、本当は胸に頭を抱き締めてあげたいが、火傷の箇所が触れるため、私の右肩の上にクリスの顎が乗る形で抱き締める。


「クリス。

 ごめんね」


 そう呟いた私にクリスの嗚咽しながら蚊の鳴くような声が聞こえる。今日は、一日クリスの元についていよう。




-同日 商務庁舎-

 12/25は、お役所の閉庁日になる。帝都以外の居住者は16日以降に里帰りしているため、帝都出身者が、残務整理や非常時の対応を行う慣習がある。そのため、部署によっては、ほとんどの職員が里帰りして、他部署が業務を肩代わりすることもある。ピカルディー王国通商部は、帝都在住のセバズティアンを除いて全員が西国出身者で16日から里帰りをしている。元々、香辛料や織物など保存の利く商品しか扱わず、冬期間は交易を行っておらず、セバズティアンも年末はただ出勤して持参した毛布にくるまって昼寝をするだけである。


「セブ。

 今日は、定例の昼寝をしないのかね」


 居残り職員ことセバズティアンに声をかけたのは、商務長官のドミニク・ド・ラ・ヴァリエール卿である。今日は御用納めのため、セバズティアンは定例の昼寝をせず、朝から掃除を行っていた。


「長官。

 さすがの私も御用納めの日は掃除ぐらいしますよ」


 長官は次期皇帝候補と目されているけれど、私みたいな下っ端の顔と名前を憶えていて、しかも寝過ごした時に起こしてくれる、ありがたいお方である。


「昨日発生した聖女襲撃事件だが、軍部がピカルディー王国の仕業と決めつけて開戦準備をしているらしいぞ」


「はぁ!?

 年末に何をするんですか」


 思わず、長官にため口をたたいてしまった。慌てて口を塞ぐが出てしまったものは、戻って来ない。


「ウハハ。気持ちはわかる。

 しかし、戦争なら軍部だけでなく外務庁やうちも関わるし、開戦は陛下の専権事項だ。身内の不幸だが、短慮はしないだろう。

 まぁ、年明けからは忙しくなる」


 身内の不幸?

 良くわからないけれど、下っ端が政治に首を突っ込むと碌なことにならないので、そのまま聞き流すことにした。

 年を越す前から新年がデスマーチと言う悪夢を前に、仕事納め式の長官の挨拶中は上の空だった。こんなに嬉しくない年末は、10年前以来だろうか。




-12/26 デュポア未亡人宅-

 スタンが、クリスの治療のため下宿を手配してくれた。リュドヴィックさんの子息が帰省してくるためだ。手配してくれた下宿は、帝都で学ぶ学生が利用していて、里帰りで学生がおらず、かつ入れ替わりで帰省してくる親族の居ないところと聞いていたが、この部屋に学生が居た気配は感じられない。

 翌日、どこかの家紋の入った封筒を見かけたので、この未亡人は、皇族か法衣貴族の使用人の1人だと思う。クリスの外見ができるだけ人の目に付かない様に配慮されていて、感謝している。

 火傷の傷も徐々に改善しているので、年末の挨拶は大丈夫とクリスが言っているので、少しほっとしている。

 28日からは、クリスの状態も良くなったため、ずっと2人でいると息が詰まるから、外出できないクリスの替わりに、私が外出する。ところが、行くところが無く、憲兵訓練所でガブリエル卿と訓練している。

 ストレスが発散できるので良いけれど、私はこの街の人とつながりはほとんどないのね。

お読みいただきありがとうございます

誤字脱字など、ありましたら教えてください


ブックマークや評価、ありがとうございます

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