閑話 皇帝と皇帝候補者
今回は、設定のため、名前ばっかりですみません
-ドミニク・ド・ラ・ヴァリエール-
ドミニク・ド・ラ・ヴァリエールは、次期皇帝に一番近い位置にいる男である。この男の話をする前に、皇帝の話をしよう。
現皇帝は、前皇帝の聖女カサンドラ・ド・ロンシャンの夫ジェイムズ・ド・スタールだ。カサンドラが皇帝選定の儀で選ばれた際、ジェイムズも候補として上位5名以内にいたらしい。
アルゲティ帝国は、隣国のピカルディー王国と宗教上対立している。
10年前、ピカルディー王国の国王の娘婿ジークフリードは、野心家で王位を狙い、自らの正当性をアピールするためにカサンドラを皇帝就任1周年の式典で暗殺し、自国でクーデターを起こし、アルゲティ帝国に侵攻した。
侵攻時、アルゲティ帝国は皇帝選定中であったが、初戦で大敗し大公が戦死し皇帝大公ともに不在となった。そのため、皇帝選定の儀は戦争を終了するまで延期し、ジェイムズが皇帝代行に就任した。ジェイムズは次期大公にミカエル・ド・モンフェラートを任命し、軍の再編から兵站の構築まで戦争の全権を握った。戦争は1年半も続き、前ピカルディー王の一族に調略を仕掛け、クーデターでジークフリードを敗死させた。その後、帝国側に有利な内容で講和した。
実は、皇帝選定の途中経過は、ドミニクが最上位であり、王国の侵攻が無ければ、彼が皇帝に選出されていた。ドミニクは、商業や交易が得意分野で、ピカルディー王国を何度も訪問しており、現地妻を囲っていた。現地妻がジークフリードの親族だったことと、ジークフリードがドミニクの能力を危険視して、現代で言うところのフェイクニュースを流したため、戦争終了時まで帝国東部のコルベールで軟禁状態に置かれた。
その様な理由もあり、戦争で活躍したジェームズが次期皇帝に選定されたのである。
戦後、暗殺関与はジークフリードの流した虚報であると判明したが、ジークフリードの親族として迫害されていたピカルディー王国の現地妻と親兄弟などを帝国に引き取った。本来、現地妻も側室と同じため、カルマが上昇する行為になるが、異教徒かつ聖女を暗殺した首謀者のジークフリードの親族になるため、国民や官僚、軍人から嫌われている。カルマよりも、感情が優先されるのだろう。
暗殺関与の疑いが晴れた後は、商業分野を統括する行政長官として活躍し、ピカルディー王国との交易も帝国に有利な条件で再開することに成功している。
ここ2、3年は、ピカルディー王国への警戒心が薄れ、次期皇帝に一番近い男として、蜜に群がるアリの様に自らを売り込む者たちが群がってきている。
-12/15 ドミニク・ド・ラ・ヴァリエール邸
里帰りの時期になると、ドミニクの元にたくさんの人物が挨拶に来る。
ザカリ・ド・リオンヌ、次期大公の有力候補の1人である。ピカルディー王国との戦闘で前大公の参謀を務めていたが、前大公の功を焦った作戦に異議を唱えず大敗した。前大公が敗死した後、敗軍をまとめて防戦に努めたが、現場の将校たちに大公就任を反対され、ライバルのミカエル・ド・モンフェラートが大公に就任した。
ザカリはドミニクと同い年で、あと2、3年で不惑に届く。年齢的に皇帝であれば問題が無いが、軍を指揮する大公には、不安がある。ドミニクが皇帝に即位した場合、次期大公には3年前まではザカリを推したが、現在ならガブリエルを推す。
もはや、年末の忙しい時期にザカリとの挨拶に時間を割くことにメリットはないが、無視をして足を引っ張られるのが面倒なため無駄に時間を割いているだけの存在である。
「ドミニク殿下。
今年もお世話になりました。
これから東部の領地に戻りますので、ご挨拶に参りました。
ところで、あの男(大公)はいつまで、大公にしがみつくつもりなのでしょうかね」
ミカエル・ド・モンフェラートは、今年の3月に脳梗塞で倒れ、半身不随である。ザカリの言う通り退位して次期大公を選出するのが、慣例である。大公位は、皇帝は任命権しか有しておらず、退位は本人の申し出か民部会(いわゆる議会、貴族院と合わせて2部会と言われている)が犯罪等で退任させるしかなく、これまでも退位せず居座る大公がいて、このような場合に皇帝が新しい大公を任命する事がある。
「ザカリ卿。
今年もお世話になりました。
恒例の東国行ですな。旅の無事を祈っています。
大公位について、あくまでも本人が決めることですので、貴殿の帝国を想う気持ちはわかりますが、私は長官職にあるため、下手なことが申せませぬ」
あほか!
必要なら新しい大公を任命しているわ、そんな当たり前のことが理解できない脳筋め。
ドミニクはザカリを軽蔑しつつ、当たり障りなく返答をする。
そのまま、挨拶だけのはずが30分近く長話をするザカリに辟易しながら愛想よく受け流すドミニクであった。
ザカリが退出した後、大きくため息をつく。
現皇帝ジェイムズは次期大公にガブリエルを選出する予定で、何らかの理由で保留しているのだろうか。大公問題には、関わらないでおこう。
その後も、有象無象の里帰りの挨拶が続く。
聖女誘拐事件の責任をとって皇帝を退位させて欲しいだの、現実不可能なことを要望してくる者もいる。
さて、ジェームズはいつまで皇帝位にいるのか。
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