聖女救出(8)
最近暑くなりましたね
皆さん、体調を崩さないようにしてください
-12/14 宿屋-
「クリス
確認をするけど、良いかな」
クリスが頷いて、胸を露わにする。いろいろな方向から触ってみるが、クリスから魔力が流れてくる気配はない。胸の傷が完治していることを確認できたので、クリスが手を離す。本来は、ここで治療が終わりなのだが、クリスの柔らかい胸の感触を楽しむため、そのまま触り続ける。クリスは目をつむり、息が多少荒くなり、そのまま受け入れている。
5分ぐらいして、クリスが目を開けて、私の右腕を両手で掴む。
「フィル。
治療の確認はかなり前に終わりましたよ。
お願いですから交際の許可がおりるまで、もう少し待ってください」
やべぇ。目が笑ってねぇ。
マジで怒っている。
右手を元に戻したいけれど、クリスが阻止している。
「フィルを信頼して身体を預けています。
信頼を裏切らないでくださいね」
ようやく右手を介抱してくれたので、クリスに謝ってから手を胸から放す。
服を着る時に、にっこりと微笑んで『次はガブリエルを呼びますよ』と耳元で囁かれた。
呼ばれたら、瞬殺される自信があるが、本心で言っている様ではなさそうだ。
これに懲りて、同じことはしない様にしよう。
-下水道遺跡-
下水道遺跡の前に行くとマスクにローブ姿の女性とスタンがいた。
「皆さん、ご迷惑をおかけしています。
こちらの女性が、蜂の退治を行います」
スタンが、蜂を巣ごと退治してくれる女性を紹介してくれた。
軍事機密だろうか、名前も退治方法も教えてくれない。
蜂の巣まで移動する間は、グエンがスタンに話しかけている。スタンは、女性の護衛で、蜂を退治したら、すぐに練兵場に戻るそうだ。
-下水道遺跡 蜂の巣前-
下水道遺跡の階段の手前まで進む。
例の女性が、ローブの中から白っぽい塊を取り出しスタンに渡す。
「蜂の巣ごと一掃します。
皆さん、下がってください。
水の精霊よ。泡沫の世界にいざなう力を顕現し給え。
バブルウォッシュ」
スタンが、蜂の巣の方に白っぽい塊を投げると同時に、魔法が発動した。
巣を中心に霧がかかり、徐々に泡ができ、巨大な渦を形成していく。洗濯機の中が再現されているみたいだ。
「泡が一杯あって、綺麗と言うか不思議な景色ね。
中に入ったら、汚れも、服も、ううん、人間の中身ごと洗われそうね」
泡の渦を見たクリスの感想だが、同感だ。たまに、蜂が渦の外に放り出されるが、原形を維持していない。人間も、肉まできれいにそげ落とされる、いや、骨も砕けるかも。
「バブルウォッシュは、単なる洗浄の魔法のはずで、この様に使うのは初めて見た。
魔法にはいろいろな使い方があるのだな。
魔力の制御も素晴らしい。某も、見習いたい」
グエンは、魔法の使い方に感心している。
バブルウォッシュは、衣類の洗濯に使う魔法で、本来は、ドラム缶の様な円筒容器の中で使うらしい。 円筒容器なしで、この魔法を使う場合は、維持する魔法制御が相当のレベル必要らしい。
十数分後に、魔法が解除されたとき、巣と蜂は粉々になっていた。
「任務完了。
スタニスラス。閣下からの命令です。
本日中に下水道遺跡に聖女が捕らわれているかどうか確認すること。
任務終了後、速やかに帰投すること。以上」
マスクの精霊術師は、必要事項だけを述べて帰っていった。
スタンの目に涙が見える。ガブリエルの気遣いだろう。
「オリヴィエの配慮ね」
クリスが私の耳元で囁いた。
あれ?オリヴィエなの?
モンフェラート家の事情は全然分からない。
-下水道遺跡 大広間-
蜂の巣を除去できたので、先ほどの魔法で、濡れている階段を下りて先に進む。大雨の時に水が溢れてきているため、壁に浸水をした線が複数ある。その先が分岐のため、パーティーごとに分かれて進む。
排水路のあるエリアは生き物が生息していたが、このエリアに生き物は存在しない。たまに、スライムのような生物に遭遇するが、直接攻撃が効かないため、グエンの魔法で処理する。
「おーい。
こっちに誰かいるぞ」
別の分岐路に向かったパーティーから呼ぶ声がしたので、そちらに向かう。聖女の法衣を着た見覚えのない2名の女性と見覚えのある御者2名だが、顔色が土色になっていて悪いと言うよりゾンビみたいだ。
レーヌのメンバーが4名倒れている。アムールが、応戦して、パシオンが倒れた仲間の治療をしている。私達より先にフレッドたちが駆け付けてゾンビと戦っている。
「浄化は効かないから。
こいつらはアンデットじゃない」
ん?
ゾンビなのにアンデットではないの。
ゾンビは、ブードゥーパウダーで作るって伝説もあったな。
クリスが倒れている仲間の治療に向かい、私たちはゾンビに向かう。ジェジェたちのパーティーも駆けつけ、集団で攻撃していく。ゾンビは戦闘スキルがほとんどなく、ただタフなだけで少し時間がかかったが倒すことができた。
戦闘後に、アムールに確認したところ、倒れている4人を見つけて駆け寄った時に、ナイフで切り付けられたそうだ。ナイフに、毒物が塗ってあったようだ。幸い聖女の治療が早かったため、後遺症をもたらさなかったようだ。
「私が治療しても進行を抑えるのが精一杯だった。
クリスが治療をした人から回復したわ」
パシオンとカティーは聖女2らしく、クリスは間違いなく聖女3になっているのだろう。
パシオンが話した後からカティーがクリスを睨みつけている。クリスの聖女スキルが上になったことが気に入らないのだろう。
「わたくしが、せっかく聖女2になったのに、もう聖女3になるなんて凄い。
数か月で聖女3まで上げる方法を教えてー」
ジェジェが褒めるとさらに、カティーの表情がさらに険しくなる。フレッドと顔を見合わせ、お互いにため息をつく。
「フィル、ちょっと人のいないところに行かないか」
フレッドが切り出したので、一緒に、奥の方に向かう。
そこには、天井が動くような仕組みになっているところがある。下水道遺跡に入ってすぐのところにあるエレベータの下になるのだろうか。
「カティーの事だがな。
まぁ。そのなんと言えばいいかな」
フレッドが言いにくそうに話を切り出そうとした時、
「皆さん、下水道遺跡に聖女がいないことが分かりました。
私は、オリヴィエに結果を報告する必要があります。
ここの物を証拠に持ち帰りたいのですが、協力してもらえますか」
スタンが、みんなにお願いをしている
ガブリエル卿でなくオリヴィエ卿?
「フィル。また、今度言うわ」
タイミングが悪かったか、仕方ない。
これ以上、下水道遺跡に残っても何のメリットもなさそうだし、スタンに協力して引き上げよう。
-憲兵事務所-
下水道遺跡を出た後、スタンとともに憲兵事務所に向かう。
憲兵たちに聖女の法衣や、毒物の付いたダガー、4人のゾンビを引き渡す。
「皆様なら、確認してくれると思っていましたよ。
捜査内容は明らかにできませんが、皆さんに報酬はお支払いします。
スタン。疲れているかもしれないけど、急ぎでこの書類をガブリエルに渡して欲しい」
スタンは、オリヴィエから書類を受け取り、憲兵事務所から出た。そのまま練兵場に向かうらしい。罰をきちんと受け入れているようだ。
我々も、オリヴィエから報酬を受け取り、いつもの食堂に向かう。
-迷える子羊亭-
聖女救出に参加したパーティーで食事をとるが、みんな表情が暗く、会話もほとんどない。あそこに、ニニとロロがいると思っていたが、法衣のみで彼女たちは居なかった。下水道遺跡の大広間にいたゾンビは何かだろう。
それに、オリヴィエは、下水道遺跡にニニとロロが居ない事を予測していたようだ。いや、確信していて、居ない証明を我々にさせたのだろう。
トゥルヌソルは、いや、私たちも、トワと言う女の掌で踊らされた様だ。
筋書きを描いた奴を一発ではなくて、気が済むまで殴り続けたい。
-テネーブル視点-
漆黒のローブを着た男が、右手にワイングラスを持ち、薄ら笑いを浮かべながら大きな鏡を眺めている。
鏡には、暗い表情でご飯を食べているフィルとクリスの姿が映っている。
「死は逃れたようだが、絶望の一端を味わうことはできたようだな。
今後も、希望の抱けない現実を突きつけてやろう。
さらに、実験は、予想通りの成果だ。
次のショーはさらに苦痛に満ち溢れたモノになるだろう」
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