聖女救出(6)
投稿期間が開いて申し訳ないです。
前回に続いて、人間関係のお話です
-下水道遺跡-
「某には、スタニスラス殿下が、大公閣下の威光を笠に着たとは思えない。
ギルドの揉め事も、憲兵が捜査している様に殿下に落ち度はない」
食堂では静かだったグエンが、下水道遺跡に入ってからスタンの事を弁護している。
「グエナエル卿。
帝国法と、大公家の決定に異を唱えますか?
食堂でなくても、ここにも人はいますよ」
あ、帝国批判なのね。
食堂で発言したら、危なかったのね。
「クリスティーナ嬢。
曲解しないで欲しい。
某は帝国批判をしてない。
自分の出自を名乗ったらいけないのであるか」
先ほどまで雄弁だったグエンが、だんだん、しどろもどろになる。
「なぜ、地位をひけらかす必要がありますか。
こちらに理があるのであれば、きちんとした場所に訴え出れば良いだけです。
それとも、忖度が必要ですか。
皇子や皇孫と喧伝したら、その権益を期待する者が蜜に群がるアリの様に集まります。
帝国では、皇帝や大公は、数百名以上いる皇子や皇孫の中から能力のある者が選ばれます。そして皇帝と大公になれなかった皇子や皇孫は、ただの平民と同じ扱いになります。
その時に、蜜に群がったアリはどうすると思いますか」
クリスは、こういう時の追及が厳しいよね。オリヴィエから正しい時は、きつく追い詰めない方が良いとアドバイスされていたけど、治らないかな。
可哀想に、グエンは涙目になっている。
「クリスティーナ嬢。
おっしゃることは理解できるが、殿下を見捨てるのか。
権益とか考えず、せめて、吾輩たちだけでも仲間として支えてあげよう。
それとも、権益とか、その様な物を期待していたのか」
あれ?
グエン君の主張がずれてきた気がする。
権威主義者だと思っていたけれど、意外に人情があるのね。
「うちは、権益が期待できない立場ですの」
「あたいは、ハーフエルフだから、難しいことは気にしないよ」
私は、権益とか難しいことを考えたことはなかったな。
自分の気持ちを素直に話すか。
「私は、クリスの守護者だから、クリスに付いていくだけ。
権益はわからないよ」
「他の者の意見は分かった。
クリスティーナ嬢は、どうなのか」
みんなが注目すると、クリスは困った顔をした
「私たちの気持ちも大事だけど、スタン次第よ。
それに、親戚だから、期待に添えないことがあるかも」
午前中の取調室を知っている私は、クリスの気持ちがわかる。しかし、あれを知らない人にとってはクリスが冷たいと感じると思う。
「人間って、エルフと違ってしがらみがあるね。
あたいは、難しいことはわからない」
パティーさんが不思議そうな表情でため息をつく。
エルフは人間と住む世界がかなり違うみたいだ。
「クリスティーナ嬢。
人が困っている時に助けるのが聖女だろう。
君には人の情がないのか。
フィルも何か言ったらどうだ」
グエンが怒りだした。
気持ちはわかるけれど、聖女が助けられるのは、病人や怪我人だと思う。
「グエナエル卿。
貴族には、しがらみがあるの。
レオノール家も、貴族ならしがらみはありませんか?」
「しがらみとは何かな?
レオノール家は、田舎にあるため、他の貴族とのつながりが無いのだ」
え?
しがらみのない貴族はいるのか。
ガサガサ
1m近い大きさのネズミが複数出てきたが、あっさり退治した。
この遺跡のモンスターは、身体は大きいが戦闘能力は高くない。
もし、戦闘能力の高いモンスターが存在していたら、町の治安を守るためにとっくに駆除しているのだろう。
「クリスティーナ嬢とフィル、先ほどは強く言い過ぎた。
吾輩は、レオノール領から出てきて初めて認めてくれたのが殿下だった。
それまでは、空回りばかりだったが、殿下がフォローしてくれてから、居場所ができた」
レオノール領は、帝国北東側の牧畜ぐらいしか産業のない丘陵地域で他の貴族領と隣接していないそうだ。土の精霊術師は農業土木で重宝されるが、レオノール領は貧しい地域のため、土の精霊術師やスキルの高い聖女などは、より収入の高い地域に流出していくそうだ。そのため、グエンが土の精霊術師の才能があると判明したときから、期待されていたそうだ。
グエンは10歳から精霊養成所で訓練し、修行のために冒険者になったが、早く、故郷の役に立ちたいと、気持ちばかりが空回りしていたそうだ。自分の価値を認めて欲しいと攻撃魔法にこだわり、レオノール領に聖女が不足しているから守護者になり、故郷に連れて帰りたかったそうだ。
そういった空回りを察知したスタンが、グレンをフォローしていたそうだ。スタンが、パーティーに加わった時に、グエンも加えて欲しいと頼まれたのを覚えている。
「みんな、色々な重荷を抱えて空回りするのね。
グエナエルも、スタンも、私も同じなのね」
クリスが私にだけ聞こえるように呟いた。
スタンがグエンの空回りを察知できたのは、ガブリエルに追いつきたいと焦る自分自身と重ね合わせることができたからだろうか。皇族や貴族も大変なのね。さすがに、グエンの空回りは、巻き込まれたのでドン引きのレベルだったけれど、理由を聞くと理解はできる。
グエンは、ココがフォローしている。
難しい話が嫌いなパティーさんは、少し離れたところで、周囲を警戒している。そう言えば、ここはダンジョンの中だったね。パティーさんグッジョブ。
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