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ロマンスの行方
「お迎えに来ましたよ、お姫様」
「ようやくね」
ロルフの満を持してのプロポーズも、姫であるセレスティアの不機嫌な膨れっ面には、干からびた薔薇程度の価値に成り下がる。
「手厳しいな」
「当然でしょう。考えてみたら、私ってば、もうずっとまともに口説かれた覚えもないのに、今日まで待たされ続けてきたのよ」
「そう、だったか?」
「もらったと言えば、全く心のこもっていない熱烈な恋文だけ」
「……そうか。それは確かに、厳しく言われても仕方ないな」
肩を竦めておどけた王子様は、優雅な仕草で温かくて柔らかな手を宝物のように優しく取ると、お姫様がもう結構だと慌てて訴えるほどたっぷりと甘い言葉を囁き尽くして愛を伝えた。
こうして、多くの人によって噂された波瀾万丈のロマンスは、若き貴族当主の誕生をもって成就したのだった。
おわり