笑顔って怖いものだっけ?
神様の清廉潔白の基準って違うのかなあ……
ふわふわなお布団を味わいつつ、ぼんやりとしていたら、パタパタと慌てた様な足音が近付いてきます。
「かみさま〜。やっちゃいました〜」
可愛らしい声と同時に現れたのは、背中に白い羽が生えたこれまた金髪碧眼の美少女なお姉様。
美人というより華奢で儚げな、庇護欲を鷲掴む感じのお姉様は、瞳をうるうるさせて訴えます。
「ごめんなさい〜、かみさま〜」
「……嘘泣きは結構です。現状報告をつ・つ・み・か・く・さ・ずにお願いします」
て、天使様だよね。
うわっ、本当に背中から羽が生えてます。
当たり前ですが、羽が動いてます。
「な、なんて事を!」
「だって〜皆すっごく優しかったから〜つい〜」
「つい〜、ではありません!引き継ぐのは一葉なんですよ!」
天使様の羽を観察していたら、話が進んでいました。
「ごめんなさい〜許して〜葉ちゃん〜」
私の寝ているベッドの側にちょこんと座り、両手を豊かな胸の前で組んで、うるうるした瞳で見上げてきます。
同性の私でもどきどきしてしまう、可憐な攻撃。
ですが彼女の攻撃は、これで終わりではありませんでした。
「あ〜あと〜リフレシアの身体現在進行形で昏睡状態です〜焦ってすぐこっちに来ちゃった〜」
追加爆弾投入えいっとばかりに、テヘペロポーズで宣った天使様の言葉に、超絶イケメン神様はフリーズしました。
神様、神様、息してますか?
あ、あれ?神様って息するのかな?
……それはとりあえず置いておこう。
「私が引き継ぐ身体があるのですか?」
私の言葉に活動再開した神様は、鬼気迫る勢いで天使様の反対側のベッドに近付いてきます。
「一葉。本当は天界で暫く心を癒しつつ、次の身体と世界の情報を教えてゆくはずだったのですが、うちの子がっ!……うちの子がやらかしてくれたせいで時間がありません」
「……み、みたいですね?」
「ええ。起こってしまった事はどうしようもありません。ですので今からさっくりと説明します。その後すぐ、次の身体に転生してもらいます」
「……ちなみに拒否権とかは?」
「………………」
こ、怖いよお。
超絶イケメン神様の瞳が死んだ微笑みは、背筋の凍るような怖さです。
きっと、魔王(見た事無いけれど)を瞬殺出来るに違いないです。
え、笑顔って怖いものだっけ?
私はお布団に入っているにも関わらず、余りの寒さに自分で自分を抱きしめたのでした。
ちなみに一葉のおうちのヒエラルキーのトップはママでした。
ほんわかおっとり可愛い系のママですが、数少ない地雷を踏んでくる相手には容赦無く攻撃します。
微笑みに極寒の冷気をのせてピンポイントで心をへし折ります。
……ちなみに超鈍感残念美形の一葉パパは若かりし頃にかなりの地雷を踏んで学習したので一葉が産まれてからはありません。