遭遇(エンカウント)
豊満な巨乳が顔に当たっている、しかも花の様な香りがする。
「大丈夫ですか、正義さん。あれ胸で潰れてる、息できてますか?その前に早く起きますね」
当たっていた胸が離れていく、やっと息ができる。本音を言えばもうちょっとこのままで居たかった。
「ああ、苦しかったけど大丈夫だった。やっぱり慣れないから呼び方は正義でいいよ。」
「すいません、大き過ぎる胸で。」
「むしろ好きだから大丈夫。あっ、いやそういう変なつもりで言いたかった訳じゃない。」
「何のことですか?。じゃあ兄さん探しに行くとしますか。」
(良かった変態だと思われなくて、ツッコミ遅れたけどいや自分で胸デカいって言うんだ。凄いやわらかかった。あいつの妹だとは思えない、いやもったいない。童貞を殺す子だ。)
「じゃあ行こうか、襲の行きそうな所に心あたりは?」
「千種山の展望台かなぁ、というかそこしか無いです。」
「千種山ってこの山なんだ知らなかった。さあ行くか」
「おー」
「ハア、ハア、意外にこの山結構きついぞ。
何mだ?」
「もうくたばってるんですか、兄さんなら簡単に登れるのに。えーっと2…245mくらいですかね。」
(マジかよこんな高いのかよ。俺、学校裏の山すら登ったこと無いのに。)
千種山は桜の名所として春宮市内で知らない者はいない。特に樹齢100年を誇るソメイヨシノが乱れ咲く様はまるで春の吹雪だ。あの有名なボ○ロの曲のようだ。ちなみに俺はかなり聞くほうだ。毎朝目覚ましにセットしているぐらい好きだ。
頂上まで辿りつくとさっきの桜の山道とは打って変わって異様な光景が表れた。
2人の死体が大きな桜の下に置かれていた。
2人の名は栗ケ原咲良と駆田亜留斗だった。
同じクラスの人だ、話したことはないが成績優秀で面白く人気者だったのはよく覚えている。
「何でこんなことに。」
その言葉を真っ先に発したのは俺ではなく琳花だった。
「フハハハハ、よく来たな正義と琳花。ここまで来る行動力は褒めてやる。」
不敵な笑みを浮かべる声の主は矢野だった。
「矢野なんでこんなことしてんだよ、お前は凄く優しいやつだったのに。」
勢いよく俺は殴りかかる。矢野の頬にクリティカルヒットする。
「この僕をよくも侮辱してくれたな。そんな君には天罰を与えてやろう。」
そういうとガソリンとライターをリュックから取り出した。
「兄さん、こんなことはもうやめてよ。これまで何人殺したの?ねぇ、聞いてるの?」
「琳花、お前と僕は血が繋がってないんだ。
元の僕の両親は5年前父さんのDVが原因で離婚し母さんは自殺した。親戚、つまり今の両親に引き取られた。だから僕は気づいたんだ人と人は争う生き物だと。だから人殺しを始めたんだ。勇様と共に。」
俺は人殺しに対して燃え上がる怒りを覚えていた。人を殺す罪にも。
「その勇って誰だ?騙されてるんだ、お前は」
哀しみさえ覚えている。泣きだしてしまいそうだ。こいつともっと関わっていたら止められたかもしれない。そんな不甲斐ない自分にも腹が立つ。
「勇様の名を汚すな、愚民どもが!
勇様は桜花大学の勇者と賢者の集いの神だ、そんなことも分からないのか。ここで炎に焼かれろ、加藤正義。」
勢いよくガソリンをばら撒き、ライターで火をつける。
炎が勢いよく火柱をたてる。
「逃げて、正義。早く行こう、このままじゃ私たちも|焼かれる(殺される)」
琳花が腕を掴む、そのまま連れ帰ろうとする。
「いや、まだだ。あいつを殺して|春宮市(故郷)を救う。」
「その前にあなたが炎で死んじゃうよ。
正義はこんな所でまだ死んじゃダメ。」
「さらばだ、次は霧ヶ丘学園屋上でまた会おう」
そう言い残し矢野は炎の海をバイクで去っていった。