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賢者とかみさまの忘れ物  作者: たかやす
一章
3/22

3

アナとともに来た医者は、白髪混じりの薄い茶髪に茶色の瞳をもつ50代の男性。走ってきたためか息は切れ切れで、汗もうっすらにじんでいる。


「…っ怪我人は?」

「ここです。みたところ、肋骨骨折、右肩脱臼、内臓打撲による内出血、骨盤不全骨折、右大腿、左下腿の枯れ木による損傷、特にひどいのは右下腿の解放骨折ではないかと…細かいところまではわからないのですが…」


医者はけが人に手をかざして、

「…簡単な止血をしてくれているな、さすがだな…」

「簡単な魔法しか使えませんが…」


けが人は、ダンサーと導師ですでに家の中に寝かされていた。呼吸は荒く、汗も大量に流れており顔色が悪い。時折呻くように声をだしているが、苦悶している様子だ。

ダンサーにより簡単な治癒魔法をかけてもらっているが、どちらかというと攻撃魔法特化に近いため全身の外傷を治す大掛かりな治癒魔法は使えない。使えるのもほんの一握りの高名な司祭やシスター達の使う神聖魔法や治癒魔法に特化した魔法使い達である。一昔前だと精霊魔法で治療する手段もあったが、今では難しい。一般的な治療としては医者や祈祷師による薬、外科的な治療、それで難しい場合には魔法という手段になる。


アナが連れてきた医者は、医者としての学問と治癒魔法を使用できるため、両方を使用したカクテル治療が可能となる希少な人物でもある。


「…概ね君の見立てで間違いないだろうな…とりあえずは右下腿の解放骨折以外から治療しよう。右下腿は最後に外科治療と組み合わせて治そうと思うが…正直五分五分な状況だろう」

「先生、難しいでしょうか…」

「アナ、すまない。解放骨折がなければなんとかなるかもしれないが、そこが1番厄介だな。特に感染と出血だ。手遅れになる前に開始しよう」


そういうと先生は、鞄から道具を出した。全身を覆うほどの魔法陣が描かれた布をけが人の上に被せた。

「かの者の身体を巡る生命の源よ、その力を持ち絶たれた繋がりの源となれ」


その呪文と同時に魔法陣が輝き、骨折部位に吸い込まれていった。


「とりあえず数が多いから、仮骨形成までだ。ダンサー殿、眠りの魔法は使えるか?」

「はい、どの程度まで眠らせますか?」

「呼吸をとめないぎりぎりの深いものを頼む」


ダンサーがけが人の額に手をかざし、「眠り、眠れよ、誘い、誘われ、優しい夢、柔らかな夢よ、わが魔力に応じよ。…眠れ。」

すると、苦悶の表情が和らぎ、呼吸も落ち着いてきた。


「助かったよ。アナと導師はお湯と綺麗な布を準備してくれ」

先生はそれぞれに指示をだしていく。両手に手袋をはめ、予め開いていた道具袋からナイフやのこを出していく。


「ダンサーは治療の心得があるようだから、手伝いをしてくれ」

「わかりました」

そういって治療が始まった。




翌朝

けが人の治療は無事終え、後は本人の回復力次第といったところのためこれ以上は何もできない、治療後診察には毎日くるといい先生は帰っていった。


「アナ、この人のことは私たちに任せて仕事いってきていいのよ」

「あぁ、後のことは任せておけ」

「…何も出来ず申し訳ありません。」

申し訳無さそうに謝るが、2人は特に気にしていない様子でアナへ仕事に行くよう促す。


「私、今日は午後からお休みもらっているので、すぐ帰ってきます」

「はいはい、いってらっしゃい」

「頑張れよ」




「アナ、おはよう」

「ルイーズ、おはよう。あら、アドリアンは?」

「彼、今日は遅番なのよ」

更衣室で着替えをしていると同じ職場のルイーズが声をかけてきた。彼女は明るい金髪にゆるいウエーブがかかっており、青い瞳をもつアナの数少ない友人の1人だ。アドリアンはルイーズが今お付き合いしている彼氏である。


「昨日の雨すごかったじゃない!?私の家の近くで小さな崖崩れが何箇所かおきてたまったもんじゃなかったわ。アナのところはどう?」

「…あー、うん、近くで崖崩れがあったの…」

アナは思わずあまり容態のよくないけが人のことを思い出し表情が暗くなってしまった。


「何かあったの?」

「…様子を見に外に出たら巻き込まれた人がいたみたいで…」

「え!?大丈夫??…あ、そういえばいつもの2人がきているのよね?」

「そうなの、おかげ様でシモン先生呼べたし…でもあまり容態がよくないみたいなの…それにお2人とも今回はすぐに行かれるみたいで…」

「そうなのね…。シモン先生のところには運べないの?」

「先生のところは今一杯みたいなの」

「残念ね…何か必要なことがあったらいってね!力になるわ」

「ありがとう。でももうシモン先生もやれることはやってあとは本人次第っていっていたから…」

そういい、2人で更衣室をでて職場へ向かった。


2人の職場はケテルの王城のすぐ隣にある大図書館の「茶色の塔」が勤務場である。

大図書館は世界的にも有名で、多くの学者、賢者達が訪れる場所である。

一般的な書物はもちろんのこと、専門的な書物や魔道書、古書とあらゆる分野のものが取り揃えられている。わかりやすいように色がわけられ、場所もわかれている。

例えば、「文学・大衆向け読み物関係」は紫色、「子ども向け読み物」は茶色といった具合に総合案内も含めると1から10(0)という具合にだ。特にその中でも「魔道書、古書専門」(黒)、「歴史研究所」(白)は特殊部門といわれており、特定の条件を満たさないとそこへ勤めることはできないと言われている。


またそこの所属部署のカラーにより、制服が決まる。アナとルイーズの2人も白い絹のランタンスリープの半袖シャツに茶色のタータンチェックのベスト、同じ柄の膝下のフレアスカート、(男性の場合は半袖シャツ、茶色のタータンチェックのベスト、同じ柄のテーパードパンツ)というスタイルである。


「今日はお局様のご機嫌が良ければいいなぁ」

そういうや否や、アナはルイーズの口を塞ぎ周りをみる。

「だめよ、ルイーズ、そんなこといったら。司書長様は貴族様なのだから誰かの耳にはいったら何をさせられるかわからないわ」

「…そうね、ごめん、アナ。軽率だったわ」

「気をつけないとね」

そういうと気づけば「茶色の塔」の前にきていた。各塔はそれぞれ独立してもいるが、中でもつながっている。大きな門はまだ開門時間ではないため固く閉じられているが、その側には小さい「職員専用」とかいた札の下がっている扉もあった。その扉には職員以外開くことができず、魔法認証がかけられていた。

アナが扉に手を触れると、扉に彫られた魔法陣が輝き扉が開いた。開いた状態でルイーズも扉に手を触れると同じように輝き、2人が中に入ると自動で閉じていった。


「アナは今日はどこの担当?」

「うーん、今日は受付。でも午後はお休みとってるから」

2人は分担表を見ながら話をしている。

「あ、私も受付だわ!やったわ!午後からの休みは2人がきているから?」

「そうなの。今回は滞在できるのが明日までなの。だから少し時間をとってと思ったのだけど、昨日のことがあるから無理そうかなって…」

「残念ね。私は2人に久しぶりに会いたかったわ」

「ふふっ導師様もダンサー様も喜ぶわ。伝えておくわね」


話をしながら受付のほうへ歩いていく。受付の場所は2つの貸し出し、返却スペースがあり、所々には子どもウケを狙った動物や妖精達のぬいぐるみや壁のペイント、仕掛けなどが随所に見かけられる。


そこに座りながら開館準備を行っていく。他の職員もそれぞれの役割ごとに忙しく準備を進めていた。


「アナ、こちらへ」

アナの目の前には「茶色の塔」司書長が来た。薄い茶色の長い髪を後ろで1つにまとめ、茶色の瞳はややきつい印象を与える。


アナとルイーズは慌てて立ち上がりカーテシーをする。

「はい、司書長様」

そういうと、司書長の後についていく。

ルイーズはその光景をみながら、

(また何嫌味なことをいうのかしら…)

と、アナのことを心配し司書長を心の中でこき下ろした。


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