WBW 前半
ウェポンビッグワーム
略称 WBW
生物兵器の一種。非常に巨大なミールワームの様な生物であり、長さは凡そ10~100m。更に巨大な個体の発見報告もある。脚部の筋肉が非常に発達している為、巨体でありながら、かなりのスピードで突進をしてくる。感覚器官も発達しており、人間やその他の生物を執拗に追い回す。砂漠や森、果ては水中や寒冷地など様々な地域に生息しており、独自の進化を遂げており、環境適応能力が高い。食欲旺盛で満腹になることは無く、常に獲物を狙っている。生殖機能を持っている個体と持っていない個体が存在する。兵器として運用する際に生殖機能を剥奪された個体は老齢で、巨大かつ凶暴性が増している場合が多い。生殖機能を持っている個体は基本的には有性生殖だが、稀に無性生殖の個体もいる。基本的に寿命で死ぬことは無く、外敵からの攻撃、又は餓死が主な死因である。頭部以外の外見は通常のミールワームと変わらず、そのまま巨大化させた様な姿をしているが、頭部の形状が大きく異なっている。頭部は個体ごとに違った進化を遂げている事が多いが、大きくグループに分けて「円口型」、「槍頭型」、「針山型」の三種類である。
「円口型」は自身の身体の直径と同じ大きさの口を持ち、獲物を丸呑みにする習性がある。目は退化しているが、その他の感覚器官が発達していると考えられている。有機物を無機物ごと取り込み、体内の強力な消化器官で分解し、その後不要なものを排泄する。そのため、この種がいる地には岩や瓦礫、骨等が不自然に混じりあったものが発見される。また、獲物をおっている最中にあったものを無差別に飲み込むが故に傷をおっている個体が多い。
「槍頭型」は頭の先が槍のように鋭く尖っているのが特徴である。非常に頑丈であり、砂や氷を掘り進んだり障害物を破壊したりすることに用いる。頭部を振り回したり、薙ぎ払ったりするこうげきは範囲の広さと重量も相まって非常に危険である。頭の先が深く折れてしまうと、大量出血を起こしたり、活動範囲が著しく縮小してしまうが故に死んでしまう場合が多い。
「針山型」は顔に無数の針と穴が空いているという奇妙な姿をした形態である。他のふたつの型よりも小型であり、どんなに大きくても2m程にしかならない。その分瞬発力が早く、攻撃性が高い。生物感のない頭の造形や攻撃を仕掛けるまで動かない性質から死んでいる、もしくは抜け殻か生き物でないと勘違いされることが多く、被害にあう人は多い。顔中に生えたトゲが獲物に突き刺さり抜くのが困難になった後に全身をくねらせ暴れ周り相手の肉を抉る。そして無数の穴に入るほど細かくなった肉や血を捕食する。
有性生殖の機能を持ったWBWは他の型の同種とも子孫を残そうとするが、その場合、大体の子は歪な形の頭となることが多く、捕食が上手くできず死んでしまうケースが多い。稀により強力な個体が産まれることもある。
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「はいはい、あーそうですか。ならいいですよ別に。こちとらそれなりに持ってますんで自持ちの武器でなんとかしますよ。へ?武器そんなに持ってるのはテロリストかって?ああ、来てくれるの。じゃあ武器持ってきてね。よろしく。」
セシルさんは電話を切った。
「…どうだった?」
「うん、ダメみたい。ウィールパラスは国じゃないし実質的な無政府地域だから協力できないって言われちゃってね。参ったな。」
「まあ、武器の貯蔵は沢山あるしね。でも、なんでこんなにいっぱいあるの?」
「現役だった頃に奮発しすぎて引退までに使いきれなかったからね。しょうがない。てか、第一1人の殺し屋に組織全員殺せって無茶があるだろうに。」
「で、それ潰して全部持って帰るってしてたら溜まっちゃったってこと?」
「ああ、うん、まあね。」
サヤカとアビゲイルが砂上用のビークルに武器を運んでいる。
「あの二人も来るって言ってるけど大丈夫なの?」
「2人の好きにさせてるのさ。ホントに嫌なら行かないって言うしな。因みに今日はどこが欠けてるんだ?」
「両足。付け根からゴソッとね。でも運転には影響無いから安心して。」
「うん、それならよかった。」
突然インターホンが鳴った。セシルさんはため息をついてドアを開けた。ドアの向こうには妙に綺麗な服を着たサングラスをかけた6人組の男がいた。
「どうも、こちら世界中心機関治安維持部の者ですが。こちらセシルさんのお宅で間違いないですか。」
6人の中で一番図体のデカい白髪の男がずいっとセシルさんに顔を近づけた。
「はい、そうですが。」
「お前ら、中を調べろ。」
後ろにいた5人は直ぐにセシルさんの家の中に入り、辺りを漁り始めた。
「こちとら家族同然の人間がWBWの危険に晒されてるんでね。早く済ましてくれんかね。食われてからじゃ遅いだろう。」
「お気持ちは分かりますがね仕事なので。」
奥の方で悲鳴が聞こえた。そして男が3人戻ってきた。1人は泣いているアビゲイルの両腕を掴み持ち上げていて、もう2人は暴れるサヤカの腕と足を縛って運んでいた。私は脚のリミッターを外そうと構えた。
「待て、ステノ。ここで早まれば全部おじゃんになる。」
「賢明な判断だ。どうした、お前ら。」
「は!この少女達が、大量の武器をビークルに積んでいるのを発見し、拘束しました。なお、武器をこちらへと向けたので拘束致しました。」
「ふむ、致し方ないか。その2人を連行する。こちらへ運べ。」
「ちょっと待ちなさい!」
私は彼らを睨んだ。
「どうした、嬢ちゃん。何か問題でも?」
「どうして2人が拘束されるのよ?」
「さっき言った通り、我ら世界中心機関の職員に向かって武器を構えたのだぞ?拘束対象になって然るべきだ。」
「でも、攻撃したかしら、あなたたちに?」
「それはさせないさ。する前に止めるのが当たり前だろう。」
「ただの予測や勝手な思い込みで家族を拘束されるなんて最悪よ!今すぐ2人を離して!離さないならコッチにも考えがあるのよ!」
私は義足のリミッターを外した。足から機械音がなる。
「ステノ!やめい!お前が手を出せば罪は決定的なものになってしまう!」
私は構えるのをやめない。もしもそれ以上ここから2人を出そうとすればそのまま4人の首を掻っ切るつもりだ。
「うん、なんだ?」
白髪の男がそう呟いた瞬間に地震が起こった。白髪の男が外を見ようとしてドアを開けると家の中に砂の混じった風が流れてきた。バタンと直ぐにドアを閉め、髭に着いた砂を払いながら男は言った。
「チッ、しょうがない。WBW討伐までは目を瞑っておく。今すぐ討伐して来い。まさかここまでの巨大な個体だとはな。」
私は義足のバネを戻して普通の状態に戻した。アビゲイルとサヤカは離されて直ぐに私とセシルさんに駆け寄った。アビゲイルは号泣してしまい、私がおんぶして連れていった。サヤカはアビゲイルを泣かせた事に腹を立てていて男達に中指を立てていた。まだ家の武器庫の方にいた男達とすれ違う時に私の足にわざとぶつかってきたが少しずらしてスネに攻撃してやった。でも効いていなかったみたいで少し悔しかった。その後武器を一通り詰め終わり、私はビークルの運転席に、アビゲイルはビークルの荷台の方に乗った。サヤカは両手足に高速移動用の小型ジェットを付けて準備運動をしていた。コレも彼女が自身で作ったものだ。私の使っている高所からの着地のために使っている装置の出力を上げて色々いじったものだ。セシルさんは家の屋根からWBWを狙っていて、状況報告と狙撃をしてくれることになった。
「WBW、先程の浮上から浮き上がらないままだ。出来れば隣にいるコイツらに任せたいところだが、サヤカ、陽動を頼む。くれぐれも気をつけてくれ。」
「了解〜。いってきまー。」
サヤカは地面を滑るようにして走っていった。地鳴りがする。
「今だ、サヤカ!真下からくるぞ!」
サヤカが軌道を斜め上に変えて下から飛び出してきたWBWをかわした。デカい。直径5mもある、超大型だ。
「円口型だ。飲み込まれないように注意し、飲まれても落ち着いて脱出するんだ。頼んだぞ!」
私はアビゲイルに合図を送ってからアクセルを踏んだ。




