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淫魔リリイの回想

暗黒大陸

魔族の住む大陸。人間族の住むカテドラル大陸よりも気候が厳しいため、生存競争がおのずと熾烈になっている。そのため、この大陸の魔物や野獣は、カテドラル大陸の魔物や野獣たちよりも強く、大型のものが多い。ゆえに、この大陸に召喚される地球の人間は、まず助からない。

16年前の天魔戦争の最中、魔王アバドンはカテドラルに侵攻したが、勇者たちに討たれた。

そもそも天魔戦争とは天界軍と魔神軍とのいにしえから続く戦いのことだ。魔王アバドンは7大魔神の配下に過ぎず、天界軍に組する人間どもを撃滅させる使命を負っていた。


そんな魔族の大陸で、魔王の愛人だったサキュバスのリリイがいる。魔王と配下たちのほとんどは人間との戦いで生き残ってはいなかった。だが、力のないリリイは、この大陸に残されてしまった。そして、魔神の使命を果たせなかった魔王の配下に、世間の風当たりは強く、誰も助けてくれなかった。当然のようにリリイのいた集落でも、手のひらを返したように冷たくリリイに当たった。さらに、身の危険を感じたリリイは集落を出ざるを得なかった。

そう、それは仕方のないことなのだ。なぜなら魔王軍には自分の親兄弟もいて、ほとんどが帰ってこなかったのだから。だから、リリイは魔王様を殺した憎き人間どもに復讐するためだけに、この16年を生きてきた。

しかし、この厳しい暗黒大陸で生き残るために、魔族は助けてくれない。それならと、召喚された地球人をあてにすることにしたのだ。


15年前に最初の召喚が起こった。街や集落にいることの出来ないリリイは一人で洞窟に住んでいた。リリイの毎日は常に生きるか死ぬかだ。だから、虫やミミズも食べた。葉っぱや苦い木の実なども、口に入るものはなんだって。そして、いつものように何かないかと、恐る恐る散策する。洞窟のある林を抜けた先に、岩場があるのだが、そこに突然、光の柱が立ち上り、たくさんの人が現れた。

「な なに?!!人間!人間どもがこんなところに!!」

疑問と怒りが入り混じるが、林の中から様子を見るしかない。リリイは戦う力がないからだ。しばらく見ていると、何かおかしいと思えてくる。そう、喋っている言葉が分からないのだ。この世界の言葉ではない。

「人間族じゃないの???」

着ている服もなんだかこの世界の物とは思えない。変な格好をしている人たちも多い。普通の格好の人たちに混じって、スーツ姿や、水着の子達は目立つ。


『なっ なに?なにが起こったの?』

『ここ、どこだよ?』

『what?』

『where?』

『まさかの異世界?』

『きたこれ!』

『ついに来たよ、俺にも!』


そんな呑気な人間たちは気付かない。あれだけ目立てば、魔物がやって来る。ゴブリン、オーク、オーガこの大陸の魔物は常に腹を空かせている。オーガはその場で食べ始め、オークは女を犯し、ゴブリン共は、男は集団でいたぶり殺し、女は連れ去る。その場はすぐに地獄絵図と変わる。


『た たすけて』

『いっ、いやー』

『な なんだよ これ なんなんだよ』

『にげろ』

『ガッ』

『ぐえっ』


リリイはその様子を見ていて、違和感が確信に変わる。この世界の人間が無防備に呑気にしていたこと。そして、魔物に襲われてからの不甲斐なさを見たからだ。こちらの人間はひ弱だが、それでもゴブリンに少しは抵抗できる。また女たちもオークを見たら、死にものぐるいで逃げ出すのに、それをしない。

リリイは愛人などやっていたが、馬鹿ではない。

「よし、あいつらを手下にしよう。こっちに逃げて来ないかな?」

「あっ!来た来た」

足の速い人間たちが20人くらいこちらに向かっている。リリイは林から少し身を乗り出し、手まねきする。リリイは見た目は人間だから問題ない。先頭の人が気づき、こちらに来る。リリイはついて来るのを確認しながら、洞窟の方に駆け出す。魔物たちは獲物が多すぎて、こちらには来ていないようだ。洞窟に入ると、付いてきた20人も駆け込む。すぐに手振りで、入り口を塞ぐために大きな岩を動かすように指示する。たまたま大きな岩が近くにある洞窟に、住んでいただけなのだが。塞ぐ前に、貯めていた糞尿を入り口の外に撒く。あとは運だ。


『助けてくれてありがとう』

「あなたたちどこから来たの?」

『ん?何?もう一度言ってください』

「やっぱり、言葉が通じないわね。こちらの言葉でもないし」

『何語なんだろう。誰かわかる人はいませんか?』

誰もわかるはずがない。


リリイは腐っても悪魔、腐ってはないけど、水と火には困らない。いわゆる生活魔法ぐらいは出来る。魔法の初歩の初歩だ。淫魔だけに夜のスキルはかなり持っているのだが、魔法はからっきしだ。

「これから先思いやられるけど、こいつらを使って、やらなければ!」

「その前に、ここを無事に抜け出さないとね。とりあえず食料だわ。またミミズかな〜嫌だな〜」

ここの土を掘ると意外とミミズとか、いもむしなど、あたりはモグラだ、が出てくる。

とりあえずここに出来るだけ長く居なくてはならない。


20人の構成なのだが、20代くらいの男が6人女が3人 15歳前後の男の子が4人女の子が2人10歳くらいの少年が3人少女が2人だ。

こちらに地球人が召喚される時、この世界では、ありえないもの(銃火器)以外は、身につけているものは一緒に付いてくるらしい。なので、食べられそうなものは出してもらう。女性と女の子たちが結構持っていた。

「ジェスチャー疲れる〜。男どもはエロい目で見てくるし、キモいわ」

灯りがないので、スマホのライトをつけてもらったり、灯火で灯りを取る。水も飲ませてやった。すると、みんな『おお〜』と言っていた。


『みんな聞いてくれ。あー 俺は伊藤健一25歳だ。この世界は俺たちの世界じゃない。いわゆる異世界だ。さっきの惨劇を見ただろう。この人は俺たちを助けてくれたんだ』

『そんなのわからないじゃない。この女が私たちをこんなところに呼び寄せたかもしれないじゃない』

『まあ たしかにそう言われると、違うとは言えないが、かといってこの人の助けなしで、ここで生きて行けるのか?』

『いえ、私が言いたいのは信用しすぎない方がいいんじゃないっていうことよ』

『そうだな。ひとまずは信用して、様子を見てみようと思う。』

みんなも頷く。


1週間持ちました。もう限界です。ここの土はほとんど掘り返しましたとも。何か食料を取りに行かないと、体力がなくなりここから出られなくなる。

この1週間土を掘り返す以外は、やることがないので、ジェスチャーで簡単な単語を教えていた。

「ケン 食べ物 取る 行く」

「はい」

こいつはケンというらしい。リーダーなのか、こいつが1番話しかけてくる。それに、私を1番エロい目で見る。キモい

「岩」

「はい」

ケンはみんなに岩を動かす指示をする。

人一人通れる隙間があくと、外をそっと覗く。うん 魔物はいない。

「ケン 男 行く」

「はい」

ケンは20代の男5人を連れてくる。

「行く」

6人が頷く。

「棒 持つ」

まずは男たちにちょうどいい長さの硬い棒を持たせる。

最初に確認しなければ、いつまでも怯えないといけないから。恐る恐る林を散策しながら岩場に向かう。6人の男たちは私の後をビクビクしながら付いてくる。こいつらこんなんで役に立つのか。結局1匹もいなかった。残骸とかあって吐いてるやつもいる。こいつらメンタル紙かよ。


リリイは1年もサバイバルしていたから、食べられる葉っぱや木の実がわかる。まあ人間が食べて無事かはわからんが、その時はその時だ。いっぱいいるし、2、3人死んでもいいか。虫もとる。リスはすばしっこいから無理だ。ヘビも以外と速い。1人じゃ無理だったが、7人いればウサギはいけるんじゃねと考え、ウサギを探す。・・・いない。いつも私をあざ笑う あいつがいない。くそっ!また、葉っぱと木の実と虫かよ。1年間同じ食事だよ。よく生きてたな、私。


そんな事を考えていると、神が現れたよ。そう、サーバイバーだよ。神はヘビを捕まえてくれて、誰かのカッターで捌いてくれた。1年以上ぶりのお肉は美味しかった。涙が出たよ。後日、神が言うには、こんな楽なサバイバルはないと言っていた。寝床も水も火もあるんだから、あとは食料だけだったとのこと。


それから、1年経った頃には、会話もできるようになった。ただ、難しい単語はイメージが出来ないため、伝えれない。

ちなみにこの1年で7人ほど死んだ。魔物に襲われたり、自殺したのもいた。

それにしても、こいつら召喚者たちはほとんどみんな、スキルを持ってるようだ。剣術や槍術を使えるもの、魔法を使えるものが出てきた。他の者はアーティファクトじゃないと、わからんかもしれん。

こいつら私よりはるかに強くなってるから、自分の立場が危ういと思って、男どもは食っておいた。私は今や女王様状態だ。私のスキルをもってすれば、造作もないことだ。女どもの目なぞ気にもならん。


2回目の召喚があった時、前とは違う場所だったが、洞窟から近かったから助けに行った。下僕を増やすためだ。

最近はゴブリンやオーク、オーガなどに負けることはなくなっていた。まあ あいつらはまずいから、食わんが。

しかし、13人プラス私で助けられる人数も限られる。地球人は足手まといだからな。あっ 私もですか、そうですか。

30人ほど洞窟に連れてきたが、ここまで増えると、狭くてもう無理だ。引っ越しを考える季節だ。さらばだマイホーム。

よし下僕どもに新居を探してもらおう。

「ケン、ソウ、クー50人ほど住めるところを探してきてくれ」

「はい リリイ様」

初期メンバーの名前は覚えたよ。人身掌握はしっかりやらんとね。まあ、ほぼ下のスキルのおかげだけどね。おかげで、男どもは私の言うことは、どんなことでも聞くようなり、完全に洗脳出来た。下僕と呼ぶのは心の中だけでしか、しないけどね。

そして15年目の召喚で、うちらのコミュニティは1万人を超えた。

10年過ぎたあたりで、私を見捨てた集落を襲って、壊滅させてやった。その時たまたまアーティファクトを手に入れた。たまたまったらたまたまだ。

スキルが不明だった奴らも判明して、1万人の戦闘集団になった。あとは装備をどうするかだ。今だに木の剣や槍を使ってるからな。この大陸の脳筋どもは道具を使うこともわからん奴らばかりだからな。何が肉体言語だ。

仕方がない。人間どもの国から仕入れる事にしよう。元手がない!!物々交換か、奪うという文化の大陸だからな。アーティファクトを売る事にしようかな。いや、勿体無い、人間の街を襲おう。

「ケン 旅の支度をしろ。精鋭1000人ほど連れて行く。アイテムボックス持ちもメンバーにいれておけ」

「はい リリイ様」

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