隠れ家
3人が脱衣所から出ると部屋の様子が変わっていた。
『時間があったので、ここをリビングに作り変えてみた。まあ座ってくれ。君たちのプライベートルームはあそこのドアの先だ。各々使ってくれたらいい。』
と、大きなソファを勧めてきた。
『果汁水か酒しかないが、果汁水でいいか?』
(((お酒!!?)))
『『『あ ありがとうございます』』』
俺はセンターテーブルを挟んで、向かいのソファに腰を下ろし、ビールを仰ぐ
『ちょっ ちょっとシン君、なっ、何飲んでるの?』
美咲が焦った声を出して聞いてくる。
『ん?ビールだが あーこの世界は酒は誰でも飲めるんだ。ちなみに15歳で成年だ』
『まあ、そんなことより君たちはどうするか決まったか?あと聞きたいことがあれば聞いてくれ』
『とても厚かましいのですが、私たちを保護して貰えないでしょうか』
知里は小さな声を不安そうなに絞り出した。
『ん、わかった。俺は最初からそのつもりだったよ。助けてそれじゃあな、じゃあまりにも薄情だしな。』
『ということで、1ついや2つかな条件がある。ここで見聞きすることは俺の許可なく口外しないでほしい。ただし君たちの生命に危険があるときは漏らしても構わない』
『『『はい わかりました』』』
『あと多分この後の話と関係すると思うが、俺のことは敬称なしで呼んでくれ。ややこしいから』
3人は怪訝そうな顔でこっちを見ているが構わず
『俺がなぜ日本語を喋れるのか疑問におもっているだろ?』
3人はコクリと頷く。
『俺には日本で暮らしていた記憶がある。たぶん転生したんだと思う。向こうでは成人していた。』
『なるほど それで・・』
3人はそれぞれ驚きながらも納得した表情でそう、こぼした。
『他に聞きたいことはないか?』
『こちらに来た人で元の世界に帰った人っているのですか?』
『んー 俺も冒険者になってまだ日が浅いから、他の国のことはわからないが、この国では一度も聞いたことがないな』
『・・そうですか』
知里は顔を曇らせる。
『なんと言っていいのかわからないが、この世界で生きて行くための知識や方法はおしえるつもりだ。』
『っ、ありがとうございます。出来ることはなんでもやります。このご恩は必ず返しますのでよろしくお願いします』
知里はペコっと頭を下げる。
美咲も芽衣も同じように『『よろしくお願いします』』と頭を下げた。
『まあ 型苦しいのはそれぐらいにして、他に聞きたいことはないかい?』
『あの 私たちと一緒に召喚された人達はどうなるのでしょう?』
美咲は助けてくれた女の人が気になるのか、そう聞いてきた。
『一般的に捕まった人は強制的に奴隷契約させられ、奴隷の首輪を嵌められる。そして奴隷になったものは全ての自由が奪われ、所有者に絶対服従することになるな。』
『そ そんな・・』
美咲は絶句する。
『ただ、君たちを、助けてくれた女の人は、もしかしたら逃げ延びているかもしれない。憶測だけどね』
『なぜですか?』
『この世界に召喚された人はみんな例外なく、何かしらの才能が与えられ転移させられているようなんだ。多分その女の人は予知の才能を持っているんじゃないかなと』
『あっ、たしかに予知があれば』
『そうだな、生きていることを願おう』
『前にも話したが、この世界はとても残酷で歪なひどいところなんだ。だから君たちは生きるために知らなければいけないし、力をつけなければいけない。』
『『『はい』』』
『あの 私にも才能はありますか?』
芽衣は不安そうに聞いてくる。
『ああ まず間違いなくあるはずだ。ただそれが何なのかはアーティファクトで調べないとわからないんだ』
それから少しの間4人で今後のことなどを話した。
『まずは、みんなで街に行くことかな?』
『うん、シンじゃ女の子の必要なものってわかんないもんね』
クスクスと美咲がからかう。
『もう 美咲お姉ちゃんシンをいじめないでよ』
『芽衣はやさしいな、ありがと』
『それじゃ明日は街に行こう。あと万が一のためにみんな冒険者登録しておこうか。身分証明にもなるからな』
『あと住む場所なんだが、せっかく作ったしここでいいかなとは思うのだが?』
『私はシンがいいと思うなら反対はありません。信頼してますので。』
知里は少し赤くなりながらもはっきりと意見を言った。
『私もおなじです』
『私も反対はないよ。ただ少し改良できないかな?』
美咲がぐるっと殺風景な部屋を見回して言った。
『ああ それはするつもりだったよ。長く住むならより良くしたいもんな。意見を聞かせてくれ。』
『うん じゃあ』
美咲がそう言うと、それからは3人のリクエストを長いこと聞くことになった。