二人との夜
さっき居た荒地に帰ってくると、駆け出した。程なくして、街の壁の上に立ち様子を伺う。門からゾンビが、次々にゆっくりと出て行くのが見える。街の中はおびただしいほどのゾンビだらけだ。魔力探索で生き残りがいないか探す。屋根伝いに貴族街の方へ向かうと、この街で一番大きな屋敷から、ゴーストやレイスが向かってくる。
「あの屋敷にリッチがいるな」
魔力探索に引っかかる。一際目立つ魔力量だ。
戦闘になると面倒なので、エナメル王都に転移で逃げた。
ギルドは夜でも人がいるので、報告に行く。
俺が受付に行きフラン国のことで報告があると言うと、受付の子が奥に人を呼びに行ってくれた。
ガンテが目をこすりながら出てくる。
「ガンテ、ここで寝てるのかよ?」
「ああ 家に帰るのが面倒だからな」
「いいのかよそんなことして?」
「あっ いんだよ、俺が一番偉いんだからな」
ガハハと笑っている。ギルマスだったらしい。
受付の子が、帰らないとまた、奥さん怒鳴り込んで来ますよと、文句を言っていた。
「それで何があった?」
「最初の街に着いたんだが」
「あー、マルセか」
「リッチに支配されていた。生き残りは一人もいなかったな。全員アンデットになっていたぞ」
「!!!おいおい、本当か?いや本当なんだな。おまえが嘘をつくわけねえ」
受付の子も唖然としている。
「おい ミー、各ギルドに連絡の準備をしろ」
「は はい!」
「とんでもない事になったな。フランの国の街全部が、リッチに支配されている可能性があるよな?」
「たぶんな。他の国もフランから人が帰ってないんだろう?」
「ああ そうだ。しかし不味いな、よりによって召喚と重なったのがな。人が足りない」
「じきに帰ってくるだろ」
「そうなんだが、こいつはすぐにでも動かんといかん。まあ、帰ってきたやつは門のところで、強制的に受けさせるように連絡しとくがな」
そう言うと、
「おまえに俺から緊急指名依頼だ。断れんぞ。そのかわり、報酬ははずむ」
「何をさせたい?」
「話が早くて助かる。フラン王都にまで行ってくれ、そこにたぶん今回の親玉がいるはずだ。そいつを倒してくれ。」
「おい!リッチの親玉だぞ?」
「ああ デッドエンペラー(死者の王)の可能性があるな。おまえにしか頼めん」
なにか確信があるのか、絶対に譲らない言い方だ。ため息をつき、
「わかったよ。行くよ。」
「そう言ってくれると思ってたぜ。なんせおまえは賢者アリエスの弟子なんだろうからな」
あのトールハンマーでわかったぜと言っていた。この世界でアリエスしか使えなかったらしい。
「そのかわりなんだが、報酬はサナを貰えないか?」
ガンテがポカンとする。
「なんだ、おまえ幼女趣味かよ。あれだけいい女たちを連れているのによ」
ガンテがいかんぞ、普通が一番だと説教してくる。
「アホか。そんな趣味あるわけないだろ。うちの芽衣と仲良くなってな」
と言っておいた。
「まあ おまえがそれでいいなら、構わないぞ」
「よし。なら明日からかかろう。途中の街はパスするからな」
「ああ わかった。よろしく頼む」
その後ドームに帰り、ギルマスとの話しをする。そしてフラン王都までは一人で行く事にした。
その夜
美咲が部屋に来た。
「ソフィアはまだ迷ってるから、私は来たわ。私はこのままでいいわ。人間やめるわ」
「なんかヤケクソになってないか?」
「そんな事ないわ。こういうことは、勢いが大事なのよ」
「・・・」
見つめ合い、抱き合う。
朝方まで一緒にいて、それから寝た。
昼過ぎに起き、支度をした後フラン王都に向かった。途中の街も街道も森にもアンデットがうようよいて、倒してもキリがないので、無視して王都を目指す。王都に着いた時、まだ日は暮れていなかったが、今日は帰った。
「ただいま」
「「おかえり」」「おかえりなさい」
「沙奈たちの様子はどうだ?」
「うん 大丈夫だよ。まだ始めたばかりだから。」知里
「ただ葵ちゃんがね、変な言葉ばかり聞くのよ」
笑いながら美咲が言う。
「しんえん?とか、こんとん?とか」
芽衣が横でべったりとしながら、見上げる。
葵をみると、沙奈に返して貰ったのか眼帯をつけていた。
その夜
ソフィアが来た。
「私は伯爵家の娘だから、結婚しないとその・・。でも、私迷ったの、迷ったわ。私もあなたと愛し合いたいわ。1人だけ蚊帳の外なんて嫌だわ」
俺を見つめそう言う。
「ああ 近くクレイド伯に許可をもらいに行かないとな」
「うん。お願いよ」
そう言って、抱きしめキスをした。そのまま朝まで過ごした。
翌朝
「おはよう」
「おはよ」
キッチンの知里に声をかける。少し機嫌が悪いようだ。パチパチとしている。
「知里」
まだ誰も起きてないので、キスをする。
「ん」知里
「今日の夜部屋に行くぞ」
「うん!」
知里の機嫌が直った。