2度目の奴隷召喚
翌日昼過ぎ
御者を美咲がやりたいと言ったので、美咲が俺の隣で御者をしている。
「街に近づくにつれ、だんだんアンデットが増えているんだが、かなりまずい状況かもしれん」
「そうだよね、さっきからシンのアローがビュンビュン飛んで行ってるもんね」
突如、空からとてつもない波動を感じた。
馬車の窓から知里とメルも顔を出して見上げている。
「なに!?急にどうしたのっ?」ソフィア
「知里お姉ちゃん?」芽衣
!!!前方に光の柱が立ち上った!!!
「あっ まずいぞ 美咲御者をかわれ」
と言って馬車の速度を上げる。だいぶ距離が離れている。
「なにが起こってるの!?」
「さっきのは奴隷召喚だ。この先に今50人くらい現れた。がっ、そこにアンデットがかなりいる」
『なっ ここはどこだ?』
『where are we?』
『なんなの?スマホも繋がらないわ』
『ここ 異世界じゃね?』
『マジか 俺の無双時代がついに来たか!!』
日本人や外国人など人種も年齢も様々だ。
『うわ!助けてくれ』
『ぎゃっ 痛い、痛い 離してっ』
『!!!』
『逃げろっ』
『あれなんだ?ゾンビじゃね?本物かよ。うわっ マジで食うんだ』
そこはパニックになり、散り散りに逃げ出した。
俺たちは召喚された集団のいた草原から、少し離れたところで、馬車から降りた。ゾンビやグール、野犬ゾンビなどが迫ってくる。
「遅かったか。俺は生きている人を探す。ソフィア!任せる」
「わかったわ。みんな、それぞれ攻撃して、あまり離れないで!」
「うん」「はい」「・・・」コクリ
この程度の魔物では、もう誰も遅れをとることはない。
美咲やソフィアは遠距離攻撃スキル 飛燕やクロスフラッシュで軌道上の敵を屠る。知里と芽衣は雷矢と火矢を複数打ち出し、数を減らして行く。知里は範囲攻撃魔法も使えるが、生きている人がいるかもしれないので、単発魔法にしている。メルは超加速で、みんなの目では追えないほどの速さで、ゾンビの首を刈っていく。
サナはみんなのうしろで戦いを見守っていたが、不意にある一点を凝視し始める。
(ん?あれ?葵? !!!)
『葵っ!!!』
走り出す。周りは見えていない。
『葵っ 葵っ あおいこっちよー!!!あっ あ!』
『葵 葵が 誰か葵を助けて!!』
ゾンビがその少女に群がる。そして、サナにも群がってくる。
「なっ!?」
サナが走り出したのを見て、ソフィアが声を上げる。
「美咲、メル、サナを守って!!」
「わかったっ」コクリ
美咲とメルはサナに群がる敵を、蹴散らしメルがサナを抱えて馬車まで戻る。
サナは泣きじゃくりながら、
『葵が 葵が ああ』
ヒッヒッと泣き、葵のいた場所を見る。
ゾンビを蹴散らしたシンが、一人の少女を抱えて戻って来た。
「知里、この子にヒールをかけ続けろ。あちこち噛まれている」
「うん わかったよ」
知里はすぐにヒールをかける。
「それで、どれだけゾンビ化を遅らせられるかは、わからんがしないよりはマシだろう」
「もう、この草原に生きている人間はいない。全滅させる」
と言うとシンはまずシールドを張り、魔力を収束させていく。
(この草原に範囲を限定)
「ラグナロク」
《戦略魔法 収束された魔力に応じて範囲が変わる》
草原は跡形もなくなくなり、土や岩がボコボコに隆起した更地が出来上がった。
「すっご!」美咲、ソフィア
サナは少女のそばで、泣きながら名前を呼び続けている。
『サナ』
サナは顔を上げ、
『助けて、助けてくれるよね』
『・・・いや 無理だ』
と首を振る
『そ そんな 助けて、助けてよ。お願いよ。あなたすごいんでしょっ』
と俺を見上げ、涙を流しながらサナが懇願する。
俺はみんなを見回して、はぁ、と深い溜め息を吐く。ソフィアや美咲、芽衣、メルは悲しそうな顔をしながら、推移を見守っている。知里は俺がやろうとしていることに気づいて、心配そうに見つめている。
『・・・人間に戻すことは無理だが、おまえがこれからこの子と同じような存在に、なってもいいと言うなら助けよう』
秘密を守らせるためにそう言う。
『わかったわ。何をしたらいいの?なんでもするわ』
もう一度深い溜息を吐き、自分の手首をズバッと切り、取り出した2つのコップに血を貯める。
『おまえはこれを飲め』
と一つを渡す。もう一つを美咲に渡して、
「話は聞いてたな。その子に飲ませてやってくれ」
「うん」美咲
ソフィアは話が分からないから、事態を飲み込めず、困惑している。