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奴隷の子

いつものように、みんなで依頼ボードをみる。ここのところ、依頼ボードは護衛依頼で溢れている。5月になり奴隷召喚がいつ起こっても不思議ではない。

「私たちだって人間なのに、どうして、こんなことで稼ごうとするんだろ」

美咲は依頼ボードを見て、去年、自分たちに起こったことを思い出したのだろう、とても憤慨してそう言う。知里と芽衣も同じ気持ちなのか、頷いている。

「そうだな。この現象については俺なりに調べてもいるんだが。15年前に突如始まったんだ。当時は助けようとした人たちも、いたらしい。しかし、どうにも数が多く、何十万人も召喚されている上、言葉も通じない。それなら奴隷にしてしまえと考える悪い奴らも出てくる訳だ。それからは毎年、5月くらいになると、こんな状態になるんだ」

そう言うと、みんなしんみりとなり、ソフィアは小さな声で、

「ごめんなさい」

と謝る。この世界の人間として申し訳ない気持ちになったのだろう。

「ソフィアちゃんは全然悪くないよ。ただね、こんな事がなぜ起こるのか、それについては許せないけど」

「そう知里の言うように、この現象を引き起こしている奴は必ずいるはずだ」

「えっ?」

「こんな事できる人間なんているの?」

ソフィアと美咲が疑問を口にする。

「それはわからない。人間がやっているのか、神か悪魔か・・・。でもな自然な現象と考えるよりは、現実的だろう」

まあ俺なりの考えなんだがと付け足す。


それから、ボードを見て一つの依頼を受けることにした。


依頼書

フラン王都とエナメルーフラン街道の調査

場所 エナメルの北の隣国

日時 受任から

難易度 A

人数 5パーティ (調査員随行のため特別審査あり)

報酬 1人小金貨8枚 前金小金貨2枚(奴隷は除外)

ペナルティ 金貨8枚

集合場所 各パーティ随時出発

備考 フラン王国の周辺国ギルドによる合同調査依頼


会議室でガンテから説明を受けることになった。

「あー この依頼なんだがな。二月前からフラン国から人がパッタリと来なくなったのだ。他の国も同様のようだ。そして、一月前から冒険者に調査依頼を出していたのだが、ほとんど帰って来ていない。帰って来た者の話を総合すると、夜営の時どこからともなく現れた大量のアンデットにやられたらしい。それで、各国のギルドも本腰を入れたということだ」

冒険者がほとんど帰って来なかったのにも訳がある。当初ギルドはこの事件を重要視してなかった為、報酬が安かったのだ。だから、その依頼を受けるパーティは三流以下ばかりだったという事ある。

ちなみにフラン王都とエナメルを往復すると、馬車で2週間というところだ。

「ふむ、夜に現れるか・・」

「他に情報はないの?」

ソフィアはダメ元で聞いてみる。

「これが関係しているかはわからないが、最近、国境付近の森や、山岳地帯でもアンデットが増えていると報告されている。まあその辺りも、調査してくれということだ」

「わかったわ」ソフィア

「今回の随行調査員を紹介する。こいつはサナと言ってな、ギルドで保護しているチキュウの奴隷だ。フラン王都のギルドに連れて行ってくれ、こいつはギルドからある物を持って帰ってくる。それが依頼達成の条件の一つだ」

たしかにそれが無ければ、王都まで行ったかの証明が出来ないわけで、妥当な条件だ。

「わかった」

「それと、特別審査だが、お前たちのパーティは合格だ」

この審査は調査員に対して、暴行、虐待などをしないかの調査である。今までの、そのパーティの実績や人柄など、ギルドが信頼出来ると認めないと合格出来ない。

「調査員には、道中での食事の提供をすること。食事代は別途支払う。戦闘能力はないが、簡単な単語は分かるから、手伝いなどは出来るぞ」

ガンテが言うには、こういう時(危険度が高い)の為にチキュウの奴隷(この世界の奴隷よりも下の身分で、消耗品扱い)を保護しているらしい。そして、この依頼によって、サナより年上の奴隷たちは出て行き、サナの番となった訳だ。


王都エナメル中心広場

「名前だけ自己紹介しようか。サナ、俺はシンだ」

と自分を指してそう言う。

順に知里、美咲、芽衣、ソフィア、メルも同じ様にする。

サナ(ツインテールで、小柄な大人しそうな女の子)は

『私はサナと申します。よろしくお願いします。』

と言ってペコリとお辞儀をする。

ソフィアとメルは前後の日本語は理解できず、サナという単語だけは聞き取れたようだ。

俺と知里たちは当然わかったが、そこはスルーした。よろしくなと言って、

「俺は馬車と食料の調達するから、美咲たちは他に必要な物を揃えてくれ。この子の分も頼むな」

「うん わかったわ」美咲

最近はパーティ予算は美咲に管理を任せている。

俺は行きつけの店で料理を大量に頼む。朝晩のごはんは、いつも通り知里が作ると言ってくれたので、今回は昼飯の分を7人で一月分注文した。どうせ悪くなることもないから、パンや飲料水なども多めに買った。昼メシの為に毎回ドームに戻って知里にご飯を作ってもらうのも悪いし、面倒くさい。料理が出来るのを待つ間に馬車を借りに行く。馬車は箱馬車にした。一月小金貨5枚だ。担保に金貨1枚預けた。この依頼は街道の調査と王都までの間の街を調査しないといけないから、馬車での移動は必須だ。夜はドームに帰ることにした。


「夜ドームに戻るなら、私たち買うものあまりないよね」ソフィア

「だよね」美咲

「サナちゃんに必要な物を買ってあげようよ。」知里

「とりあえず、サナちゃんの持ち物を見せてもらおうか?」美咲

「そうだね。じゃないとシンに迷惑かけるもんね」

必要になるたびに街に転移してもらうのは悪いからと知里が言う。

「問題はどうやって伝えるかよ」ソフィア

「そう、それが一番難しいよね。ひとまずジェスチャーでなんとかやってみようよ」知里

「サナ、持ち物見せて?」

美咲は自分のバックを開けて、みんなに見せる。次にサナが持っているカバンを指差して、開ける真似をする。サナは理解したのか、自分のカバンを開けて、持ち物を見せてくれた。

古着、下着、タオル、歯ブラシ、ヘアブラシと財布がわりの小さな袋などで、あまり物を持っていない。

「これだけだと、少ないわね」ソフィア

「そうだよね。服と下着とタオルを追加で買ってあげよう」

そう言って美咲は、サナを店に連れて行き、身振り手振りで、なんとか買い物を済ませた。

(さっきチラッとナプキンが見えたけど、見た目は10歳くらいかな、でももっと上なのかも?)

後ろをついて行きながら、知里はそんなことを考えていた。

買い物をした後、サナはとても嬉しそうにして、

『みなさま、ありがとうございます』

と言って頭を下げる。

(今日はついてるわ。こんなクソな世界でも、死にたくないから我慢してたけど、このパーティは当たりだわ。それに多分チサトとミサキとメイは、日本人だよね。名前も顔も完全に日本風だもんね。なんとかあのシンっていう子に、気に入ってもらう方法はないかな)

サナはニコニコしながらもそんな事を考えている。

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