王城での狂行
王都エバン王城付近
メグに描いてもらった見取り図を見ながら、侵入ポイントを探す。グレッグは小心者なのか、衛兵がかなり多い。それでもクーデターからある程度時間が経っているので、気を抜くものもチラホラと現れ始める頃合でもある。城壁の警備が手薄になっているところから、ダークベール で闇に紛れ、身体強化と加速の併用で、城壁を一気に越える。そこからは他愛もなく、使われていない部屋の窓から侵入することを繰り返した。
「城って使われていない部屋が結構あるもんなんだな」
独りごちながらも、見取り図に描かれている、こちらの精鋭が待機できる全ての部屋に侵入した。
(次は王族と王族派の子弟か。どこにいるんだ?)
離れの塔が北東西に一つずつあり、三つのうちの一つにいる可能性が高い。
魔力探査で一つずつ確認する。結果、王族3人が北に、多分男女で分けられているのか、子弟が東西にいるようだ。
その後、北の塔の壁を土魔法で足場を作りながら登る。テラスに降り立ち、中を伺うと学院時代に見たことがある王と王子がいた。女性はお妃のようだ。
次も同じように、東の塔を登る。
(こっちは男か)
学院の頃のクラスメートを何人か確認する。
次の西の塔では女の子たちがいた。こちらもクラスメートを何人か確認する。その時ベッドルームの扉が開き、中からでっぷりとした体型の男が出てきた。女の子たちは怯えている。そして一人無理やり手を引かれて、中に連れて行かれた。また、違うベッドルームからも同じような男が出てきて、一人連れて行く。最後のベッドルームにも同様に。
(可愛そうだがもう少し辛抱してもらおう。しかし、貴族の子女にこんなことをするということは、グレッグは治める気はないというこで決まりだな)
やるせなくなり、ドームに帰った。
次の朝
「シン 起きて、ご飯できたよ」
知里が起こしに来た。
「うん ありがとう。起きるよ」
と言って体を起こす。と知里が頭を包むように抱擁して来た。
「昨日、何かあったの?様子がおかしいよ」
「ああ あとで話すが、女の子たちがひどい目にあっている」
「そう・・・」
と言って知里は抱きしめる力を強める。
知里の背中をポンポンと叩きながら、
「ありがとう 知里。楽になったよ。さっ、ご飯を食べてギルドに行こう」
朝食を皆で取った後、昨日のことを話す。
「「「ひどい!!!」」」「「「許さないわ」」」「・・・」
メルも怒りに震えて、殺気を漂わせている。
それからは、メグたちのやる気もさらに上がり、また知里やソフィアや美咲は昨日のはなしもあり、元々やる気のあるところに、更に上乗せとなる。8人で盗賊団皆殺しにする勢いだ。
そもそもこの盗賊団も女性を監禁しているのだから、8人の怒りの矛先は、当然この盗賊団に向かう。
エナメル冒険者ギルド会議室
すでに5パーティは来ていた。その内3パーティ(ミスルナ、モリー、カンター)が前の依頼で一緒だった。
俺が部屋に入ると、みんなの目がこちらを向く。
「あっ またおまえかよ」
「女の子たちだけ働かせる奴ってあいつか」
「うおっ 後ろの女の子たちかわいい子ばかりじゃないか」
「死ねばいい」
いつも通り散々な言われようだ。
「それでは、皆さん集まったようなので、打ち合わせを始めます」
「総指揮は私ガンテがとります。今回の作戦は商隊に偽装した囮作戦です。それに、シンさんのパーティが参加していただいたので、乗合馬車と商隊に偽装した作戦に変更します。そちらの方が誘き寄せやすいでしょうから」
「そうだな こんなにかわいい子たちがいたら、すぐ襲ってきそうだ。ガハハ」
「ちげえねえ へへへ」
女性冒険者が
「やめなさい。あんたたちの方が盗賊っぽいわよ」
「あなたたちどさくさに紛れて、こいつらもやっちゃっていいからね」
とソフィアたちに話しかける。
「「おいおい それはないだろ〜」」
それから作戦の中身を詰めて行く。隊列は乗合馬車を商隊で挟み、それを冒険者たちが護衛するという形になった。
隊形は前の商隊に3パーティ13人、後ろの商隊に2パーティ13人が付くことになる。そして乗合馬車の御者を俺がして、その横にガンテが乗ることになった。
「それでは明日の朝10時にマークス街道入り口に集合してください。では解散です」