疾走1
ドーム内リビング
夕飯はエナメルで済ませたので、みんながソファに座ったところで、話を切り出した。
「さて いいか?」
メグたちに緊張が走る。
「現在タミールがギランの衛星国家3国に侵攻されている」
メグやソフィアたち5人はそれぞれ、驚きながらも真剣な目をしてこちらを見つめ、先を促す。
それから、グレッグ公の陰謀からクレイド伯とした奪還作戦について話した。
「ということで、密書をクレイド領とベルメール領に届けることになった」
「情報秘匿のためにも俺一人で動いた方がいいんだが」
と言うとメグやソフィアたちが何かやらせてと、蚊帳の外は嫌だと言う。
「そうだな王城で、王族や王族派の子弟を誘導するのにお前たちの方が、話が早いだろう。
もしかしたら、戦闘になるかもしれないから、準備だけはしておけよ」
「うん わかったわ」「任せて」「「はい シン様」」「・・・」
と、王都組がやる気を見せる。
「メグ 王女様にしか出来ない仕事がある」
「はい」
「3日遅くても4日以内に王城の見取り図を作ってくれ。出来るだけ詳しく、知りたいのはあまり人の来ない部屋だ。あとは王族や王族派の子弟が軟禁されている可能性のある部屋か」
「はい シン様 3日で作って見せますわ」
「ああ 頼む。メルとミラも手伝ってやれ」
「はい お任せ下さい」ミラ
コクリとメルは頷く。
「知里たちは5人のフォローをしてくれ。あと移動中も夜には寝に帰ってくるから、逐一状況は教えてやる。明日は朝一から移動する予定だ」
翌日早朝
8人はすでに起きていた。
「おっ ソフィアと美咲も起きてるのか?珍しい事もあるな」
「あ 当たり前でしょ」
ソフィアがソッポを向く。
「ソフィアお姉ちゃんと美咲お姉ちゃんは、知里・・・もがもが」
芽衣は美咲に口を押さえられる。
「お弁当作ったから休憩する時食べてね」
知里が弁当を渡してくれた。
「ありがとう。じゃ行ってくる。」
「気をつけてね。行ってらっしゃい」
メグたちも口々に送り出してくれた。
首都タミール作戦会議室
将軍以下様々な所属長が集まる中、現場指揮官からの報告が続く。
「イラ、ニバ、ダマン連合軍はあと二日でこのタミールに到達する模様です」
「そんなに早くか?」
ある高官が聞く。
「はっ各個撃破されるよりもこのタミールに戦力を集中せよとの命令だったので。住民たちを連れてタミールにほとんど避難完了しております」
「相手の戦力はどれくらいなのだ?」
「現在斥候に情報を収集させたものをまとめております。連合軍3国の戦力は判明しておりますが、ギランから出された奴隷部隊の戦力が不明です。斥候が一人も帰ってきません。」
「なに?まあ奴隷部隊なぞ大したことはあるまい」
ここで将軍が口を開く
「いや ギランは軍事国家だ。その奴隷部隊はなにかあるぞ。引き続き情報収集に努めよ」
「はっ」
クレイド領へ向けて1日目
王都からクレイド領へ向けて、街道沿いの道なき道を疾走している。魔力感知で進行方向にいる魔物は、アローなどで殲滅しながら足を止めず進む。何度か街道で襲われてる商隊や乗合馬車を援護するために走り去りながら、盗賊や魔物に魔法を打ち込む。
(なんだこの治安の悪さわ)
「さてと、今日はこのくらいにしておくか。明日の昼には着くだろう」
完全に夜になったので帰ることにした。
「ただいま」
「おかえり〜」「おかえりなさい」
みんなが迎えてくれる
「ご飯の仕度は出来てますよ」知里
「うん ありがとう ん?みんなもか」
「あ 当たり前でしょ。あんたが働いてるのに・・。って言うより、みんなで食べた方が美味しいからよ」ソフィア
「そっか ありがとな」
微笑しながら素直な気持ちが漏れる。
「っ!」
ソフィアは真っ赤になる。
「シン 私も一緒に食べたかったよ!」芽衣
「そっか ありがとな」
と言って頭を撫でてやる。
「ふへへ〜」
「さっ 一緒に食べよっ」
美咲が手を組んで、ダイニングに引っ張っていき、隣に座らせられる。
「あー 美咲お姉ちゃん ずるいっ」
芽衣もそう言って反対側に座る。
パチパチ
「ん?」シーラ
夕飯をいつも通り賑やかに取っていると、
「今日はどこまで行ったの?」
「ん そうだな〜 多分明日の昼前にはおまえの家に着くぞ」
「!!あんた ほんと、とんでもないわね。馬車で20日かかる距離よ」
「ああ まあそれは置いといてだな、街道の治安は確実に悪くなっているな」
「何かあったの?」
「いやな 俺は街道沿いを走っていたんだが、その間商隊や乗合馬車が20以上は盗賊や魔物に襲われてたんだ」
「それでどうしたのよ?まさかみんな助けたわけじゃないんでしょ?」
「まあな 護衛の冒険者たちもいたようだし、走りながら援護で、アローを打ち込んでおいたからまあ大丈夫だろう」
「それもこれもグレッグのせいね。許せないわ」
いつも冷静なミラがメグを代弁するかのように怒りを吐き出す。
「クーデターもそうだが、グレッグは故意に国力を落とそうと動いているな」
8人は表情を歪める。特に王都組は怒りをあらわにする。
「まあ みんな言いたいことは多々あるだろう。月並みな言い方だが、おまえたちは、おまえたちで今出来ることをやればいい。俺も俺に出来ることをやる。」
「・・そうですね。シン様の言う通りですね。おかげ様で落ち着きましたわ。ありがとうございます。今後もよろしくお願いしますね」
メグの表情が和らぎ、穏やかな笑顔となる。