父と娘
翌朝
「シン起きて、朝食の時間終わっちゃうわよ」
「んー 食べてても良かったんだけどな」
「一緒に食べようって言ったじゃない。忘れたの?」
ソフィアは唇を尖らせてそう言った。
「わかった 行こうか」
朝食後
「この部屋はもう1泊借りたから、ここから転移しよう」
「うん」
クレイド伯王都邸1階
「1人で行くか?」
「一緒に来て。お父様に紹介するわ」
「・・わかった」
部屋を出ると、侍女が廊下を歩いてくる。
「あらマリア久しぶりね」
「!! お嬢様」
慌てて近寄ってくる。
「ご無事だったんですね。冒険者に連れ去られたと聞いて、クレイド様も大変心配されております。執務室にいらっしゃいますので、参りましょう」
と歩きだす。
「ちょっと待って、連れ去られたわけではないわ。オークに襲われてたところを助けられたのよ。このシンにね」
「冒険者のシンと申します。ソフィア・・様とは学院で、共に学ばせて頂きました。」
「大変失礼いたしました。お嬢様をお救いくださり、なんとお礼を申し上げてよいやら感謝の言葉もございません」
「偶然なので、お気になさらずに」
執務室に着いたところで、マリアがノックをして、中に通される。
「 ソフィア無事だったか。心配したぞ」
「申し訳ございませんでした。お父様。昨日学院の演習中にオークの群れに襲われてたところ、こちらのシンに救われました」
「ふむ 軍からの報告と食い違っておるが、今の軍なぞ信用ならんからな」
「色々と聞きたいことはあるが、君があのシン君か?」
「えっ? はい。冒険者のシンと申します。ソフィアお嬢様には学院の頃にお世話になりました」
「ははは そう固くなることはない。ソフィアから君のことをよく聞かされていたから、一度会いたかったんだよ」
「っ お父様!」
ソフィアが頬を赤らめ抗議する
「もうっ そんなことより、現在王都はどうなっているのですか?」
と、さっさと話題を変える
「ふむ そう聞くということは、クーデターがあったことを知っておるのだな?」
「はい。王子様と王族派の子弟が連行されたのをシンが確認しております」
「なるほど ということはマーガレット姫とソフィアたちを転移で助けてくれたのも、シン君ということか」
「はい マーガレット様はとある場所で保護しております」
それを聞くと伯爵は難しい顔をして考え込む。
しばらくして
「王都の現状なのだが、王城は軍部を掌握しているグレッグ公爵と反王族派によって占拠され軍事政権が敷かれた。王と王子は幽閉されており、王族派の子弟は人質として軟禁されている。そして私とシーラの父ベルメール伯爵は監視がついており、王都を離れることが出来ない。」
「今後グレッグ公爵は軍事政権を維持しながら、王族派の切り崩しに動くだろう。そして王子と公爵の令嬢を婚姻させ、王族派の子弟は反王族派に強制的に嫁がせる。おそらくこのような筋書きを立ててるだろうな」
「そんな酷いこと許せません」
ソフィアは憤慨しながら言う。
「そうだこのような暴挙は許されるべきでは到底ない。まずはベルメール伯と連絡を取り今後の相談をしようと思う」
クレイド伯はチラッと俺を見る。
「わかりました。今夜ベルメール伯爵邸に忍び込みます。それではシーラ様を連れてきますので、しばらくお待ちください」
「ただいま〜」
「おかえりなさい。なんか疲れてる?」
美咲が顔を近づけてくる。
「いや大丈夫だよ。みんなは?」
「ちさ姉は王女様たちとお菓子作ってるよ。芽衣は裏庭の練習場で魔法の練習かな?」
「ねえ また行くの?」
「ああシーラを連れて行かないといけない」
美咲と話していると
「シンおかえりなさい」
知里たちがキッチンから出てきた。
「ただいま シーラ、王都邸に行くぞ」
「えっ はい」
「マーガレット様説明は後でまとめてします」
「わかりました。シーラよろしくね」
「畏まりました」
「わっ もう連れてきたんだ」
「クレイド様お久しぶりです」
「ああ 久しぶりだね」
「ソフィアとシーラは行方不明ということだから、この屋敷でもあまり人目につかない方がいい。用があるときはマリアに言ってくれればいいから」
「はい わかりました」
「それではシーラ様ご実家の場所と特徴を教えてもらえませんか?」
俺がそう聞くと
「もう さっきからすご〜く気になるんだけど」
とソフィア
「何がですか?」
「それよ。いつも通りでいいから。様もいらない。様をつけられると、ものすごく居心地が悪いわ」
「うん 私もいつもどおりの方がいいかな」
とシーラ
「・・わかったよ。これでも頑張ってたんだぜ」
「あんたはそっちの方がいいわ」
クレイド伯はにこやかに微笑んでいる。