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02.ラミスの事情説明

「何故君の名前を知ってるか?当然だろう。我が大陸の花畑の〝マモリビト〟フロール・レイン。歳は十六。自然の村タビアの出身。本来は花を慈しみ愛する心優しい少女」


「ただし目の前にいる気にくわない少佐を除く」


「誕生日は霜の月十六。胸のサイズは」


「ってちょっと待った!!!」



思わず木製のテーブルを力いっぱいに叩いてしまった。

慌てて壊れてないかを確認する。何故ならこのテーブルはそこそこいい金額がしたからだ。壊れたらもれなく泣き寝入りしてしまっていたけれど、無事みたいだからほっとした。

それ以上に色々突っ込みどころが満載なのでまずはそこから聞き出さないといけないのよね。このクソ少佐。



「軍なら名前や性別や年齢なら知っててもはいそうですかって納得するわ!誕生日も国籍で調べられるし……身長もまあ見比べればおおよそは計れるけど問題なのは一番最後!」


「?普通見て分からないか?」


「分からないわよ!!」



確かに自分の胸は大きすぎるほどではないが小さくもない。正直な話、見た目だけなら結構負けない自身はある。

しかしどうしても胸の話をしようとしたのも許せないわ。こっちはマモリビトとしてじゃなく一人の女性としてねっ!


少佐は何も無かったかのように無警戒に私の淹れた紅茶を啜っている。実は毒盛っていました説だったらどうしていたのよ。警戒心なさすぎない?



「この紅茶、毒盛ってるわよ。猛毒ってほどでもないけど」



試しに嘘をついてみた。

これでおとなしく退散してくれたらありがたい。



「毒の量は微量か?」


「……そ、そうよ。たくさん入れたら紅茶の色や味に出ちゃうでしょ」


「なら問題ない。私にはある程度の毒は効かない」



毒を盛られた、いやそれは嘘だけど。毒を盛ったと告げたのにも関わらず少佐は平然と紅茶を飲み進めている。

紅茶を全て飲み干して、カップをテーブルに置いた少佐は見え透いた愛想笑いを作った。



「ロカ家では代々、将来ロカ家を継ぐ者が毒殺されぬようにと幼少期より毒に慣らさせるんだ」


「毒に慣れる……?」


「私もその一人。小さい頃から勉学、武術、そして自ら毒を含み毒に慣れ毒に対する耐性を作る。だから私に中途半端な効き目の毒は効かない。もし……君に私を毒殺で殺す気があるのなら、本気で殺せる猛毒を多量に入れる事だ」



……嘘だというのに予想にもしなかった事実をつきつけられてしまった。

そういえば、私はこの少佐の事を知らない。

〝マナの処刑人〟

そして村と花畑を燃やした張本人。

ただそれだけしか知らないというのに疑いをかけてばかりだ。

……ちゃんと、話がしてみたい。



「少佐。どうしても分からないことがある。答えてくれないかしら」


「勿論だ」


「まず一つ。タビアの村と花畑を燃やしたのは貴方で間違いない。何故燃やしたのか。もう一つ。何で貴方は私の事が好きなのかその経緯」


「いいだろう。まずタビアの村と君の花畑を燃やしたのは私で間違いはない。しかしそれは私自らの意志ではなく、フランメの意志だ」



炎神フランメ。

大地とマナの神ティエラと敵対したという炎の神。マナという不可思議な存在を灰のように焼き切る事ができるとされ、〝マナの処刑人〟はその炎神フランメの加護を得ているとされている。

少佐曰く、タビアの村視察中に意識が朦朧としていたらしい。まるで誰かに操られていたかのように。

……もしかして、その誰かがフランメなのかも知れないがそう簡単に信じられる事案じゃない。



「実は軍にはマナの処刑人が私以外に二人居るわけだが……二人はそういった事はなかったらしい」


「つまり、燃やしたのは貴方の意志じゃなく、フランメの意志であり……貴方がフランメに乗っ取られて燃やした、という解釈でいいのかしら」


「……多分、そうなる」


「何が多分なのよ」


「その時のことはあまり記憶にない……曖昧だから自信がない」



珍しく顔には焦りの色が見られた。

声も淡々と早いからこれは嘘をついていない。それでもフランメが少佐を乗っ取った説は根拠がなかった。


いや、例えそれが本当だったとしても少佐はフランメのせいだと責任をフランメにだけ押し付けはしない。これらは表上では少佐がやった事になっている事実には変わりがないからだ。



「で、次。私の事を好きになったその経緯」


「……それは。フロールの反応を見るに、〝あの事〟は覚えてないみたいだな」


「〝あの事〟?」


「いやいい。気にしないでくれ」



首を横に振りながらそう発した朱殷の瞳は悲しみの色も含んでいて、私の責め立てる気を失せさせた。

この少佐は故意に村と花畑を燃やした訳ではないと主張している事。

そして私の事が好きなのにはちゃんとした理由があるというに、私自身がそれを思い出せていないだけらしいという事だ。



「……少佐のやった事は許されない。まあ私がマモリビトっていうのもあるけど、この世界の仕組み、知らないとは言わせないわよ」



マモリビトの育てた花畑は大地にマナを分け与え、この世界の安定を保っている。花畑は内陸に一つ、外陸に一つと計二つ存在し、マモリビトも内陸に一人、外陸に一人存在しているのだ。

どこか一つの花畑に異変が起きた場合、それは世界の大地そのものに直結する。異常気象、災害などが発生すると言われていて、実際少佐が花畑を綺麗さっぱり灰になるまで燃やした暁には主に内陸を主体に大きな震災、津波の連続でかなりの被害が起きて死傷者多数。


それは少なからず外陸にも及んだらしく、そのせいで内陸と外陸で揉めたとまで噂された程だ。



「そうだ。私は軍から逃げてきた。私が花畑を燃やしたマナの処刑人だと知られた。最悪死刑になっても何らおかしくもない……それでも私は死にたくなかった」


「逃げたらその分罪は重くなるのも、分かってるのよね」


「ああ。分かっている。それでも俺は最後に、君に想いを告げたかった」



最後の未練が私、か。

こんな私なんかよりもっといい人もいるだろうに。

家柄や顔とか、王都には嫌といるだろうに。



「ま、まあ……私の言う事を聞いてくれるんだったらここにいてもいいわ。あっでもまだ結婚に頷いた訳じゃないしっ!てか少佐の事なんて好きでもなんでもないんだからっむ、むしろ嫌いよ、嫌い!少佐の出してきた条件が私にメリットがあるだけで、その」




思わず途中から早口になってしまった。何を焦っているのだろう私は。〝マモリビト〟としての役目を全うする為に今こうして軍から逃げてきたらしい〝マナの処刑人〟と手を組んでる、それだけで決して情に流されてなんかいないのに……。




ラミスの事がすこーしだけ判明しました。

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