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4話

 神楽さんは曇った声でそう言い、扉の近くにいる畑島の方へこぎながら進んでいく。

 そしてひそひそと何やら話し合っている。

 おそらく俺をどうやって殺そうかとかそんな話をしているのだろう。

 


 俺はドキドキと胸を鼓動させて、殺さないでほしいと強く神に祈りを捧げた。



 2人は話し合い終わったのか、ひそひそ話しはやめて畑島がこちらへ一歩だけ踏み寄る。

 そして右手を前に突き出し、その右手から赤い炎を発射させた。

 そのあまりにも激しく燃え盛る炎は、俺の顔の方に向かっているようだ。

 



 これはまずい。

 このままでは死んでしまうじゃないか!

 ここで死んでたまるか俺はこの場で自分のために生きないといけないんだ。

 これは避けられない。

 ならば……。

 




 そう強く思った瞬間、自分の右手が黒くて太くなった。

 その手で炎を叩き落とし、下の地面にボール位の大きさの穴をぽっかりと開けた。

 一瞬何が起きたのか自分では分からず、手を見てハッとした。

 右手には鋭い紫の爪が生えており、まるで獣になったかのような気持ちがした。



 これが本当のおれの姿……なのか? 本当に俺の……。

 


 俺は事実を知ってしまい怖すぎるあまり、手をワナワナと震わせ顔の方を両手で撫でまわす。

 気分が悪くなったので、畑島に鏡を持ってくるよう切羽詰まった声で叫ぶ。

 だが顔はまだ人間のようで、悪魔の顔ではないから少しホッとする。

 けれど手だけは正体を見せてしまい、知らなかった自分にただただ絶句した。




「これが……俺の正体なのですか?」

 


 青ざめて震えながら俺は畑島に尋ねる。

 しかし答えたのは相楽さんだった。

 その時だけであるが、その人の声がくぐもっておらずしっとりとした女性の声が聞こえてきた。

 なぜなのかはしらないけれど、その声は鳥の鳴き声に類似している。



「はい、その通りです。だからお主を処罰しなければいけません。そなたが犯したのは犯罪ではなく、心の均衡を自分で犯してしまったという意味だったのです。ご理解いただけましたか?」

 


 俺はその言葉にコクリと頷くことしかできなかった。

 そして俺はその場で立ち上がり、この取調室から出ていった。

 畑島と共に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 悪魔の声が聞こえるのに、自分が悪魔だと思わなかった彼。

 その声はおそらく自分の心の声だったのだろう。


 

 彼が今後どうなったのか、知っている人は誰もいない。

 

 

 

 

 かくしてあの畑島と神楽の2人は、いったい何者だったのだろうか。

 もしかすると……。

 

 

 

 ーfinー



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