第3章 暗転
奇跡をもう一度、おこす。
口では言うのは簡単だが、実際にやるのは地獄だった。魔の仕事の連鎖。上司からのネチネチした嫌味。
こんな感じで転職活動につかえる時間はみるみる少なくなっていく。
そして、おれには職歴もほとんどないのだ。
そんなある日、おれはオフィスで天と地がひっくり返るかのような目眩をおぼえたのだ。
起きた時には、そこは病室だった。
「見知らぬ天井だ」
などと、つまらないお決まり文句をいっていた。
危なかった。過労で倒れたようだ。
あやうく、神さまだか女神さまに会ってしまうところだった。
「転生かブラックか?」
最悪の2択を選ばなくてはいけなくなるところだった。
医者からのドクターストップで3か月の休職を言い渡されたおれは、たまっていたアニメの録画をみることで癒されていた。給料は安かったが、忙しすぎて何にも使えていなかったのがラッキーだった。
実家暮らしなので1年ぐらいは遊んで、暮らせる貯金ができていた。
アニメも見終わったので、海外ドラマを見始めた。ニート時代から、暇なときみていたもうひとつの趣味だった。
ながら鑑賞をしていた時に、おれはひとつのことに気が付いた。
「はは、サム何をいってるんだい」
「時間がない。はやくしろ」
テレビから流れてくる英語が、脳内で日本語に変換された。
「あれ、意外と英語が聞き取れる」
生意気にも字幕派のおれは、意図せず数年間英語漬けの生活を送っていたらしい。
これはもしかして、テレビでよくCMされているスピードラ○ニングみたいなものなのか。試しに、おれは本屋で、リスニングの問題集を買ってきた。簡単だった。できてしまった。まるで、止まっているかのように英語が聞こえる。いくつかのうっかりミスはあるものの、ほとんどの問題に正解していた。
ここでおれはひとつの夢をもった。
「そうだ、通訳になろう」
ここから、おれの新しい世界が広がった。