エピローグ
「ここはどこだ?」
おれは病室で、沙織や子供たちに見守られていたのに、今は真っ暗な部屋にいた。
「そうか、おれは死んだのか」
いい人生だった。あれから、沙織と結婚して、ふたりの子供ができて、仕事で大なり小なり失敗と成功を経験した。元ニートとしては、上出来な人生だった。沙織、安西先輩夫婦、ニクソン、マイケルなどなど。とてもいい人たちと知り合うことができた。
「初孫と会いたかったな」
でも、ここまで言うのは贅沢だ。
親にも結婚するといったときの、喜び様はすごかった。
父さんは驚きすぎて、なにも言えなくなり、母さんはドッキリだと思って隠しカメラを探し始めた。
そして、沙織と過ごせた数十年は最高の時間だった。
「本当にしあわせだったな」
そうつぶやくと、おれのまえに老人があらわれた。
「あなたは?」
おれは不思議そうにつぶやく。
「わしは俗にいう神さまじゃ」
おれは本当に死んだらしい。
「やっぱり、おれ死んじゃったんですね」
「そうじゃ」
「このあと、おれはどうすればいいんですか」
「ふたつ道がある」
「ふたつ?」
「ひとつは天国に行って、安らかに過ごす方法」
「もうひとつは?」
「おぬしは選ばれた。別の世界に行って、英雄に転生することもできる」
「選ばれた?」
「そうじゃ。もともと、おぬしは、転生者リストには入っていなかったのだ。しかし、生前の働きぶりがとてもよかったので、繰り上がり当選したのじゃ」
「オーマイゴット」
「神じゃが、なにか?」
おれは転生しないために、生きていたのに、なぜか転生するために行動していたのか。
「ハハハッハ」
変な笑いが出てきてしまう。もう、完全にピエロだ。
「それでどうする?」
「そんなのもちろん……」
おれの心は決まっていた。
「天国です。たとえ、ピエロでも最高の人生でした。あの思い出を捨てて、別の世界にいくなんて考えられません。妻を天国で待ちたいと思います」
「そうか。まぁ、おぬしならそういうだろうなと思っていた。では、いくがよい」
扉が開く。明るい光がおれを包んでくれた。
これにて完結です。読んでいただき、ありがとうございます。




