第28章 苦悩(前半)
自分が誰から必要とされる。これがこんなに幸せだったなんて、知らなかった。転生をしたひとたちは、この気持ちを味わうために、転生しなくてはいけなかったのかもしれない。おれは転生しなくても、この気持ちを味わえたのだ。最高に幸せだった。
「幸せって、こんなに苦しいんだな」
おれは矛盾した気持ちに苦しめられる。これを彼女にどのようにしらせるべきか。ふたりの絆なんて、まだ2回会っただけの、簡単に切れてしまうような細い糸のようなものだ。不安だ。せっかく、はじまろうとしているふたりの物語はここで終わりなのだろうか。もう、ひとりでは、答えはでなかった。
安西先輩にメッセージを送る。
「仕事が終わったら、相談があるので、時間ください」
すぐに返信がきた。
「おまえと会うと、彼女に怒られるから嫌だ」
なんのこっちゃでござる。
「じゃあ、電話だけでも。30分だけ時間ください」
そして、ひとつ加える。
「人生がかかっているんです」
「おまえな、文面考えろよ。意味深なんだよ」
先輩は泣いているスタンプを送ってきた。
おれはこれを許可のサインだと勝手に思い込むようにした。
「じゃあ、9時くらいに電話するので、よろしくお願いします」




