第26章 リストラ?
「おはようございます」
月曜日の朝、おれはいつものように元気にあいさつをする。
「達雄、おまえのせいで週末大変だったんだぞ」
安西先輩が会社に着くなり、そういってきた。清々しい月曜日の朝が台無しだ。なんだか、先輩の目の下のクマが酷いことになっている。
「いったいどうしたんですか? こころあたりがありすぎてわかりません」
おれは正直にそう告げた。
「ああ、そうかい。今度、おぼえておけよ」
先輩は怖い顔をしていた。
まあ、いいか。気を取り直して、仕事をはじめる。最近、仕事に慣れてきたのか、充実した時間を送っている気がする。そう思っていた時期がぼくにもありました。
「おーい、達雄くん、少しいいかな?」
月曜の朝から、いきなり課長と個別面談だ。おれはもうダメかもしれない。さらば、現世。と冗談を考える余裕はまだあった。1分後、この余裕は簡単に粉々にされるのだった。
こっちに来てくれと呼び出されたのは、人気のない会議室。そこにはすでに先客もいた。人事部長だ。おれは確信した。まじで、転生する5秒前だと。
人事部長。密室の会議室。この状況から考えられる答えはひとつだ。リストラ勧告。わー、ここはドラマで勉強したところだ。おれは、全力で現実逃避をはじめる。
「悪いね、仕事中」
部長はにこやかに話しかけてきた。このにこやかさがまじで怖い。
「実はね、大事な話があって」
「あっ、はい」
おれは処刑される死刑囚の心境だ。
「君はまだ新人なのに、仕事を頑張ってくれていると聞いているよ」
上げて落とすやつだ。きっと、そうだ。そう確信した。
そして、続く言葉は、きっと。ユーアーファイヤード。
「だからね、」
すべてが走馬灯のように、思い出される。そして、帰り道に線路にダイブパターンで転生か。これが世界の選択なのか。アトラクタフィールドには逆らうことができないんだ。こころのなかで、「飛べよおおおおおおお」と何度叫んだろうか。それくらい、凍てつく沈黙だった。しかし、部長の発言はおれの考えの斜め上をいっていた。
「ちょっと、海外勤務に行ってくれないかな? 1年くらい」




