第25章 勘違い
安西先輩サイドの番外編です。
「ねぇ徹?あんたってこんな趣味があったの?」
「修羅場なう」まさにいまの俺の状況を簡単に表現できる言葉だ。達雄との電話も終わったら、彼女の椿が遊びにきた。たまに、フラーと遊びに来るので、いつも通り泊っていくのだろうと思ったおれは、お茶と風呂の準備をしていたのだ。よくある休日の風景だった。そう、あのメッセージが届くまでは……。
<ブーブー>おれの携帯は鳴っていた。どうせ、達雄だろうと放置して、台所で準備をしていたのがいけなかったのだ。
椿もいたずらのつもりだったのだろう。浮気の様子もないおれのスマホ。安心してみることができる。やましいことがないおれも簡単なロックしかかけていなかった。
<ゴト>なにか鈍い音がした。
「どうした?大丈夫か?」
おれがそこでみた光景は、椿の手元からおれのスマホが落ちて床に転がり、彼女が真っ白な灰になっている光景だった。
椿は無機質な声でこういったのだ。
「ねぇ徹?あんたってこんな趣味があったの?」
そして、スマホの画面には達雄からの新しいメッセージが届いていた。
<「ありがとうございます、先輩。次のデートも楽しみです!がんばりますね」>
すべてが繋がるまで、30秒くらいかかっただろう。人類にとっては単なる30秒だが、おれにとっては永遠の30秒だった。
「なにか言い残すことは?」椿はのそのそと近づいてくる。
「地獄で会おうぜ、ベイビー」
楽しい休日ははじまったばかりだった……




