第21章 デートの終わり
「達雄さん、だいじょうぶですか?」真っ白になっていた自分に沙織さんは心配そうにそういってくれた。
「ハイ、ダイジョウブデス」片言になる自分。ようやく意識が戻ってきた。あのままだったら、ヴァルハラに旅立って、転生してスペースオペラ世界にでも逝っていただろう。
「いや、さっきの沙織さんの発言が嬉しすぎて、真っ白になってしまいました(笑)」吹っ切れたおれは一気に勝負に出た。もう、いつものおれじゃない。
「本当ですか? 勇気を出していって、よかったな~」彼女はとても輝かしい笑顔を浮かべて答えてくれた。
「もう、本当に最高です。あなたに出会えて本当によかった」今日のベットで枕に顔をうずめてゴロゴロ叫ぶことが確定した。
「もう、はずかし、ですよ。達雄、さん」彼女は消え入りそうな声でつぶやいた。
「すいません、つい本音が……」
「もう……」
カフェを出たら、もう夕方だった。デートもそろそろ終わりだ。お互いに少しだけ、ものさびしい感じだった。
「今日はとても楽しかったです。またどこかいきましょうね?」彼女はそういってくれた。
「今度は、自分の方から誘いますね。仕事終わりにご飯とかどうですか?」
「いいですね。いつでも誘ってください」
「今日は本当にありがとうございました」
「いえいえ、こちらこそ、うれ……いや、楽しかったですよ」彼女はなぜか嬉しそうに会話を修正する。
「自分も最高でした。沙織さんほんとうにかわいいです」今日のベットで枕に(以下略)
「もう」彼女は顔を真っ赤にしていた。
「わたしはこっちなんで、先に帰りますね」彼女は早口でそういった。
「はい、じゃあまたこん……」おれは完全に油断していた。気がつくと彼女が顔がおれの顔の間近にいた。
「ちゅ」というなぞの音と一緒に右側の頬にぬくもりを感じる。
「えっ、いまのって?」わけが分からないままおれはすっとぼけた声を出す。
もう彼女はおれに背中を向けていた。もう、彼女の表情はわからない。
「内緒、です」でも、彼女の声は震えていた。




