第20章 達雄、還らず?
「そんなふうにいってもらえると、本気になっちゃいますよ」
「そんなふうにいってもらえると、本気になっちゃいますよ」
「そんなふうにいってもらえると、本気になっちゃいますよ」
また、おれのこころは揺さぶられていた。この人、もうすごすぎるだろう。なにか、返さねば。おれの頭はちょっぴりホワイト、わたしのハートは完全ホールドの状態だ。
「もう、おれは本気ですよ」アレナニヲイッテルカナ、コノヒト。
「えっ」
「もう、おれは沙織さんのこと本気ですよ」あっこれ、ナンパ師の本で勉強したところだ。おれは無意識で、勉強したところをそのまま吐き出した。
言ってから、後悔というのはこういうことだ。完全にキャラが違う。だれだよ、これ。完全にもうひとりのぼくだよ。デート中に千年のパズル解いたのだれだよ。おれだよ。脳内会議で、ひとり半ギレ状態だったおれに沙織さんはこういった。
「なら、わたしたち、もう両思いですね」沙織さんはさらっと言った。衝撃の発言だった。
一瞬、眩暈がする。これが萌え死ぬということか。すごい一撃だった。
ごめん、母さん。ごめん、父さん。ごめん、みんな。西暦2017年、6月1日、2時55分。佐藤達雄の時は28歳で停止しかけた。




