第19章 これが文化か
「何気なく、間接キスしちゃいましたね……わたしたち」
「何気なく、間接キスしちゃいましたね……わたしたち」
「何気なく、間接キスしちゃいましたね……わたしたち」
こころの中で何度も繰り返す。ここはどこ?わたしはだれ?異世界なのか?こんなラブコメ展開、テレビのなかでしか知らないよ。ヤックデカルチャー。
「もう、つっこんでくださいよ、恥ずかしいじゃないですか」沙織さんは赤面しながら、笑いかけてくれた。
「すいません、うれしすぎて、別次元にいっていました」
「どういうことですか?それ(笑)」
「気にしないでください。ホント」
「気になるな~」もう、本当に天使。
食後のシフォンケーキと紅茶を食べながら、おれたちは談笑していた。たぶん、他のひとからみたら、いい雰囲気とは自分たちのためにある言葉と思われるだろう。それくらい、楽しんでいた。
「達雄さん、少し変だけど、おもしろいですよね。モテるでしょ?」彼女は小悪魔的な笑顔でからかってくる。
「いや、もう恋何年休んでいますか状態ですよ。モテなさすぎて。元カノと別れて、5年以上経ちますし」
「どうして、別れちゃったんですか?」彼女はグイグイくる。それが嬉しかった。
「無理して、かっこつけまくったら、なんか思ったのと違うといわれてしまって」
「なにそれ~」
「ニート時代の修行の末、虚栄心を取り除いたのが今の姿です」
「かっこいいような、かっこわるいような(笑)」
「沙織さんだってモテるでしょ。どうして、わざわざ自分とのお見合いに?」
「それなんですが……」少し言いにくそうに彼女は言う。
「お見合い相手の達雄さんにこんなことをいうのもあれなんですけどね」
「ハイ」
「実は1年前に学生時代からつきあっていた彼と別れまして……」
「……」やばいぞ、選択肢を間違えたか。
「5年も付き合っていたのに、向こうが別の人を好きになってしまったみたいで……。それで、かなり引きずってしまい。親からも心配されてまして」
「そうなんですか」
「そこで母が、おもしろそうな人がいるから会ってみない?と言われて」
「それが自分ですか」
「そうなんです。昔を引きずりすぎるのもよくないなと思って。すいません、ちょっと失礼なこと言ってますよね」
「いえ、全然です。むしろ、沙織さんと知り合えて、自分、最高に幸せですから」おれは本音をぶちまけた。
「ずるいな、達雄さん」
「えっ」
「そんなふうにいってもらえると、本気になっちゃいますよ」




