第16章 はじまり
おれは楽しみすぎて、予定の30分前に約束の場所に到着した。ここで注意することは、周囲の状況だ。トラックは近くないか。運転手は眠たそうではないかが特に重要だ。おれみたいなポっとでリア充は、幸せになった瞬間に絶望に叩き落される心配がある。
そんな馬鹿な心配をしていたら、沙織さんはやってきた。今回も大丈夫そうだ。そして、とても綺麗だった。みんなが彼女を見ているような気がする。そんなふうに思えるほど、彼女は魅力的だった。
「すいません。お待たせしてしまって」
「いえいえ、楽しみすぎて早く着きすぎただけなんですよ」
「そうなんですか。うれしいな」彼女の笑顔が眩しい。
「楽しみすぎて、変な夢までみてしまう始末でして(笑)」
「変な夢?」
「いえ、こっちの話です」
「フフ、あいかわらずおもしろいですね。達雄さんって」眩しい。眩しすぎる。
「それはいきましょう!じつは昨日、席のチケット取っておいたんですよ」
「すいません。気をつかわせてしまって」
「少しはかっこつけさせてください(笑)」
「かっこいいですよ、達雄さん」彼女はいたずらっぽくそう言ってくれた。
「(ほれてまうやろおおおお)」これで何回目のネタだろうか。
「じゃあ、いきましょうか」彼女は手を広げてこちらに差し出してくれた。
「(えっ、これなんてギャルゲー?。もしかして、いつの間にか転生してた?)」気が動転しながら、彼女が差し出してくれた手を取る。心臓がバクバクだった。彼女にそれが伝わっていないか。それが心配だった。
楽しい1日が始まった。




