第12章 幸せ
「本当におもしろいですね。達雄さんって」
「そうですか」
「そうですよ。一生懸命で、少しずれている感じがとてもおもしろいです」
「よく言われます」
「感謝のドラマ鑑賞とか本当にねぇ(笑)」
「あの時は変なテンションになってて」さすがに転生したくないからとはいえない。
変な話をしすぎて、時間だけが過ぎていった。外は夕暮れどきになっている
「今度、また会いませんか?」彼女はやさしく問いかけてくれた
「えっ、いいんですか」
「ハイ、なんかとてもおもしろかったので」
「是非ともお願いします」頼む、社交辞令とかじゃないでくれ
「なら、今度の週末。映画でも」
「ハイ、喜んで」
「ブラック企業じゃないんだから」彼女はクスクス笑ってくれた。
「そうですよね」
じゃあといいつつ、ふたりは連絡先を交換する。順調すぎて、怖いくらいだ。ドッキリか。ドッキリなのか。
「今日は本当に楽しかったです。ありがとうございました」沙織さんは丁寧にお辞儀をしてくれた
「ハイ、自分もです。本当にありがとうございました」こちらもお辞儀を返す。
そして、彼女はタクシーで帰っていった。自分はそれを見送った。
「今日はたのしかったな」しみじみと思った。彼女のタクシーを遠くなるまでみていたいと思った。こんな気持ちになるのははじめてだった。
今日、こんなに幸せだと、明日以降、何かあるじゃないかと思ってしまう。彼女との約束のためにも、転生などしたくはない。その決心をより強く心に刻んだ。
 




