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第10章 タツオ死す?

「あっあの、ご趣味は?」先手、達雄初段。趣味を聞く。


「そうですね。読書を少々」後手、沙織四段。無難な答え。


 お見合いの定跡をふたりで淡々とこなしていく。どうして、こうなった。それは、恋愛問題に悩んでいたら、母さんに「お見合いしない?」なんて軽く誘われて、「ハイ、喜んで」と即答してしまったからだ。


 どうも、前々から、知り合いから相談をうけていたらしい。うちの息子なら、絶対フリーと断言したら、先方も興味を持ち、とんとん拍子に話が進んでしまった。


 しかし、お見合いに失敗して、転生なんぞ、広いなろう世界でもなかなかないはずだ。ローリスク、ハイリターン。母さんの作戦は完璧だった。そもそも、完全草食系のおれが、いかにナンパ師に憧れても無理ってもんだ。


 それに、今時、お見合いに参加しようとする女性なんて、地味で奥手な女性と相場が決まっている。なら、俺みたいな元ニートでもなんとかなるかも。そんなふうに高をくくっていた。そう、今日までは。


 そして、初顔合わせとなった今日。あとから入ってきた女性を見て、おれは「やば、好みだ」と一目ぼれしてしまったのである。こんな好みの女性と話すなんて、絶対にきょどる。


 山田沙織という彼女は、27歳のOLだった。コンサバ系というやつだろうか。とても落ち着いている感じの女性だった。


 そして、冒頭にもどるのであった。

「あっあの、ご趣味は?」

「そうですね。読書を少々」


「……」「……」


「(会話が続かない)」気まずい雰囲気が流れる。このままなら、いっそのこと転生してしまいたい。隣の母さんも駄目だ、こりゃという顔をしている。そして、暴走を始めた。


「ごめんなさいね、沙織さん。このバカ。いい歳して、女性に免疫なくて」ガハハハという笑い声が似合う感じで話し始める。


「いえいえ、真面目な感じでいいじゃないですか」むこうのお母さんがフォローしてくれた。


「真面目なんて全然。時間があれば、アニメっていうんですか。もう三十路ちかいのにそんなのばかり見ていて。もう気持ち悪いオタクみたいなやつなんですよ」


 おれは母親の暴走に青ざめた。


「でね、大学終わったら、ニートっていうんですか。そんなふうにプラプラしちゃって。つい最近、やっと働き始めたんですよ。ね、達雄?」


「(カモン、転生トラック)」サラ、サラ、サラ。終わった。絶対にドン引きされている。もう帰り道には転生しているはずだ。むしろ、転生させて欲しい。


「いやーお恥ずかしい」こんな言葉を出すのが、精一杯だった。辞世の句考えなくては……。わたしのことが嫌いでも、オタクのことは嫌いにならないでください。


 あとから思えば、ここが人生最大のターニングポイントだった。

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