「聖女ちゃん、なのです!」
わたしのママはねこみみ魔女。パパは人間の勇者。だからわたしはねこみみ勇者。
そして弟は魔女なので、勇者パーティとしては回復役がほしいところです。
今日は近くの教会に住む、聖女ちゃんが遊びに来ています。
聖女ちゃんは、お勉強を教えてくれる教会の聖女先生の子供です。先生も聖女で聖女ちゃんも聖女なのがややこしいところです。
聖女ちゃんは聖女なので回復魔法が得意です。
けれど、そういうお年頃なのかよく棒切れを振り回して、弟魔女を追いかけ回します。とってもお転婆なのです。
弟魔女をぶん殴って「いたいのとんでけー」ってやるのはまっちぽんぷというやつなのでしょうか。とりあえず、がんばれ弟。姉は応援するのです。にぅ。
弟を追い回すのに飽きたのか、聖女ちゃんがわたしの方にやってきました。
「ねこみみ勇者っ! 勝負よっ!」
っていきなり棒切れで殴りかかってきたので、わたしは腰に差していた伝説の棒切れで受けてたちました。
聖女ちゃんは「やるわねっ!?」って、いったん距離をとったので、わたしはちょっと思いついて弟魔女にお耳としっぽで合図をしました。弟が小さく頷いたのを確認して、聖女ちゃんに棒切れを向けます。
「にぅ。わたしの”にゃばん・すとらっしゅ”をくらうがいいです!」
言い放って、ぶん、と棒切れを振り下ろすと。
「きゃ」
聖女ちゃんが構えた棒切れが、すぱんと真っ二つになって転がりました。
流石は弟です。たいみんぐばっちりです。弟魔女は、ママと同じで風の魔法が得意なのです。
むふー、って息を吐いたら、聖女ちゃんが泣きそうな顔で「ずるいわ!」って言いました。
「勇者のちから、おもいしったです?」
って勝ち誇ったら、聖女ちゃんは「あたしも勇者だもんっ!」って言いました。
なんでも聖女ちゃんは、正確には勇者聖女なのだそうです。勇者なんだか聖女なんだかさっぱりです。
……そうすると、母親が聖女先生なので、もしかしたら父親が勇者だったりするのでしょうか?
――深く考えないようにしよう、って思いました。にぅにぅ。