「ねこみみ勇者のだいぼうけん! なのです!」
私の母はねこみみ魔女、父親は魔王を倒した勇者だった。
だから、いつかは私もねこみみ勇者として魔王を倒すのだと心に決めていた。
旅に出たきっかけは、ある日家を訪れた信託の巫女の予言だった。
”数年の後、魔王が再び世界を騒がせることになります。それを解決するのは、あなたです”
そんな巫女の予言に従って、私は仲間を集めた。
弟魔女、聖女、そして巫女が魔王を倒すために力を貸してくれることになった。
勇者としての力をつけるため、私たちはいくつもの街をめぐり、迷宮を探索し、装備を集め、魔王の出現に備えた。先の魔王軍の残党を倒して周り、魔王復活の兆しはないかと情報を集めてまわった。
――そして、旅に出てから十年後。ついに巫女の予言の通り、魔王が現れた。
魔王は圧倒的だった。瞬く間にいくつもの街が炎に包まれ、いくつもの国が滅びた。
私と仲間たちは、必死に戦った。
死闘を繰り返し、いくつもの出会いと別れを繰り返しながら、ついに魔王の前に立った。
魔王は金色の髪をした、美しい女の姿をしていた。そして、その頭には。
見覚えのある、ねこみみカチューシャ。
「……久しぶりなの。ねこみみたん」
美しい容姿に似合わぬ、やや幼い口調には覚えがあった。
私が幼い頃、わずかな期間、隣に住んでいた女の子。私が旅に出る少し前に、何の音沙汰も無く引っ越してしまった。魔王ちゃん。
「なんで、なのですっ!? なんで、魔王ちゃんがこんなひどいことを」
「……ねこみみたんなら、まおを止めてくれると思ってたの」
言葉とともに振るわれる怪力の一撃が、石の床をえぐって砕く。
「……まさか、魔王使いさんに操られているのですっ!?」
「お願い、ねこみみ勇者。世界を救って欲しいの」
「にゃーーーっ!」
泣きながら突き出した伝説の聖剣が、魔王のはちきれんばかりの胸の中央を貫いた。
「ありがとなの……ねこみみたん」
魔王が、私の腕の中で、崩れ、おち……。
――というところで目が覚めました。
寝ながら、泣いていたようです。悪い夢です。ひどい夢です。
朝早くだというのに、思わず家を飛び出してお隣の魔王ちゃんの家に突撃してしまいました。
「ねむいの……」
魔王ちゃんは、ちゃんとおうちにいました。思わず、ぎゅって抱きしめてしまいました。
「魔王ちゃんは、魔王になっちゃだめなのです!」
「まおは、まおなのー。まおーじゃないのー」
もう一度、ぎゅって抱きしめました。
……それにしても、ひどい夢でした。
聖女ちゃんも、魔王ちゃんも、なぜか弟魔女ですらバインボインに成長していたのに。
わたしだけが今とほとんど変わらない、ぺったんちびねこの姿だったなんてっ!
牛乳飲んで、寝なおすのです。にぅにぅ。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
細々と書いてきましたが、そろそろネタ切れというか切り良く三十話目ということもありここらでいったん〆ようと思います。ネタさえあれば三十分で書けるんですけど、毎日だとネタをひねり出すのがきつくなってきたのです。
元は月1、2回程度でのんびり書くつもりでいたのに、思ったより毎日更新が続いてしまって、続けることが出来てしまったので引き際を間違えたというか。最初から週1ペースくらいにしとけばよかったかも。
リクエストいただいた魔法ネタとか、まだまとまってないネタがいくつかあるので、また再開することもあるとは思います。
いったん〆ということで各話の解説というか裏話的な物を書いておこうと思います。無駄に長いのでお暇な方だけお読み下さい。裏話とかネタばれの類がお嫌いな方は、以降はスルーしてくださいませ。
もともとこの「ねこみみ勇者のだいぼうけん!」というお話は、書く予定も構想もまったくありませんでした。
別のお話、「エタなるストーリー」の感想で「ねこみみ勇者はいつでてきますか?」って感想をいただいたのがきっかけでした。感想いただいたクロべえ様に感謝を。
この「エタなるストーリー」自体はコメディではあるもののエログロ要素が強いので「ねこみみ勇者のだいぼうけん!」の読者様にはオススメしませんが、設定的には「ねこみみ」は「エタ」の続編にあたります。聖女先生がいろいろ暴走してたりショジョネタだったりメタ発言が多いのは「エタ」の方関係なのですね。
でまあ、感想いただいたおかげで「エタ」の方で名前だけ出てきていた、ねこみみ勇者のお話がぶわっとあふれてきまして書き始めた次第です。
ある程度構造が決まっていて、
・冒頭:語り手の説明、何をするか、にぅ。
・中段:冒頭を受けての展開・転機
・サゲ:オチ。にぅにぅ。
という簡単な起承転結、あるいは序破急なフォーマットにネタを押し込むだけなので、思いつけばぱぱっと書けてしまうのがいい感じでした。
以下、各話について軽く触れてみます。裏設定ネタバレ多々含みますのでご注意を。
■「ねこみみ勇者、なのです!」
記念すべき第一話。ママにいい様に使われるねこみみ勇者がかわいいです。
■「弟は魔女、なのです!」
ママがねこみみ魔女でパパが人間の勇者だからねこみみ勇者。ならあまりを足したら人間魔女だよね。でも弟でも魔女なの?って思い付きから書いたお話。
ちなみにパパ勇者が悲しいことになった、というのはじゃんけんで負けて聖女先生にパパ勇者とられちゃったことを指しています。パパ勇者、実は正式には聖女先生と結婚してるのですね。
■「必殺技、なのです!」
勇者の必殺技といったらもう「ア○ン・ストラッシュ」しかないよね。ママにだまされて得意げなねこみみ勇者がかわいいです。ここで拾った伝説の木の棒(ただの棒切れ)がしばらくメインウエポンに。
■「修行、なのです!」
戦士さんの中身は普通に人間の女性です。パパ勇者、ねこみみ魔女、聖女先生とともに先代魔王を退治した勇者パーティの一員です。物語ではここだけしか出てきていませんが、ねこみみ勇者はちゃんと通って剣の修行もしています。あと聖女ちゃんも戦士さんの弟子です。
■「お勉強、なのです!」
聖女先生登場。いろいろあって、ちょっとバグってる人です。オチはほぼ、あさりよしとう先生の宇宙家族カールビンソンのパクリ。覚えるだけの算数って掛け算のほかにちょっと思いつきませんでした……。
■「妖精さん、なのです!」
別の方の作品「デーモンルーラー」を読んでいて、ねこみみと妖精さんの組み合わせをすごく書きたくなったのででてきた妖精さん。手のひらサイズです。意外に丈夫です。
■「聖女ちゃん、なのです!」
勇者パーティ考えたら回復役が必要だよね、と出てきたのが聖女ちゃん。明示的に書かれていませんが、聖女ちゃんはねこみみ勇者の腹違いの妹にあたります。聖女ちゃんの方は知っていて、ねこみみ勇者に対抗心を持っています。
■「ペット、なのです!?」
はやくもネタ切れの危機発生。某掲示板で「勇者ネタください!」とお願いしたら「勇者がペットミサイルする話」というネタをいただきまして、書いたお話です。ちなみにペットミサイルというのはテイマー系ジョブで、あやつったモンスターを次々に敵にぶつける戦術のことです
■「証拠隠滅、なのです!」
当初はボツにしようと思っていたネタなのですが、ネタ切れの危機でやっぱり書くことに。
出してしまったものは、ごまかしても消えたわけではなかったようです。というフレーズが気に入っています。
■「魔王討伐、なのです!」
ネタ切れきわまる。軽く最終話っぽいノリで、こっそり復活しかけた魔王とか退治してます。
ここでいったん〆にして、後は月1、2回更新宣言したのですが……。
■「酒場で情報収集、なのです!」
ここから単話で完結でなく少しつながりを持たせてお話を作りやすくしようとしました。
そうしたら1個のネタで3、4話かけるようになって毎日更新を続けることに。
通称パパ勇者編・第一話です。くいしんぼうなところがかわいいです。
■「悪の勇者、なのです!」
パパ勇者編・第二話。
お膝によじのぼってあーんって口あけるのがかわいいです。そして実は結構黒いねこみみ勇者。
■「勇者のお仕事、なのです?」
パパ勇者編・第三話。前話の続き的なお話で内容は薄め。ダメ勇者万歳。ねこみみ魔女の家に寄りたがらないのは、正式には聖女先生と結婚しているせいです。もっとも教会にも行きづらくて酒場で飲んだくれてたわけですが。
■「勇者の必殺技、なのです!」
パパ勇者編・第四話。見よう見まねとはいえ一回で必殺技モドキができちゃうねこみみ勇者は意外に才能あるのかもしれないですね。
■「勇者聖女、なのよっ!」
またネタ切れ。たまには別の視点から、と聖女ちゃん目線でねこみみ勇者を見てみることに。
殴ると回復する必殺技は実用になるのでしょうか……。
■「魔王来襲、なのです!」
魔王襲来編・第一話。魔王ちゃん登場。設定的にはおかしいのですが勢いで魔王を出してしまいました。「まおは
まおなの」としか言ってないのでじつは真王とか猫だったり魔女の対義語?魔男だったりするのかもしれなかったり。
■「暴君魔王ちゃん、なのです!」
魔王襲来編・第二話。前話を受けてぱわふりゃ魔王ちゃん。しっぽはとっちゃだめなのです。
■「ねこみみ魔王、なのです!」
魔王襲来編・第三話。ねこみみ魔王♪(*´∀`)ノシ
■「伝説のコンビニ、なのです!」
伝説の聖剣編・第一話。裏設定的にはコンビニの店員さんはよその世界からやってきた双子女神です。見た目はともかく本物の伝説の聖剣・”世界を切り裂く剣”なのです。あとポテトセットおいしそう。
■「伝説の聖剣、なのです!」
伝説の聖剣編・第二話。見た目が新聞紙ですが、実は術式をびっしりと書き込んだスクロールだったりするので切れ味抜群なのです。でも安全装置があるのでお子様でも安心してお使いいただけます。
■「レベルアップ、なのです!?」
伝説の聖剣編・第三話。聖剣が魔物倒してるんだから、聖剣のレベルがあがってもいいよね?
■「お手伝い、なのです!」
役に立たない妖精さん。というか小さな子供にハチミツとらせるのが問題な気もします。
■「ライバル、なのよっ!」
回復魔法編・第一話。ねこみみ勇者視点でも考えていたけれど、聖女ちゃん視点でいくことに。
ネタ切れになるとでてくる聖女ちゃん。無生物に回復魔法が効くとか、それ回復じゃなくて復元魔法じゃないの?
■「ねこみみ魔法、なのです!」
回復魔法編・第二話。
最初は「回復魔法、なのです!」だったけれど、なんとなくねこみみが生えることに。
■「おでかけ、なのです!」
仲良くピクニック。ねこみみ勇者にとってはこれも大冒険。
■「ねこみみ三分くっきんぐ、なのです!」
タイトルだけ思いついて、結局しばらく放置しててネタ切れのために無理やり書いたお話。
この後は、バラバラになったまな板、荒らされた食料庫で、ママ魔女のかみなりどっかーん。でも、「ママいつもおいしーごはんありがとなのです!」って言われて、ママ魔女もねこみみなでなでして「しょうがないにゃー」ってため息な感じ。
■「おばけ、なのです!」
おばけこわい編・第一話。
ネタが思いつかず、いつもの時間に更新できず。翌朝、ふと思いついて夏だしホラー系でいってみようと。
■「おばけ退治、なのです!」
おばけこわい編・第二話。
もとはこっちまで含めて一話で書くつもりだったけれど長くなったので分割することに。
ローソクを誰が持っていたのかは永遠に謎です。
■「巫女ちゃん、なのです!」
とりあえずの最終話のネタは頭にあったので、その前に巫女ちゃん出しとかなきゃね、と書いたらなんか詐欺師に。偽預言者でことごとく予言が外れる~とかも考えたのですが騙り巫女に。
■「ねこみみ勇者のだいぼうけん! なのです!」
夢オチ。とりあえずの最終話なので少し盛り上げようかなとカキカキ。夢の中でねこみみ勇者が成長してないのはわたしの願望かもー。
ここまで長々とお付き合いいただきありがとうございました。




