「おばけ、なのです!」
わたしのママはねこみみ魔女で、パパは人間勇者。だからわたしはねこみみ勇者なのです。
……勇者といえども人の子。苦手のひとつやふたつはあってもしょうがないと思うのです。
――夜中に、おしっこがしたくなって目が覚めました。
さすがに、何度も床に穴を開けるわけにもいかないですし、目が覚めた以上はおトイレに向かうのもやぶさかではないのですが。
……真っ暗、なのです。
……とってもこわいのです。
……ひとりではとても、おトイレに行けそうに無いのです。
なので。
「弟魔女、起きるです。おねしょしたらいけないので、お姉ちゃんが一緒におトイレにいってあげるのです!」
「……みゅう? おしっこ」
りろんぶそうはかんぺきなのです!
念のため、伝説の聖剣も腰にさしていきます。
ねぼけまなこをこすりながら起きてきた弟魔女の腕をがっしりとつかまえて、いざ出発です。
ただほんの少し家の中を歩くだけだというのに。真っ暗で、いつもとちがう家の中は別の場所のようです。壁を手で伝いながら、一歩一歩進んでいると、まるで暗い迷宮の中をてさぐりで歩いている気分です。
……にぅ? そう考えたら逆にてんしょんあがってきた気がするです?
むふー、と息を吐いて角を曲がると。
――すーっと、白いものが顔の前を横切りました。
「 」
頭の中が真っ白になりました。なんでしょう、今のは。
弟に声をかけようとしたら、また。
――すーっと、白いものが顔の前を横切りました。
「おばけ、なのですっ!?」
思わず腰にさした伝説の聖剣を抜いて振り回しました。
しかし、まったく手ごたえがありません。
「にゃーーっ!?」
「みゅーーっ!?」
弟魔女を抱きしめて、すぐ近くのママのお部屋に逃げ込みました。ママのベッドに潜り込んで、ぎゅうってママに抱きつきます。
「――むー、夜中にどしたのにゃ? 怖い夢でもみたのかにゃ?」
「おばけがでたのです-っ!」
「みゅー!」
「ウチにおばけなんているわけないにゃー。あと二人ともおしっこくさいにゃ……」
おばけのばかー! どうせでてくるなら、おトイレ終わった後にしてほしかったのですっ!
にぅにぅっ!




