「お手伝い、なのです!」
わたしのママはねこみみ魔女で、パパは人間の勇者。なのでわたしはねこみみ勇者。
今月はちょっとおこづかいを使いすぎて、オサイフが空っぽになってしまったので、ちょっとママのお手伝いでもしておこづかいをもらおうと思いました。
わたしのママはねこみみの生えた魔女なのですが、あまり魔女っぽいお仕事はしていません。
というか、パパ勇者たちと魔王を倒したときの報酬で、いちおう働かなくても暮らしていけるだけのお金はあるのだそうです。わたしへのおこづかいは微々たる物ですが。にぅ。
なのでお仕事といっても、半分はママ趣味のようなもので、お金を稼ぐことを目的とはしていません。
野菜を育てている小さな畑と、おいしいミルクをくれる牛さんのお世話と、あんまーいハチミツをとってきてくれるハチさんたちのお世話くらいなのです。
水魔法と風魔法の得意なママは、ぱちんと指を鳴らして畑に水をまき、ぱちんと指を鳴らして風魔法で牧草を刈り取り、牛さんにあげます。
……消去法でハチさんのお世話がわたしにまわってきました。
前にこっそりハチミツを舐めようとしてざっくり刺されたことがあるので、ハチさんは苦手です。ハチミツはおいしーのですけれど。
妖精さんがハチミツのツボをひっくり返してから、長いこと食卓からハチミツが姿を消していたのですけれど、そろそろ巣箱においしーハチミツがいっぱいになっているころでしょう。
分厚い布の服を着て、ねこみみにはフードを被り、顔はあみあみで隠して完全防御です。
伝説の聖剣を腰に差して、ハチの巣箱に向かいます。
おっかなびっくり、ハチの巣箱に近づくと、ぶんぶんとすごい羽音が聞こえてきました。
ヤバイです。こわいです。おしっこちびっちゃいそうです。
そこで、ぴこん!とひらめきました。
もともと妖精さんがこぼしたハチミツなのですから、妖精さんに頑張ってもらいましょう。
顔の前のあみあみをひょいとめくってねこみみの間から妖精さんをひっぱりだしました。
「妖精ミサイル! なのです!」
「きゅ?」
妖精さんが首を傾げています。そうでした。今日はコンペイトウを持ってきてないのでした。
しょうがありません。
「あの箱にハチミツがいっぱいなのです。ちょとハチを脅かして、おっぱらってほしーので
す」
そう言うと。
ばびゅん、と妖精さんが巣箱に突っ込んでいきました。
「あ」
……巣箱が壊れて、ママに死ぬほど怒られました。おこづかいもらえるどころか、マイナスになってしまいました。ハチミツまみれでご機嫌な妖精さんが頭に乗るので頭もベタベタで最悪でした。にぅー。




