「伝説の聖剣、なのです!」
わたしのママはねこみみ魔女で、パパは人間の勇者。なのでわたしはねこみみ勇者なのです。
勇者たるもの、聖剣のいっぽんも持っていないとね、ということで、何でも屋で「聖剣セット」なるものを購入したのです。
聖剣とセットで販売されていたポテトやドリンクに気をとられて、聖剣のことはすっかり頭から抜け落ちていたせいなのでしょうか。
家に帰って、ポテトとドリンクをきれいに食べ終わってから気がつきました。
……この聖剣、ただの丸めたしんぶんしなのです!?
ポテトとドリンクのセットで398ゴールドだったのですから、聖剣自体、単品では100ゴールもしないはずです。伝説の聖剣がそんなお値段で買えてしまう時点で疑うべきでした。
……どうしましょう。返品可能なのでしょうか。
いえ、セットで買ったものですし、セットのポテトとドリンクは既にわたしのお腹の中なのですから、聖剣だけ返品だなんて言ってもきっと受け付けてもらえないでしょう。
にゃー。まさかこんなワナが待っていたとは……にぅ。
しかし。
大きさは手ごろですし、紙なだけに以前愛用していた伝説の木の棒よりも軽く、なんだかとっても手になじみます。
しっかりと巻き固めているのでしょうか。紙なのに意外とがっちりしていて、ちょっと強く振り回したくらいでは折れそうにありません。
ぶん、ぶん、と振ってみると。思ったより風を切るいい音がしました。
むふー。ただのしんぶんしに100ゴールドと考えると少々くやしいものがありますが、十分に伝説の木の棒の代わりにはなりそうです。
お庭に出て、ぶんぶんと聖剣を振り続けました。
「にぅー。にゃばんすとらっしゅ! なのです!」
パパ勇者のかっこいー構えを思い出しながら、逆手に構えた聖剣を振り上げると。
すぱん、と少し離れたところの草が、なぎ払われたように、切れて風に舞いました。
「にぅ!?」
慌てて背後を確認しますが、今日はママの悪戯ではなかったようです。弟魔女の姿も無いようですし。
とるすと。
……まさか、これ、ほんとの聖剣なのです?
ちょっと興奮してきました。
もしかして、この聖剣ならパパ勇者が見せてくれた本物の必殺技をはなてるかもしれません。
大きく深呼吸して、呪文を唱えます。
「”ゆーしゃの、天雷”っ! なのですっ!」
……雷がまっぷたつに切れました。さすが伝説の聖剣なのです。
真・にゃばんすとらっしゅは使えそうに無いですが……。にぅー。




