「伝説のコンビニ、なのです!」
わたしのママはねこみみ魔女でパパは人間の勇者。なのでわたしはねこみみ勇者なのです。
先日、愛用の武器を失ってしまったので、勇者らしくそろそろ聖剣の一本でも手に入れてみようかと思いました。にぅ。
愛用していた伝説の木の棒は、ウチの庭で拾ったものです。また手ごろな棒切れが落ちていないか探そうとして、木の棒ではわたしの必殺技である”真・にゃばん・すとらっしゅ”が使えないことを思い出しました。
……どこかの岩に突き刺さってたりしないでしょうか。かっこいい伝説の武器。
なので、かつて魔王を倒す旅をしていたママに、伝説の武器の情報はないかと聞いてみたら「ずっと南の国に、聖剣が刺さってる岩があったにゃ」だそうです。これは旅にでるしかないと思っていたら、「勇者が抜いたからもうないにゃ」ですってっ!?
他に無いのか聞いてみたら、片っ端から集めて回ったそうです。伝説の武器。でもって、魔王との戦いでほとんど全部使いつぶしたのだとか。
「イベント達成率100%にゃー」って、ママもパパ勇者も続編のことも考えてください、にぅー。
しょうがないので、いつものお店に買いに行くことにしました。
弟魔女のねこみみカチューシャなどを買った、何でも屋さんです。売ってない品物は無い、仮に品切れでも数日内に入荷すると豪語する、超強気なお店です。実際、品揃えはとてもよいです。
ひとりで勝手に開く不思議なドアをくぐると、カウンターの向こうにいつもとは違う店員さんがいました。いつもは、メガネをかけたおばちゃんが居るのですが、今日は見たことの無い奇妙な格好をした、わたしより少し大きいくらいの双子の女の子がにこにこ笑って「「いらっしゃいませなのー」」と二人そろって言いました。
「いつものおばちゃんは、どうしたです?」
って聞いたら、
「仕入れに行ってるのー」
だそうです。
いつものおばちゃんで無いのが不安ですが、とりあえず聞くだけ聞いてみましょう。
「でんせつの聖剣がほしーのです」
って言ったら。
「ごいっしょにポテトはいかがなのー? 揚げたてなのー!」
「セットにすると、80ゴールドもお得なのー!」
むむむ。商売上手ですね。じゅうじゅうと油から揚げたばかりのお芋の匂いに、思わずお腹がなってしまいます。よだれがだらだらたれてきます。
……しかし、おこづかいがぴんちなのです。ここは断固として断らなくてはいけません。
「今だけセットで、なんと398ゴールドなのー。超お買い得なの」
「ねこみみ割引で、さらにまいなす30ゴールドしちゃうの」
今だけ。
ねこみみ割引。
……にぅ。
腰に聖剣。右手にオレンジジュースのコップ。左手にホクホクのポテトを抱えてお家に帰りました。お財布はからっぽになりましたが、後悔はしていません。にぅにぅ。