「魔王来襲、なのです!?」
わたしのママはねこみみ魔女。パパは人間の勇者。だからわたしはねこみみ勇者。
勇者とは、魔王を倒す人のことなのです。
……なのですが。困ったことになりました。にぅ。
「ごめんください」
とやってきたのは知らない女の人と、わたしと同じくらいの小さな子供でした。女の人はママと同じような黒いローブを身にまとっていて、魔法使いっぽい感じです。
そして、女の人の足に抱きつくようにして陰に隠れている子供は、なんだかとってもいかつい、角の生えたカブトを被っていました。顔が半分隠れていて、男の子か女の子かよくわかりません。
なんでも、お隣に引っ越してきたのだそうです。
「わざわざごていねいにどーもにゃー」
ママと女の人が世間話を始めました。どうやら女の人は魔王使いさんらしいです。
って、……魔王使い、です!? 魔法使いの聞き間違いでしょうか。
それとも、魔物使いみたいに、魔王を使役する職業の方なのでしょうか。
魔王使いさんの足にしがみついている子は、いかにも魔王って感じのカブトを被っています。とすると、この子が魔王なのでしょうか。にぅ。
重いらしくって、カブトがずれています。
「わたしはねこみみ勇者なのです! おなまえなんていうです?」
ご挨拶をしたら、ずれたカブトを直して。
「……まおは、まおなの」
っていいました。かわいい声です。女の子みたいですね。
でもって、やっぱり、魔王だったみたいです。
困りました。勇者としては、魔王を退治しなければいけませんけれど、わざわざご挨拶に来てくれたご近所さんを倒すのはちょっとアレです。
先日、伝説の木の棒を失ってしまったことですし武器もありません。
むふー。しょうがないのです。
「一緒にあそぶのです!」
ふふん。ここは、勇者の必殺技を見せ付けて、悪いことを考えないように釘を刺すに留めておきましょう。
……魔王ちゃんは、超強かったです。手も足も出ずに、ねこみみとしっぽをさんざん触られてしまいました。
「ねこみみ、かわいーの! なでなでー」
わたしはぬいぐるみじゃないのです。にぅにぅ……。