表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/30

「勇者聖女、なのよっ!」

 あたしのママは超聖女、パパは勇者。だからあたしは勇者聖女なのよ。あはっ!

 勇者なんだか聖女なんだかよくわからないけど、みんなはあたしのことを聖女ちゃん、って呼ぶわ。ママも聖女だから、呼び分けにはちょっと苦労してるみたい。


 あたしは聖女なので、回復魔法が得意なの。

 ママ聖女いわく。

「わが聖神教聖女のォォォ~、回復魔法はァァァ~ッ! 世界一ィィィ~!!!」

 だそうよ。なんでそんな気合入ってるのか知らないけれど、聖女なんだもん、やっぱり回復魔法には誇りをもっているってことかしら。

 けど。

「回復魔法だけじゃ、やってけないのよーっ! 一点特化は上位互換がでたら捨てられる運命なのよっ! 時代はスペシャリストじゃなくてゼネラリストなのよっ!」

 なんだって。あたしは一応、勇者でもあるので、だから剣術も勉強することにしたの。

 税込み980ゴールドのひのきの棒スペシャルエディションを振り回して、一生懸命修行をしたわ。勇者の血筋なだけあって、やっぱり才能があったのかしら。

 少し修行しただけで、だいぶ様になったんじゃないかって思うの。あはっ!


 ある程度自身がついたから、近所に住んでいるねこみみ勇者のところに遊びに行ったわ。

 妹魔女を追いかけまわして、あたしの剣をお見舞いしてあげたわ。もちろん、聖女なあたしはたんこぶに回復魔法をかけてあげることも忘れていないの。

 うん、いける。手ごたえを感じる。これなら、あたしを差し置いて勇者を名乗るねこみみ勇者にひとあわ付加せられるんじゃないかしら。

「ねこみみ勇者! 勝負よっ!」

 不意を突いてひのきの棒SPで殴りかかったら。

「にゃ」

 おどろいたことに、ねこみみ勇者は腰に下げていたただの棒切れで、あっさりあたしのひのきの棒SPを受け止めた。さらに。

「ニャバン・ストラッシュ! なのです!」

 って、ねこみみ勇者は離れたところから棒切れを振り回したら、あたしのひのきの棒SPが真ん中からまっぷたつになって地面に転がったの。

 必殺技なんてずるい!

 あと、980ゴールドもしたのに。おこづかい前借して買ったのに。ひどいわねこみみ勇者っ!


 家に帰ったあたしは、まっぷたつになったひのきの棒SPをリボンで結んで修理した。

 あたしも必殺技を身に着けるんだから!

 ねこみみ勇者の必殺技は、たぶん魔法を同時に使うことで斬撃をとばしたように見せる技だ。ならあたしの必殺技は決まっている。聖女なんだから。


 頑張って修行して、ついにあたしは必殺技を身に着けた。

「ねこみみ勇者! あたしの必殺技をくらいなさい!」

 意気揚々と遊びにでかけ、そしていきなりねこみみ勇者に殴りかかった。どうやら今日はいつもの棒切れをもってないみたい。

 あたしの真・ひのきの棒SPマークIIは、狙い通りねこみみ勇者のおでこに当たったわ!

「にゃー! ……痛く……ないです?」

「どうっ!? あたしの必殺技は。当たった瞬間に回復魔法が発動するのよ!」

 ふふん、と胸を張ったら。

「……必生技って言った方がいいです。とっても気持ちよかったです」

 ほんわか笑顔で、ねこみみ勇者が言った。


 ……言われてみれば、確かに回復したら必「殺」技じゃない気がするわ。あはは……。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ