「勇者の必殺技、なのです!」
わたしのママはねこみみ魔女。パパは人間の勇者。だからわたしはねこみみ勇者なのです。
勇者のパパが帰ってきたので、ちょっと勇者的な修行でもしようかとちょっと思いました。
かなりなダメパパですけれど、ママたちと一緒に魔王をたおしたのは本当なのですから、勇者の必殺技とか教えてもらいましょう。にぅにぅ。
「勇者の必殺技おしえてくださいです!」
とダメパパにお願いしたら、3秒ほど悩んでから「……おう」とうなづきました。微妙な間が気になるところです。
んじゃちょっと見てな、と庭に出たダメパパが、腰に下げた剣を逆手に構えて腰を落としました。
……やばいです。ダメパパなのに、かなり様になっています。構えただけで、ちょっとかっこいーとか思ってしまいました。ドキドキです。
「んー、”勇者の天雷”!」
ダメパパが雷の魔法を使ったのでしょうか、晴れた空には雲ひとつ無いのに、突然、天から降り注いだ雷が、ダメパパの持つ剣にぴしゃん、と落ちて帯電します。
「……んっ!」
無造作に振られた剣から扇状に紫電が広がって、庭の雑草を焼き尽くしました。
すごいです。パパン・すとらっしゅです。わたしのにゃばん・すとらっしゅをはるかに超えた威力です。ダメパパですが、力は本物みたいです。にぅー!
「とまぁ、こんなかんじだ」
むふー、と息を吐いてパパ勇者が剣を鞘に納めました。ドヤ顔にちょっとムカっとしますが、かっこよかったのは確かです。
わたしにも出来るでしょうか。ママには魔法の才能が無いといわれましたが、それはママの得意な風や水の魔法が使えないということで、勇者ならやっぱり雷の魔法だということなのでしょう。
やってみるです!
「”ゆーしゃの、てんらい”」
伝説の木の棒を逆手に構えて、大声で叫んだら。
ぴしゃん、と雷が伝説の木の棒に落ちました。
やった! 雷魔法できたですっ!?
と思ったのもつかの間。
「にゃー;;」
愛用してきた伝説の木の棒が、真っ黒焦げになって焼け落ちてしまいました。
ちゃんとした金属の剣でないと、だめみたいです。にぅ……。