「勇者のお仕事、なのです?」
わたしのママはねこみみ魔女で、パパは人間の勇者……なのですが。
恐ろしい事実がはんめいしてしまいました。
真っ昼間っから酒場で飲んだくれていたダメおじちゃんが、じつは勇者でわたしのパパだというのです。困りました。勇者がこんなダメ人間だとしたら、これからはねこみみ勇者と名乗ると、わたしまでダメねこだと思われかねません。
これからは、ただのねこみみ、ちびねこと名乗るべきでしょうか……にぅ。
「……なんだ、ねこみみ勇者ってのは自称じゃなくて、ほんとに俺の子供だったのか」
わたしのねこみみをなでながら、とぼけたことをいうパパ。
「おじちゃん、パパだったです?」
娘の顔すら知らないとは、ほんとうにダメパパです。わたしがパパの顔を知らなかったのはおいておきますが。
そっと目をそらすと、ママがため息を吐きました。
「勇者は家にめったに帰ってこないから、忘れられてるにゃ」
いえ、ママ。このおじちゃんが勇者でパパだなんて初めて聞きましたよ?
んー。……言われてみれば、半年に一度くらい家にやってくるさえないおじちゃんに似てる気がしますが。あれ、パパだったのですか。
「弟魔女も待ってるから家に帰るにゃ」
「あー、それがだなー……」
なんでもパパいわく。この付近で魔王が復活する気配があったのだとか。それで酒場に入り浸って情報収集をしていた、とのことなのだそうです。
パパは意外と、勇者っぽいお仕事していたのでしょうか。ぐびぐびのんでたお酒も、周りに溶け込むための、ぎそう、というやつだったのでしょうか。
見た目はだめだめでも、実はしっかり勇者していたのでしょうか。
「……それ、家に帰ってこない理由になってないにゃ。あと、魔王さがすなら村を巡回でもしてたほうが見つかるんじゃないかにゃ?」
ママに一刀両断されました。うっかりパパにだまされるところでした。
やっぱり、パパは、ダメ勇者っぽいです。にぅにぅ。